プロコフィエフ / 交響曲第1番《古典》

概観

 プロコフィエフは個人的に大好きな作曲家。第5番と並んでよく演奏される曲だが、その第5番は、私は第2楽章以外あまり好きではない。それならロマン性も加わる第6番、第7番の美メロや、めちゃくちゃ変なフレーズが飛び出す第2番の方が気に入っている。演奏時間が20分もないミニ・シンフォニーだが、若きプロコフィエフの才気が満載で、なかなか面白い作品である。

 プロコフィエフの交響曲全集を録音しているメジャー指揮者は少なく、レコード会社もアーティストも、マーラーやブルックナーばかりに偏らないようにして欲しい。最近の人気指揮者は、ハイドンやモーツァルトすら録音しないくらいだし。

 こういう小品の部類に入る曲は、指揮者によって向き不向きがかなり分かれる。圧倒的名演と感じるのはT・トーマス盤で、アンチェル盤、コシュラー盤、ヴェラー盤も素晴らしい。次点ではカラヤン盤、小澤盤、ノセダ盤もお薦め。

*紹介ディスク一覧

56年 アンチェル/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団  

70年 マルティノン/フランス国立放送管弦楽団 

74年 ヴェラー/ロンドン交響楽団  

74年 アシュケナージ/ロンドン交響楽団   8/30 追加!

76年 ジュリーニ/シカゴ交響楽団

76年 コシュラー/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 8/30 追加!

80年 マリナー/ロンドン交響楽団  

81年 マゼール/フランス国立管弦楽団

81年 カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団  

86年 プレヴィン/ロスアンジェルス・フィルハーモニック

89年 小澤征爾/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

91年 ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団 

91年 T・トーマス/ロンドン交響楽団  

00年 ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団  

17年 ノセダ/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団  

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“小規模な曲でも物足りなさを一切感じさせない、極めて爽快かつ濃密な表現”

カレル・アンチェル指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

(録音:1956年  レーベル:スプラフォン)  *モノラル

 当コンビのプロコフィエフ録音は《ピーターと狼》や《ロメオとジュリエット》組曲、《アレクサンドル・ネフスキー》もあり。元はモノラルだと思うのだが、VENIASのコレクション・ボックスに入っている音源は疑似ステレオの処理がされている様子。ホールの美しい残響も取り込んだみずみずしい録音は古さを感じさせず、くっきりと浮き彫りになる直接音は、当コンビのスタイルに合ったイメージ。

 第1楽章は速めのテンポで、きびきびとした調子。すっきりと澄み切った端麗なサウンドが素晴らしく、細部に至るまで生彩に富んだ表現。第2楽章も明朗な音色と、和声感たっぷりのリリカルな合奏が見事。全編に漂う、何とも言えない爽やかな空気感とたおやかな叙情が聴き手を魅了する。とにかく滋味豊かでディティールが雄弁なので、短い尺でも物足りなさを感じさせない。

 第3楽章は全く力みがなく、淡々と進めてゆくにも関わらず、薄味に感じさせる瞬間が全くない、濃密なパフォーマンス。それこそが「語り口」ということなのだろうが、そういう演奏は滅多にないので、何をどうしたらこういう演奏になるのか謎という他ない。第4楽章も緊密極まるシャープな合奏で疾走し、スピード感満点。オケがすこぶる巧く、音色も美麗。アンチェルはまったく、凄い指揮者である。

“快速テンポで勢い良く流した演奏。オケの響きも華やかで爽快”

ジャン・マルティノン指揮 フランス国立放送管弦楽団

(録音:1970年  レーベル:VOX)

 全集録音から。フランス音楽が得意なマルティノンだが、ボロディンやチャイコフスキーなど、意外にロシア物の名盤も多く、プロコフィエフの録音も結構残している。遠目の距離感でたっぷりと残響を取り入れた録音ながら、華やかで明るい色調のサウンド傾向。弦の音など艶やかでみずみずしく、マスの響きが硬直せず柔らかみがあるのは美点。

 ひとことで言って、疾走感のある演奏。特に両端楽章の快速テンポは際立っているが、単にテンポが速いだけではなく、前へ前へという推進力や、スピード感と勢いがあるのが特徴。フランス音楽ではファジーな処理が目立つマルティノンだが、ロシア物ではかっちりとまとまった造形を行うのが面白い所。

“プロコフィエフらしい機智と精妙さを十二分に引き出す、図抜けた才人ヴェラー”

ヴァルター・ヴェラー指揮 ロンドン交響楽団

(録音:1974年  レーベル:デッカ)

 ウィーン・フィルの元コンマスとして知られるヴェラーが、ロンドン・フィルとロンドン響を振り分けた全集録音から。同時に《3つのオレンジへの恋》《スキタイ組曲》《ロシア風序曲》も録音している。

