マンダナ・サダト

Mandana Sadat

* 作家紹介

 1971年、イラン人の父親とベルギー人の母親の間に、ブリュッセルで生まれる。ストラスブール市立装飾美術学校在学中の96年に出版された最初の絵本『De l'autre cote de l'arbre(もうひとつの木のはなし)』が、ボローニャ国際絵本原画展で入選。クレティアン・ド・トロワ児童文学賞も受賞し、国際的に高い評価を得る。

 その後パリに移住し、絵本作家、イラストレーターとして活躍。アルゼンチン出身、メキシコ・シティ在住の詩人、作家、ミュージシャンのホルヘ・ルハンが世界の画家達と行っている絵本作りのワークショップで、パリ担当として活動。05年にはルハンと共に『ふゆの ゆうがた』で、メキシコ出版産業会議所の編集芸術賞を受賞。

 可愛らしくもグラフィカルな画風が魅力的で、カラフルなパレットを駆使しながらも、計算された色彩設計によって実にシックに、美しく仕上げています。ページ全体の構図や造形も大胆で、アーティスティックなセンスが横溢しているのも新世代のイラストレーターらしい所。

『ぼくのらいおん』 (2005年、フランス)

 絵:マンダナ・サダト

 新教出版社・2010

 日本では「字のない絵本シリーズ」と銘打たれているように、文章のない絵本。少年が砂漠で出会ったライオンと行動を共にし、村に連れ戻されながらもライオンとの共生を夢見る様子を、原色の鮮やかなイラストで描いています。どこかファインアートの雰囲気も漂わせた造形、色彩がユニーク。

『ふゆの ゆうがた』 (2008年、メキシコ)

 作:ホルヘ・ルハン

 絵:マンダナ・サダト  訳:谷川俊太郎

 講談社・2009年

 訳書にデータの記載がありませんが、原書は08年にスペイン語で出版されていますので、恐らくルハンの活動拠点メキシコ・シティで出版されたものと思われます。窓ガラスの曇りに少女が指で描いた枠の中へ、彼女の母親が収まるまでの意識の変遷を、夢想的に、詩的に、制限されたミニマムな言葉で表現しています。鮮烈な原色も使いながら、寂しげな冬のグレーが印象に残る色彩設計は見事。入手困難で古本のプレミア価格が高騰しているのが残念です。

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