おくはら ゆめ

Okuhara Yume

* 作家紹介

 1977年、兵庫県生まれ。辻学園日本調理師専門学校卒業。デビュー作『ワニばあちゃん』で第1回MOE絵本屋さん大賞新人賞受賞。05年、MOE絵本・イラスト大賞年間グランプリ佳作。06年、第12回おひさま大賞最優秀賞。07年、第8回pinpoint絵本コンペ入選。09年、『くさをはむ』で第41回講談社出版文化賞絵本賞を受賞。『シルクハットぞくは よなかの いちじに やってくる』で第18回日本絵本賞。

 ころころと可愛いキャラクター造形や、名作絵本を彷彿させる童心溢れる筆遣い、見事な色彩センスと斬新な構図など、スキルが非常に高い人ですが、彼女の本領は文章も手がけたオリジナル絵本。ぶっとんだ世界観をシュールなユーモアで綴ってゆく文章は、真面目にその本を選んだ大人の良心にカウンターパンチを食らわせる事でしょう。『ルララとトーララ』のような、イラストのみで参加した作品にも、絵で笑いを喚起する破壊力の強い作品があるので要注意。

* 他の作品

 『ワニばあちゃん』『まんまるがかり』『よるのまんなか』(理論社)、『わたしといろんなねこ』『チュンタのあしあと』(あかね書房)、『バケミちゃん』(講談社)、『やすんでいいよ』(白泉社)、『ともだちのいす』(くもん出版)、『かばのブッキくん』(佼成出版社)、『たんぽぽはたんぽぽ』(大日本図書)、『あしたはだれにあえるかな』(自由国民社)、『みずたまりぼっこ』(ひさかたチャイルド)、『うんめぇめぇし』(ほるぷ出版)、『ようかいしりとり』(こぐま社)、『貝の火』(三起商行株式会社)、他

* おすすめ

『くさをはむ』 (2009年・講談社)

 作・絵:おくはらゆめ

 シマウマが草を食む姿をひたすら描き続ける破格の絵本。草の気持ちになってみたり、草の歌を歌ったりはしますが、基本的には草を食むシマウマ達を淡々と描いているだけです。そこに著者特有の半分ふざけたような文章が付けられ、一頭一頭に「くさをはむ」「くさをははむ」「それみてる」「みずをのむ」「くさをはむ」と、いちいち文字で説明。真面目な大人の度肝を抜くアイデアです。この本に出版文化賞を授与した講談社も、なんか凄いです。

『ルララとトーララ クリスマスのプレゼント』 (2010年・講談社)

 作:かんのゆうこ  絵:おくはらゆめ

 子うさぎのルララとトーララはクリスマス・プレゼントにセーターを希望するが、どんな色のセーターがいいかあれこれ想像して…。透明感のある作風で知られる児童文学作家かんのゆうこの王道ストーリーに、見ているだけで「ぷぷっ」と吹き出してしまうふざけたイラストを付けた意欲作(?)。ひと周り年上の作者に怒られなかったか心配になります。

『とこやにいったライオン』 (2010年・教育画劇)

 作:サトシン  絵:おくはらゆめ

 たてがみがボサボサに伸びすぎたライオンは床屋で切ってもらうが、そのうち居眠りしてしまい…。本書は他人の作ですが、文章にもおくはらゆめの感覚と通底するユーモアがあり、間抜けなイラストとの相乗効果で笑わせます。最後のページは、CMのオチみたい。

『ネコナ・デール船長』 (2010年・イースト・プレス)

 作・絵:おくはらゆめ

 ネコの毛並みをなでて魚の群れや嵐を感知する、海の男ネコナ・デール船長。その航海をファンタジー半分、シュール・コント半分、あるいは可愛い半分、悪ふざけ半分みたいな調子で描く、著者特有の「世界観絵本」です。文章を読めばお笑いセンス(関西出身です)は分かりますが、絵本好きとしては、美しくカラフルな色彩と、味わい深いおしゃれなタッチも見過ごせません。