 非常に丁寧で語り口の巧みな演奏。第1楽章は落ち着いたテンポながら、全てが明晰でシャープな造形。フレッシュな響きも素晴らしいが、鮮やかな発色でよく歌う旋律線も魅力的。強弱やアーティキュレーションのメリハリもくっきりと付けられている。軽快なリズム感を駆使し、アタックにも覇気が漲る。何よりも、プロコフィエフらしい機智と精妙な響きを十二分に引き出している点が見事。

 スロー・テンポで情感豊かな第2楽章、同じく遅めのテンポで短い曲想にきっちり存在感を打ち出した第3楽章、スピード感溢れる颯爽とした展開に細やかなニュアンスを盛り込んだ第4楽章と、全くどこをとっても巧緻という他ない棒さばき。ヴェラーの録音はどれを聴いてもハズレがなく、図抜けた才能に恵まれた指揮者だと思う。

 8/30 追加!

“指揮者アシュケナージの初録音ながら、早くも卓越した才気を示す”

ウラディーミル・アシュケナージ指揮 ロンドン交響楽団  

(録音:1974年  レーベル:デッカ)

 プレヴィン/ロンドン響と共演したピアノ協奏曲全集録音で、第3番とカップリングされたもの。同時に《秋に》も収録していて、この2曲が指揮者としてのデビュー盤だったとの事。アシュケナージのプロコフィエフ録音は後に、コンセルトヘボウ管と第5番及び《夢》、クリーヴランド管と《シンデレラ》全曲、サンクトペテルブルク・フィルと小品集もある。

 第1楽章はきびきびとして覇気に溢れ、これを聴く限り、既に指揮者としてのスキルに何の不足もない。幾分輪郭のフォーカスが甘く感じられるが、聴き手の先入観の可能性も除外はできず、同じオケを振るプレヴィンにより緩い演奏が多い事を考えればむしろ健闘していると言える。第2楽章のテンポが異様に遅いのには、早くも主張を発揮している様子。歌い回しもかなり粘る。

 第3楽章もゆったりした佇まいだが、合奏はタイトに引き締められていて、音楽が弛緩する事はない。第4楽章は速めのテンポで、颯爽たるスピード感。それでいて細部の処理は丹念で生彩に富み、木管が勢いよく語尾を切り上げる所やスリリングで熱っぽいコーダなど清新な表現。専業指揮者でもこれほどの演奏はなかなか無いので、当初から指揮の才能も卓越していた人なのだろうと思う。

“格調高く立派な演奏。シカゴ響の意外に柔らかなニュアンス”

カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 シカゴ交響楽団

(録音:1976年  レーベル:ドイツ・グラモフォン)

 ジュリーニの珍しいプロコフィエフ録音で、《展覧会の絵》とカップリング。予想される通りのスロー・テンポで、余りの遅さに音符が一音一音、分離して聴こえるのはユニーク。オケが意外にも柔らかく多様なニュアンスで反応していて、弱音のデリカシーも最大限に生かされているのに感心。みずみずしい響きも心地が良い。

 作曲者が意図したかどうかは別にして、とにかく腰の据わった格調高い演奏。軽妙なフットワークやウィットには欠けるが、この曲を大作のようにじっくり聴かせる演奏は稀である。アーティキュレーションとダイナミクスが精密にコントロールされているのはこの指揮者らしく、スタッカートも切れ味抜群。終楽章も彫りの深い造形が独特だが、ガヴォットはさすがに構えが立派すぎて、大仰に聴こえるかも。

 8/30 追加!

“シャープな筆致で冴え冴えと造型しつつ、豊富な味わいに富む名演”

ズデニェク・コシュラー指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

(録音:1976年  レーベル:スプラフォン)

 全集録音から。このコンビにはPRAGAレーベルから出ているスキタイ組曲の放送録音もあり。スプラフォンでも全集の発売ヴァージョンによっては収録しているものもある。このレーベルのチェコ録音らしく、目の覚めるように鮮明でみずみずしいサウンド。

 第1楽章は、遅めのテンポで画然たる筆致。すこぶる歯切れが良く、シャープな楷書体で全てを冴え冴えと描く一方、潤いや柔らかさ、にじみ出る味わいも感じさせる点は、アンチェルの衣鉢を継ぐ芸風と言える。第2楽章も落ち着いた風情で中庸を行くようでいて、高音域ヴァイオリンの歌い出しからして何やら非凡なセンスを感じさせる。管弦のバランスが見事で、音彩も極めて端麗で美しい。

 第3楽章もゆったりとしているが、響きが徹底して整理されているのと、アタックに弾力を持たせて優美に着地するため、消して重くならないのが好印象。第4楽章は、室内楽的で鋭敏な合奏と雄弁なディティールによって、心の浮き立つような生彩に溢れる。

