ニコラ・ピオヴァーニ

Nicola Piovani

 1946年、ローマ生まれ。ミラノのヴェルディ音楽院を卒業後、ギリシャの作曲家マノス・ハジキダス(アカデミー主題歌賞の名曲“日曜日はダメよ”を作った人です)に師事。ニーノ・ロータ、エンニオ・モリコーネ亡き後、イタリアを代表する作曲家として尊敬を集める人。代表作は『ライフ・イズ・ビューティフル』辺りでしょうか。マルコ・ヴェロッキオ監督の他、パオロ&ヴィットリオのタヴィアーニ兄弟ともずっと組んでいます。

 フェデリコ・フェリーニ監督は、ロータとは単なる作曲家の枠を越えたパートナーとして繋がっていましたが、ロータを失った後はしばらく迷走します。『女の都』で組んだルイス・バカロフはしっくりこなかったのか、次作『そして船は行く』ではクラシック音楽を使用。しかし次の『ジンジャーとフレッド』で起用した新進作曲家ピオヴァーニとは相性が良かったようで、『インテルビスタ』、遺作の『ボイス・オブ・ムーン』と最後までコラボを続けました。

*お薦めディスク

 8/28 追加!

『サン・ロレンツォの夜』

 La Notte Di San Lorenzo (1982年 CAM) *輸入盤

 タヴォアーニ兄弟監督とのコラボの一つで、その中では最も優れたスコアだと思います。1991年にCD化。優美で童心があるメロディのように聴こえて、端々から哀切な叙情が滲み出てくるテーマ曲は、そのまま映画の内容を反映しています。ひたむきに全身する凛々しいアクション・スコアもインパクトあり。

 サントラは15分強のPART1、9分強のPART2という、大きな流れで収録されていて、それに既存曲をアレンジした短いトラックが3つ入る構成。それぞれリパブリック讃歌、ヴェルディのレクイエム、ワーグナーの歌劇《タンホイザー》のアリアから旋律が取られています。

『ジンジャーとフレッド』

 Ginger e Fred (1986年 ミラン)

 フェリーニと初めて組んだ作品。彼がニーノ・ロータの後任に考えたのも当然の、優れた出来映えです。ショーの場面で何度もかかる金管のファンファーレは、フェリーニの映画には実にしっくり来る虚構性が素敵。小粋な足取りの中に、どことなくアンニュイなけだるさが漂うメイン・テーマも素晴らしく、ピアノがノスタルジックに弾むサブ・テーマも秀逸です。

 映画の中では、古い時代の音楽やダンスに現代のそれが対比されていますが、ピオヴァーニが現代のダンス・ミュージックとして作曲しているのは、世にも珍妙なロック。これがフェリーニお得意の戯画化なのか、単にピオヴァーニが世間ずれしているのか、真相を知りたい所です。アーヴィング・バーリンの“トップ・ハット”など、スタンダード曲も収録。正に新時代のフェリーニ映画開幕を告げる、名サントラと言えるでしょう。

『インテルビスタ』

 Intervista (1987年 ヴァージン・レコーズ)

 フェリーニと組んだ作品の中では、本作が一番優れた仕事だと思います。『崖』『白い酋長』『フェリーニの道化師』『甘い生活』と、過去のフェリーニ作品のメロディを随所に散りばめながらも、ピオヴァーニ自身が作曲したメイン・テーマが非常に印象的で、先人への敬意と共に、自分の才能に対する静かな矜持も感じさせます。次々に色々なメロディが飛び出すので、メドレー的に聴ける楽しい音楽。

 ちなみにフェリーニの遺作で、ピオヴァーニと3作目のコラボとなる『ボイス・オブ・ムーン』もテーマ曲は優れていますが、同じメロディばかり何度も繰り返されるサントラで、一度聴くだけでも飽きてしまうのが難点です。

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