特集  絵本についての本もどうぞ

 絵本というのは、やはり一般的には子供向けというイメージなのか、そういう視点から絵本選びに特化した本やムックはそこそこ出ているのですが、大人向けの本はほとんど見かけません。ここでは数少ない中から珍しくも当コーナーの趣旨に合致した、絵本好きの大人にぴったりの本をセレクト致しました

『世界でいちばん愛される絵本たち 人気作家30人のインタビュー集』 白泉社・2000年

 こういう本って、意外とないんです。絵本作家たちの生の声を聞く機会って、音楽や映画など他の分野に較べて圧倒的に少ない気がします。月刊『MOE』は絵本作家たちのインタビューに積極的に取り組んでいる希少な雑誌ですが、本書はそれを集めて再構成したもの。1999年11月号までしかフォローされていないので、是非続編を企画して欲しい所です。取り上げられている作家たちは、正に私のような絵本好きにはたまらない人選。参考までに下に挙げておきます。

 トーベ・ヤンソン、C・V・オールズバーグ、フレデリック・バック、アニータ・ローベル、エド・エンバリー、エリック・カール、デイヴィッド・ウィーズナー、M・B・ゴフスタイン、レイン・スミス、アンジェラ・バレット、サラ・ファネリ、サラ・ミッダ、ジョン・バーニンガム&ヘレン・オクセンベリー、ジル・バークレム、スーザン・バーレイ、ルーシー・カズンズ、レイモンド・ブリッグズ、アンドレ・ダーハン、タラス・テーラー&アネット・チゾン、ミヒャエル・ゾーヴァ、ビネッテ・シュレーダー、リズベス・ツヴェルガー、レア・レオーニ、ハンス・ド・ビア、ディック・ブルーナ、マーカス・フィスター、ガブリエル・バンサン、マイケル・ボンド、ミヒャエル・エンデ。ちなみに最初の三人は対談ですが、その対談相手も角野栄子、黒井健、新井満と通好みの人選で、こういう所はさすが『MOE』。

『コレクタブル絵本ストア』 ピエ・ブックス・2004年

 タイトルからすると、ちょっと内容が想像しにくい本ですが、いかにもピエ・ブックスらしいおしゃれな好企画で、大人向けの絵本の楽しみにぴったり。コンテンツは大きく分けると二部構成。まずは有名なショップのオーナーが絵本をリコメンドするコーナー。Fabulous OLD BOOK、press six、UTRECHT、paginaという、雑貨&絵本好きなら一度は耳にした事がありそうな四つのお店のオーナーが、様々な絵本を紹介してくれます。そう簡単には手に入らないようなヴィンテージ物の絵本なんかも多いですが、カラー写真がたくさん掲載されているので、紙面で見ているだけでワクワクします。

 後半は、武蔵野美術大学の今井良朗教授のインタビュー。歴史をさかのぼり、絵本とデザインの関係について詳しく語られます。こちらは少々マニアックな内容。この間にコラムとして人気イラストレーター三人、山田詩子(カレルチャペック)、立本倫子(colobockle)、長崎訓子が影響を受けた絵本を紹介するコーナーが挟まれます。オールカラーで写真が豊富なので、ページをめくるだけでも楽しめる本。

『ミムラの絵本日和』 白泉社・2007年

 こちらも月刊『MOE』に連載中の、女優ミムラによる絵本レビューを一冊にまとめたもの。絵本好きを唸らせるセレクションと魅力的な文章で話題を呼んだ本です。各絵本に著者の所有物を合わせた写真も素敵ですが、ブログ風の写真コーナーもあったり、池田あきこ、坂崎千春との対談コーナーもあったり、絵本好きの大人を満足させる仕上がりになっている所はさすがです。文章も、著者の繊細な感受性を反映した楽しいもの。きっと、ほんわかといい育ち方をされた人なんでしょうね。続編にも期待が高まる一冊。

『おとぎの国、ロシアのかわいい本』 小我野明子  (ピエ・ブックス) 

 大阪で図書喫茶「ダーチャ」を運営するライター、小我野明子(こちらもピエ・ブックス刊『ロシアのかわいいデザインたち』の著者の一人)による、ロシアの絵本を150冊以上も紹介した稀少な本。古い年代のものから近年のもの、珍しいものからマルシャークのような有名作家のものまで、実に幅広く掲載されたロシア絵本たち。思わず「これ欲しい!」と叫んでしまう本も一冊や二冊ではありませんが、入手は難しいのでしょうね。表紙だけでなく、中身も数ページずつ紹介されているのが親切です。また、絵本だけでなく教科書や学習本、ぬり絵、雑誌なども取り上げていて、他にも幼稚園訪問や図書館、古書店、雑貨、マトリョーシカの紹介など、コラムも充実。オールカラーです。(本書は“旅と雑貨の書棚から”のコーナーでもご紹介しています。)

チェコへ、絵本を探しに』 谷岡剛史 (産業編集センター) 

 神戸の雑貨・絵本店、チェドックザッカストアの店主による、チェコの絵本、古本屋めぐりガイド。首都プラハのみならず、ブルノ、オストラヴァ、リベレツ、チェスケー・ブジェヨヴィツェと、私など聞いた事もないような街に足を運び、古本屋や絵本を細かく紹介しています。文章にユーモアがあって楽しいのも類書にはない美点で、著者自身もかなり暴走気味の買い付け旅行をしているみたい。お店に行った事がある方ならご存知の通り、お客さんに気さくに話しかけて下さる店主さんなので、この面白紀行を読んでいて、思わずご本人の姿が頭に浮かびました(写真にもちょこちょこ写ってらっしゃいます)。

 オールカラー、写真も豊富で、各店の雰囲気や店主の様子などはよく分かるのですが、盛りだくさんな内容になった代わり、絵本自体の紹介が案外少なく、小さな表紙写真だけまとめて掲載しているページが多いのが残念です。ひと目見ただけで「中身ももっと知りたい!」とウズウズしてしまう絵本も多いので、絵本のみに焦点を絞った続編を期待します。(本書は“旅と雑貨の書棚から”のコーナーでもご紹介しています。)

 

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