 

“角の取れたソフトな表現ながら、色彩感と抒情性にメリット”

ネヴィル・マリナー指揮 ロンドン交響楽団

(録音:1980年  レーベル:フィリップス)

 《キージェ中尉》《3つのオレンジへの恋》組曲をカップリングしたプロコフィエフ・アルバムから。当コンビの録音は他に、ビゼーの《アルルの女》《カルメン》組曲とショパンの両協奏曲(ベラ・ダヴィドヴィッチ)、EMIにグリーグ&シューマンのピアノ協奏曲(セシル・ウーセ)の伴奏がある。

 カップリング曲のすこぶる尖鋭な表現からすると、意図的にユルくしたような柔らかな演奏。リズム面の鋭さもこの曲ではあまり出ていない。編成は小さめの様子。第1楽章は遅めのテンポながら造形性に秀で、カップリング曲ほどのエッジやメリハリには乏しいものの、ソフトなアタックでプロコフィエフらしい和声感を表出。

 第2楽章もゆったりしたテンポで精緻に描写しているが、色彩感に優れ、ニュアンスも変化に富む。和声への留意によるものか、抒情的な響きの美しさも際立つ。第3楽章はみずみずしい響きだが、リズムがやや几帳面で、舞曲のムードやウィットが欠如。第4楽章はテンポこそ落ち着いているが、リズム感の良さと生き生きとした躍動感がやっと出てくる。オケも上手く、レスポンスが敏感。

“思いがけずオーソドックスでおとなしいマゼール”

ロリン・マゼール指揮 フランス国立管弦楽団

(録音:1981年  レーベル:ソニー・クラシカル

 組曲《3つのオレンジへの恋》《キ−ジェ中尉》とのカップリング。このコンビのCBS録音はほとんどがそうだが、ラジオ・フランスの103スタジオで収録されていて、響きがデッドで浅いのが残念。

 マゼールとプロコフィエフはいかにも相性ぴったりという感じだが、カップリング曲も含め、意外にオーソドックスで大人しめの演奏。オケのサウンドが明るく、爽快なのが特徴だが、それでも全体的に、色彩が抑制されている印象を受ける。テンポの設定や各部の表情も中庸。

“機敏で快活な表現の中にも、カラヤンらしいダイナミズムと雄弁さが光る名演”

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(録音:1981年  レーベル:ドイツ・グラモフォン)

 モーツァルトのセレナード第13番、グリーグの組曲《ホルベアの時代から》とカップリング。編成を減らしているのか、意外に身軽なサウンドで機敏に演奏しているが、ダイナミズムの幅は大きく、演出が効いている所はさすが当コンビ。一口で言って、華のある演奏。

 第1楽章は中庸のテンポだが、響きが軽く爽快。艶のある美しい音色でスタッカートも歯切れが良く、最弱音を生かして繊細な表現を繰り広げる。弦のグリッサンドなどモダンな書法もよく生かし、全体も生彩に富む。第2楽章も、思わず耳をそばだてる弱音のデリカシーが見事で、80年代のカラヤンらしいスタイル。アンサンブルも実に精緻。

 第3楽章はゆったりしたテンポでやや腰が重いが、ルバートの強調などユーモアも感じられ、プロコフィエフの音楽にはマッチしている。フィナーレも落ち着いた足取りながら細やかな表現を繰り広げ、弱音を主体に設計して、ダイナミックな振幅を演出。胸のすくようなエンディングなど、語り口の雄弁さが光る。

“うまくまとまった好演。プロコフィエフらしい刺激に欠ける面も”

アンドレ・プレヴィン指揮 ロスアンジェルス・フィルハーモニック

(録音:1986年  レーベル:フィリップス

 第5番とカップリング。当コンビは第6番とスキタイ組曲、第7番と交響的協奏曲(ソロはハインリヒ・シフ)も録音している。プレヴィンは昔からプロコフィエフを得意にしているが、これもなかなかの好演。

 第1楽章は所々間延びするというか、響きに隙間が出来て風が吹く感じだが、楽章を追うごとに段々と音が凝集していって、フィナーレは見事に決まる。第2楽章でリズム系のエレメントを強調して、一風変わった造形をしているのも面白い。もう少し音に鋭さがあれば覇気の感じられる演奏になると思うが、上品な仕上がりを目指した様子。

“指揮者とオケ、双方の実力に圧倒される名演”

小澤征爾指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(録音:1989年  レーベル:ドイツ・グラモフォン

 全集録音より。イエス・キリスト教会で収録された第6番とのカップリングだが、こちらはフィルハーモニーザールで収録。ジュリーニと同傾向の重厚なアプローチで、小澤らしいスポーティな演奏を想像しているとびっくりする。第1楽章ではっきりそれと分かるほどテンポを操作するのも、作品をシンフォニックに大きく捉えた結果だろう。

