ヘルヤ・リウッコ=スンドストロム

Helja Liukko-Sundstrom

* 作家紹介

 1938年生まれ。ヘルシンキのアテネウム美術学校陶芸科卒業後、陶器メーカーのアラビア社(現イッタラ社)で一流陶芸作家として活躍。77年から陶板を挿絵にする絵本を制作し、『ヘルヤの優しいおとぎ話』と『マリとからす』がフィンランド最高の児童文学賞、ルドルフ・コイブ賞を受賞。81年の『地平線のかなたまで』は、フィンランド政府文学賞の栄誉に輝く。94年に政府からプロフェッサーの称号、01年には全業績に対して名誉あるフィンランディア・メダルが授与された。

 まずは絵本作家である以前に、フィンランドを代表するセラミック・アーティストで、動物の小さなフィギュア、マグカップ、ディナーカップ等の工業製品から、学校や病院の壁面を飾るレリーフや立体像まで、多岐に渡る作品を発表。優しく美しい世界観は人気が高く、フィンランドのほとんどの家庭に、何かしら彼女の作品がある、とまで言われています。

 77年に『いつまでも大切なもの』で絵本デビュー。陶板で作った絵をイラストにするという、特殊なスタイルの絵本を作っている人で、作品の美しさには定評があります。絵本らしい造形的なデフォルメはなく、色彩も制限されていますが、シンプルな中に想像力を掻き立てる画風は格調高く、幻想的。北欧らしい清冽な空気も感じさせる一方で、動物や人物の表情には漫画チックな可愛らしさもあったりするのがユニークです。

* 作品

『なかなおり』 (猫の言葉社)

 他

* おすすめ

『いつまでも大切なもの』 (1977年、フィンランド)

 文・陶版:ヘルヤ・リウッコスンドストロム

 訳:稲垣美晴

 猫の言葉社・2014年

 著者の絵本作家としてのデビュー作。「ぬいぐるみの涙」「青い天国へ行った猫」「すてられた洗濯機」という3つのお話のオムニバスで、どれも「大切なもの」について考えさせられる物語になっています。左右のページにそれぞれ文章、イラストが配置された構成なので、文章は多め。ただ漢字にはルビがふってあり、平易な日本語に訳されていて、小学生なら読める内容です。

 イラストは後年のタッチと違い、淡いながらもたくさん色が使ってあって、美しくかわいい造形と共に楽しめます。陶板そのままではなく、後で線や配色に手を加えている様子。細部にはやや漫画っぽい雰囲気もあったりします。ファンタジックな物語に、どこか浮世離れした幻想的なイラストがマッチしています。背景の自然描写には、北欧の人らしいセンスもあり。

『地平線のかなたまで』 (1981年、フィンランド)

 文・陶版:ヘルヤ・リウッコスンドストロム

 訳:稲垣美晴

 CBS・ソニー出版・1982年

 うまく跳べない子うさぎ君が、自分の長所を発見するまでの物語。複雑なストーリーではないですが、文章がかなり多く、漢字にルビが振られていないので、小学校高学年くらいでないと難しいかもしれません。うさぎの学校の様子は可愛いし、森や平原など自然の描写が美しいのも、北欧のアーティストらしい所。ただ、デビュー作と較べるとかなり淡彩で、ほとんどモノトーンに近いイメージです。

『天使に守られて』 (2004年、フィンランド)

 文・陶版:ヘルヤ・リウッコスンドストロム

 訳:稲垣美晴

 猫の言葉社・2017年

 本書は絵本というより、詩画集のような体裁の本。ページをめくるごとに現れる、天使にまつわる陶板画に、それぞれ短い散文詩風のキャプションが付けられています。バラバラの内容ではなく、一貫した連続性の元に制作されてはいるようですが、はっきりとした物語がある訳ではありません。相変わらず、清澄で上品な美しさと漫画チックな可愛らしさを兼ね備えた画風。やはり淡い色彩を用いていて、モノトーンに近い配色と言えます。

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