『やきいもするぞ』 (2011年・ゴブリン書房)

 作・絵:おくはらゆめ

 森に集まった動物たち。こうなったらしょうがない(なんでやねん)とやきいもをして、おなら大会になる所までは想定内ですが、そこへおいもの神様が出て来て、読み聞かせをする大人の思考回路を麻痺させるシュール・コントになっていきます。絵のタッチは日本昔話的な名作絵本を思わせるものの、太い筆でコロコロと可愛いデザインのキャラクターを描いた上、こんな型破りなストーリーを語らせるとは、換骨奪還にも程がありますね。

『へっこきよめさま』 (2012年・講談社)

 作:令丈ヒロ子  絵:おくはらゆめ

 よみきかせ日本昔話、というサブタイトル。題名通りの特技を持つよめさまが、世間の役に立つというだけのお話です。文章は大阪出身、児童文学賞で独特のユーモア感覚に注目が集まったという作家によるもの。おくはらゆめ自身の文章とも似たセンスを感じます。最後に、「おはなしをもうひとつ」という事で「ねずみのすもう」という短いお話も付属(絵も文章も小さくしてあるのが笑えます)。

『シルクハットぞくは よなかの いちじに やってくる』 (2012年・童心社)

 作・絵:おくはらゆめ

 夜中の一時にシルクハットを着た男性の一団が集結し、世界に散らばってゆく。その目的は…。謎めいていてコミカルで、かつハートウォーミングなお話を、独特のシュールなタッチで描く絵本。ささめやゆき辺りに通じる、名画の大胆なベタ塗りを思わせる筆致が素晴らしく、画集としても楽しめます。構図も攻めていて、星空に浮かぶシルクハット集団の姿を真下から捉えた画(マントと足しか描かれていません)など、斬新な発想にはっとさせられます。

『みんなのはなび』 (2012年・岩崎書店)

 作・絵:おくはらゆめ

 動物達が花火を見ていたら、体が光り出して花火になっちゃうという、とんでもない発想のお話。荒々しく大胆な線で描かれた動物達は、それが逆に可愛くて、またそれだからこそシュールな展開が笑えます。ぼってりと塗りまくる筆遣いはどの絵本にも共通していますが、色彩的にはこういうダークな色調の作品に、著者の個性がより強く出るように思います。

『くろいながい』 (2014年・あかね書房)

 作・絵:おくはらゆめ

 著者特有の、シュールな笑いが横溢する独創的な絵本。夜よりも黒く長いしっぽを持つ黒猫、切った事のない長い黒髪を持つ黒服の少女。お互いに仲良くなって、その先っちょを見つける旅に出るが…。これまたぶっ飛んだ発想と世界観で、大人の脳天をクラクラさせる事うけあいですが、気がつくと大人用に購入している自分に気付きます。ブラック・テイストながら妙に可愛いイラストも素晴らしく、横に長〜い本のサイズもジョークが効いてます。

『しっぽがぴん』 (2015年・風濤社)

 作・絵:おくはらゆめ

 動物達が、「しっぽがぴん、しっぽがたらり、ぴんもたらりもできるのよ」と言っているだけの絵本ですが、その言葉の感じと絵の雰囲気が実にふざけていて、何となくで笑わせてしまう所が著者の面目躍如です。締めの言葉は、「ぴんも たらりも あっぱれよ」(なんじゃそれ)。

『うさぎになったゆめがみたいの』 (2020年・BL出版)

 作・絵:おくはらゆめ

 うさぎになった夢が見たいために、前歯むき出しで布団に入る女の子の話。失敗して何度も他の動物になった夢を見た上、ついに念願のうさぎになるが…。他愛もないオチが逆に作者らしい、ひたすらイラストと発想でクスクス笑かす絵本。

item6
item7
item8
item9
s
item10
item11
item12
item13
item14
item15

*   *   *

Home  Top