リチャード・ジョーンズ

Richard Jones

* 作家紹介

 イギリス、ウェスト・ミッドランズ州コヴェントリー生まれ。プリマス大学で美術を専攻し、大学院で学びながらエクセター中央図書館の児童書部門に10年勤務。その後イラストレーター、作家となる。デヴォン州に20年以上在住。好きなのは、海や川で泳ぐこと、森の中を歩くこと、オーディオブックを聴くこと、猫をなでること。鳥や動物の絵が得意。

 日本の「カワイイ」文化に通じる繊細でガーリーな造形センス、抑制されていながらシックで美しい色彩感覚など、同じ英国のジュリー・モンクス、フィオーナ・ウッドコックと共通する作風と言えます。構図やデザインも素晴らしいですが、何といっても配色が素敵。線が柔らかく、色が比較的こってりと塗られているのも特色です。

* おすすめ

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『キツネの はじめての ふゆ』 (2017年、アメリカ)

 作:マリオン・デーン・バウアー

 絵:リチャード・ジョーンズ  訳:横山和江

 鈴木出版・2018年

 初めて冬を迎えるキツネが、色々な動物に冬の過ごし方を訊くが、どれも自分には出来なさそうに思える。しかし可愛らしい仲間に出会った彼は、冬になると雪と一緒に踊る事を教えられる。最後のページで説明されているように、実際にキツネは冬眠をせず、求愛行動として踊るそうです。

 色味を抑えながらも、陰影豊かに展開する色彩の表現は絶妙。様々な動物の住む環境に合わせて、ページごとに変化する多彩な構図と遠近法も素晴らしく、雪景色一辺倒で単調になる事がありません。擬人化されていない動物達も、シンプルですっきりとした造形ながら自然な可愛さがあります。

『だいすき ライオンさん』 (2017年、イギリス)

 作:ジム・ヘルモア

 絵:リチャード・ジョーンズ  訳:福本友美子

 フレーベル館・2018年 

 ママと二人、新しい家に引っ越してきたカロ。何もかも真っ白な家の中で一人ぼっちのカロは、誰かと一緒に遊びたいと願うが・・・。片親の家庭、孤独な環境、友達として現れた白いライオンが主人公の友達作りを手助けしている点、主人公の成長が彼を助けた友達との別れに繋がる点と、児童文学らしいお膳立てが完璧になされた物語です。

 シンプルでシックな色彩に始まり、真っ白な室内が彩色されてゆく様は、カロの成長を視覚的にも表現しています。美しくもキュートなタッチは、日本の絵本にも通じる雰囲気。遠景の樹々や建物を積み木のように描く手法には、デザイン的なセンスも現れています。

『ガラスのなかのくじら』 (2018年)

 作:トロイ・ハウエル

 絵:リチャード・ジョーンズ  訳:椎名かおる

 あすなろ書房・2018年

 都会のど真ん中のる巨大水槽に住む、クジラのウェンズデー。ジャンプすると遠くに見えるブルーに惹かれるウェンズデーの元に、あのブルーと同じ色の目をした少女パイパーが現れる。彼女は「あなたの本当のうちは、ここじゃない」と言って去ってゆく・・・

 クジラが本来の場所へ帰るだけのお話ですが、詩的で美しい文章とジョーンズの素晴らしい色彩センスによって、素敵な絵本になりました。最初のページから、巨大水槽のブルーと雨の大都会のグレー(そして傘の群れ!)の対比に目を奪われます。さらに、暗闇の都会の背後を染めるほのかな夕焼け、そしてパイパーの瞳と呼応する大海のブルー!

『山は しっている』 (2018年、イギリス) 

 作:リビー・ウォルデン

 絵:リチャード・ジョーンズ  訳:横山和江

 すずき出版・2020年

 深い山奥、大自然の下で繰り広げられる動植物の一日を描いた、ひたすら美しい一冊。1ページごとに様々な動物の生態を、ネイチャー写真のように描き込んでいますが、さりとて図鑑のような無味乾燥な羅列に陥らず、繊細な色彩美と詩情に溢れているのが素晴らしいです。どの絵も、ちゃんとイラストとして仕上げられているという事でしょうか。

 その意味では、絵本でも図鑑でもなく、これは画集なのだと思います。もう、全てのページをポスターにしたくなるほど。表紙の見開きに、様々な動物が名前入りで描き込まれているのも魅力です。

『きっと どこかに』 (2020年、イギリス)  7/23 追加!

 作・絵:リチャード・ジョーンズ  訳:福本友美子

 フレーベル館・2020年

 おうちのない子犬は、自らの場所を探し求めて歩き続けるが、厳しい人間社会になかなか居場所は見つからない。それでも前だけを向いて、歩いてゆくと…。

 孤独な犬が自分の家を見つけるまでのシンプルなストーリーですが、美しくおしゃれなイラストで見せてしまいます。陰影に富んだ色彩感もさることながら、町並みや群衆など、グラフィカルなデザイン・センスが発揮されたページもすてき。ジョーンズの過去作に出てきた白いライオンを想起させる彫像が出てくる辺り、遊び心も感じられます。

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