ゲイリー・ブライズ

Gary Blythe

* 作家紹介

 イギリス、リヴァプール生まれ。リヴァプール工芸学校でグラフィック・デザインとイラストレーションを専攻。80年の卒業以来、新進画家として活躍。現在は、美術を教える妻と共にリヴァプール在住。

 彼の作品は、日本ではあまり出版されていませんが、初めての絵本『くじらの歌ごえ』は、キャンバス地に写真を転写したような不思議なタッチで、次の『庭のよびごえ』も、写真素材に印象派風の点描効果を加えたような斬新な作風。どちらも、写実性と絵画的技法をミックスさせながら、夢のような出来事をドラマティックに描く点で共通しています。

* 作品

『だいすきがいっぱい』 (主婦の友社)

『北極熊ナヌーク』 (BL出版)

* おすすめ

『くじらの歌ごえ』 (1990年、イギリス)

 作:ダイアン・シェルダン  絵:ゲイリー・ブライズ

 訳:角野栄子

 BL出版・1991年

 リリーはおばあちゃんから、くじらが贈り物のお返しに歌をうたってくれたという、不思議な話をききます。リリーはある朝、浜辺の桟橋から黄色いお花をそっと海に落とし、くじらに呼びかけます。その夜、不思議な声に誘われてベッドを抜け出し、浜辺に向かった所・・・。

 おばあちゃんのお話に聞き入るリリーの生き生きとした表情、桟橋からお花を海に落とす場面の遠景、夕日を背に桟橋の上でくじらを待ち続ける彼女の姿、月明かりが差し込む子供部屋。どの場面も、一瞬写真かと思うほど写実的でありながら、ポエジーと幻想味に溢れた美しいイメージで描かれています。部分的に、フランス印象派やターナーなど、古今の画家の影響も感じられますが、表紙にもなっているクライマックスなどは、劇的な一瞬を写真で捉えたようなダイナミックな画風で迫力があります。91年、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。

『庭のよびごえ』 (1993年、イギリス)

 作:ダイアン・シェルダン  絵:ゲイリー・ブライズ

 訳:角野栄子

 BL出版・1994年

 庭を掘っていたジェニーが見つけた火打ち石。自分の住む場所がかつてどんなだったかに興味を持った彼女は、母親と昔の光景を想像しあいます。その夜、テントを張って庭で一晩を明かしてみる事にした彼女は、次第に先住民の幻想に導かれてゆきます。

 物語も絵のタッチも、『くじらの歌ごえ』と似た雰囲気がありますが、印象派の点描の手法を現代に甦らせたような感じもあり、ずばりモネそのものを思わせる部分も随所に見られます。それは前作にも顔を覗かせていたものですが、キャンバス地が明瞭に浮き出ているのも絵画的というか、絵本というより連作画集みたいに感じられる一因かもしれません。一つ一つの絵に、画家の豊かなイマジネーションが躍動しています。

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