アラン・グレ

Alain Gree

* 作家紹介

 1936年、フランス、パリ郊外のオーボンヌに生まれる。19歳でパリのデザイン学校を卒業。出版社に直接作品を持ち込み、採用される。22歳で出会ったモニークと、24歳で結婚。カステルマン社、アシェット社で子供向けの学習絵本に携わる。他にも推理小説の執筆、子供向けテレビ番組の制作など多彩な分野で活躍。

 イラストレーターとして300冊以上の本を出版し、25カ国で翻訳される。初代Macからコンピューターを使いこなし、グラフィック・デザイナ−として広告やカタログを制作。航海ジャーナリストとしても活動し、モニーク夫人と二度に渡って大西洋横断を達成する。

 ザ・フランス絵本と言えるくらい、グラフィカルなセンスに溢れたキュートな画風で、絵本やグッズは雑貨としての人気も高いようですが、絵本作家によくあるように、画風に複数のラインあり。70年代前後のものはレトロチックでおしゃれですが、『ナターンのもりのなかまたち』シリーズなどは日本の絵本に近いストレートなタッチで描かれています。

* 作品

・アラン・グレのABCえほん 『1 アルファベット』『2 いろ』『3 しぜん』『4 のりもの』 (あすなろ書房)

・ことばのえほん 『いえ』『うみ』『いちば』『いなか』『サーカス』『ふね』『どうぶつえん』『じどうしゃ』 (フレーベル館)

・ナターンのもりのなかまたち 『1リスのピルエット』『2みつばちのアデリーヌ』『3うさぎのロマラン』『ビーバーのアルフィー』『きつつきのグラフィー』『あらいぐまのフィル』『みみずくのプロスペ』『かえるのフリップとフラップ』『きつねのパンクラス』『くまのサリバン』『はりねずみのピッキー』『いぬのナルシス』『かめのシャルロット』 (DEMPAペンタン)

 他

* おすすめ

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『みつばちのシドニー』 (1966/67年、フランス)

 作・絵:アラン・グレ  訳:おおせこのりこ

 ジェネオン エンタテインメント・2007年

 ジェネオンの絵本は原書のデータ記載がないのでよく分からないのですが、下記2冊と共に、アシェット社から66/67年に出た“IL Y A”(〜ここにいるよ)シリーズ全3冊の復刻で間違いないようです。最後のページに主人公の「これでもう分かったかな?」という総括があるのがこのシリーズの特徴で、ほとんど最後近くにならないと、タイトルになっている主人公が登場しません。

 本書も、野山のみつばちの話かと思いきや、ほぼ全篇が都会や人間の描写。広い風景からはじまって、“IL Y A”(そこには〜)を繰り返しながら最後のページにたどり着きます。それにしても、レトロでグラフィカルなイラストのセンスは抜群。ページ数が少なくサイズも小型なので、雑貨好きの大人へのプレゼントとしても最適です。『フランス語のぼうけん』と同様、原語と訳語を併記。

『きんぎょのシブレット』 (1966/67年、フランス)

 作・絵:アラン・グレ  訳:おおせこのりこ

 ジェネオン エンタテインメント・2007年 

 こちらも同じシリーズから。好奇心の強い金魚が主人公ですが、まずは雪山からはじまり、そこを鉄道が走っていて、貨車の中に木箱がありと、シリーズ共通のマトリョーシカ・スタイルです。とにかくイラストが可愛くて、目に鮮やか。

『ひよこのミラベル』 (1966/67年、フランス)

 作・絵:アラン・グレ  訳:おおせこのりこ

 ジェネオン エンタテインメント・2007年 

 同じシリーズから。ひよことあって、主人公の造形的キュートさはピカイチです。海に浮かぶ小さな島から始まり、そこに森があって、村があって、家があって、「これでもう分かったかな?」という具合。風景も人間も動物も、全てがハイセンスなデザイン性をもって描かれているので、目も心もひたすら癒されます。

『フランス語のぼうけん AからZ 500のことば』 (1970年、フランス)

 作・絵:アラン・グレ  訳:オオノトモコ

 ジェネオン エンタテインメント・2006年

 近年は大人向けの作品が中心だというグレですが、昔の子供向け絵本から特に人気の高いものを日本で復刻。グレ本人が手直しを加え、日本オリジナル版として発売されました。60〜70年代のフランスの子供たちが言葉の勉強に使っていたものですが、ジェネオンはむしろ大人向けのオシャレなイラストブックとして扱っている様子です。

 アルファベット26文字ごとに、短い例文や単語をイラスト付きで羅列。絵だけでなく、配置やページ構成もめちゃくちゃ可愛いです。原語と訳語の併記なので、フランス語初級者の方にもお薦め。

『デザインポストカードブックコレクション(1) アラン・グレ ポストカードブック』 (2008年、日本)

 ゴマブックス・2008年 

 タイトル通り、ポストカード20枚ほどの綴り。コレクション(1)とあるのは、複数のイラストレーターのシリーズで、グレが第1弾という事です。ちなみに他はエド・エンバリー(2)、エルマー(3)、スージー・ズー(4)、ペッツ(5)、ルーシー・カズンズ(6)。レトロチックなおしゃれセンスでは、やはりグレが頭一つ抜けている印象です。絶版なのか、プレミア価格で高騰しているのが残念。

『アラン・グレのデザイン』 (2016年、日本)

 パイインターナショナル・2016年 

 世界初となる作品集。絵本の原画はもちろん、版下や色校、ラフ、絵コンテ、挿絵・挿画、広告、イラスト集など、本人所蔵の資料を多数収録しています。

 インタビューの分量も充実していて、「色について」「仕事のスタイル」など貴重なロング・インタビューを掲載。多作な人ゆえ全貌が把握しにくいアーティストでもあるので、資料として非常に価値の高い本だといえます。もちろん雑貨好きには、おしゃれなイラスト集としても楽しい内容。

『アラン・グレのメッセージブック』 (2017年、日本)

 作・絵:アラン・グレ  訳:おおせこのりこ

 アノニマ・スタジオ・2017年 

 日本企画の素敵なメッセージブック。オールカラーで、各ページにイラストと短い文章が載っています。子供の心を忘れずに自由に生きるヒントという事ですが、実際にはもっと幅広く、経験に基づいた含蓄ある言葉の数々。主に自分について語っている感じもあり、説教臭い押し付けがましさがさほどない点、著者の人柄が垣間見えます。イラストがいちいち可愛く、毎日1ページずつ日めくりみたいに読むのも、ほっこりしていいかもしれません。

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