 響きの充実度が例えようもなく素晴らしく、内側から突き上げるように放出されるエネルギーと骨太なサウンドが持つ迫力は、このコンビの他の録音にも共通するもの。それが重苦しくならず、開放的な伸びやかさに向かう所がこの指揮者の美点。第2楽章のすこぶる遅いテンポと集中力も凄いが、フィナーレの溌剌たる躍動感はさすが。

“格調高い表現ながら、真面目すぎてユーモアを欠くムーティ”

リッカルド・ムーティ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

(録音:1991年  レーベル:フィリップス)

 ムーティは意外にプロコフィエフを得意としていて、当コンビは他にもカップリングの第3番や、第5番と《ヴォルガとドンの出会い》、《ロメオとジュリエット》組曲を録音している他、フィルハーモニア管とは《イワン雷帝》や協奏曲の伴奏録音もある。

 彼のモーツァルト演奏にも通じる端正な佇まいで、落ち着いたテンポを基調に、きびきびとしたリズム、流麗なカンタービレと、風格の豊かな表現の一方、鋭いモダニズムやアイロニーは影を潜める。どこまでも立派な演奏ではあるが、ムーティのような直球のシリアス指揮者は、ユーモアが求められる作品に向かないかもしれない。同時収録された3番の力演と較べると、肩の力は抜けているが。オケは好演。

“全てのフレーズが内側からグルーヴ感を放つ、鋭敏極まりない演奏”

マイケル・ティルソン・トーマス指揮 ロンドン交響楽団

(録音:1991年  レーベル:ソニー・クラシカル

 第5番とカップリング。当コンビはピアノ協奏曲第1、2番(ソロはフェルツマン)を録音している他、T.トーマスのプロコフィエフ録音にはロス・フィルとの《キージェ中尉》《3つのオレンジへの恋》、序曲作品42、サンフランシスコ響との《ロメオとジュリエット》もある。

 T・トーマスは作品次第でオーソドックスにもアグレッシヴにもなる指揮者だが、当盤は響きのタイトさ、感覚の鋭敏さにおいて、数ある競合盤の中でも頭一つ抜きん出ている。隅々にまで神経が行き届き、トゥッティからソロに至るあらゆるフレーズが、内在するグルーヴとリズムを生き生きと表出している所、非凡なセンスと言わねばならない。ガヴォットはテンポが遅すぎるのが気になるが、エンディングのよたよたとした千鳥足は自由闊達さが楽しい。

クリーヴランド一流の技巧的パフォーマンス。快速スピードのフィナーレは圧巻!”

クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮 クリーヴランド管弦楽団

(録音:1998年  レーベル:クリーヴランド管弦楽団)

 オケ自主制作による10枚組ライヴ・セット中の音源。ドホナーニは、商業録音ではあまりプロコフィエフに意欲を示さない印象があるが、こういう意外なプログラムが聴けるのもセット物の良い所。ややデッドで奥行きの浅い録音だが、音そのものはクリアに収録。

 第1楽章はきびきびとしたテンポ運び。合奏が精緻で、普段は聴こえないようなディティールの動きも耳に入ってくる。第2、第3楽章も透明度の高い響きと鮮やかな色彩が魅力的。後者のコーダでは、即興的にテンポを落とし、ユーモアたっぷりの間合いで千鳥足を演出。凄いのがフィナーレ。まるでアクロバットのような快速パフォーマンスで、一糸乱れぬアンサンブルが凄絶。リズムも冴えている。

“小気味好い棒さばきと鮮やかな音彩で細部を隈なく照射”

ジャナンドレア・ノセダ指揮 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

(録音:2017年  レーベル:ヘリコン・クラシックス) 

 第5番とカップリングした楽団自主レーベルのライヴ盤。当顔合わせでは、ベルリオーズの《幻想》とボロディンの歌劇《イーゴリ公》序曲を組み合わせたアルバムも出ている。やや残響がデッドだが直接音が鮮明で、高音域もみずみずしい。

 第1楽章は遅めのテンポながら、鮮やかな音彩で細部を隈なく照射したモダンな表現。スタッカートの歯切れが良く、生き生きとしたリズムで活力に溢れる。第2楽章もスロー・テンポで、優美なタッチとしなやかなカンタービレが印象的。オケの明るい音色は、演奏全体に朗らな雰囲気をもたらしている。

 第3楽章はやや大柄だが、一体感のある合奏でカヴァー。中間部の木管など、色彩感も豊か。第4楽章はスピード感があり、ピッコロや高弦の鋭い音感も効果的。強弱のニュアンスも細かく付け、多彩な表情に富む。コーダに向けての力感の開放、小気味好い棒さばきも痛快。

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