加藤 和彦

Katoh Kazuhiko

 1947年、京都生まれ。2009年没。ザ・フォーク・クルセイダーズ、サディスティック・ミカ・バンドで活躍し、日本のフォーク、ロック・シーンに早くから洋楽の要素を持ち込んだ代表的な一人。“あの素晴らしい愛をもう一度”“帰って来たヨッパライ”“イムジン河”“悲しくてやりきれない”など、ヒット曲も多数。稲垣潤一など、他のアーティストへの提供曲にも素晴らしいものがあります。

 タンゴやワルツ、ジャズなど欧米の音楽を歌謡曲とミックスさせ、妻・安井かずみの歌詞と金子國義のイラスト・ジャケットでお洒落な世界観を形成したソロ・アルバム群にもファンが多いです。歌唱力や声質には疑問符が付くものの、センスの良さで群を抜くアーティスト。

 映画音楽は数こそ多くありませんが、彼らしいセンスが発揮された『野蛮人のように』は傑作でした。他に、『だいじょうぶマイ・フレンド』『天国の駅/HEAVEN STATION』『幕末青春グラフィティ/Ronin 坂本龍馬』『ハワイアン・ドリーム』『ガラスの中の少女』『花の降る午後』『継承盃』『第失恋。』『バッチギ!』『青いうた/のど自慢 青春篇』『つゆのひとしずく/植田正治の写真世界を彷徨う』『バッチギ!LOVE&PEACE』。

*お薦めディスク

『探偵物語』

 (1983年 EAST WORLD)

 薬師丸ひろ子、松田優作主演の角川映画サントラ。主題歌の“探偵物語”“すこしだけやさしく”が松本隆作詞、大滝詠一作曲と豪華で、スコア編曲を清水信之が手掛けているのと合わせ、日本のポップ・シーンの大家が揃ったアルバムとも言えます。

 テーマ曲は快活でおしゃれ、ビッグバンド風のアレンジもあり、印象的なテーマ曲があった時代の映画界が懐かしい。ピアノ・ソロのヴァージョンは、長いリバーブを掛けたアンビエント風のサウンドになっていて、時代に先駆けるセンスも窺わせます。マンボやサルサ、ジャズの要素を挿入する辺りも、加藤和彦らしいテイスト。英語詞のオールディーズ風ソングもあります。角川サントラなので、映画のセリフが入るのが無惨。

『野蛮人のように』

 (1986年 EAST WORLD)

 こちらも薬師丸ひろ子、柴田恭平主演の角川映画。井上陽水作曲の主題歌以外は、歌モノも含め全て加藤和彦の曲です。やはり角川サントラなので、セリフが入ってくるのが暴挙。スコアの編曲は国吉良一。シンセサイザーを多用したアレンジですが、古い音楽ジャンルを多彩に取り込み、オーケストラのチェイス・ミュージックを模したナンバーもあるなど、今聴いても斬新。

 このスコアの素晴らしさは公開当時から定評があり、タンゴやジャズ、民族音楽などを配合したシックな夜の音楽は、川島透監督の幻想的な映像美にうまくマッチしていました。ロマンティックでハードボイルドな3拍子のテーマ曲は、フリューゲル・ホルンやバンドネオンの音色が効果的で、浜辺の家で激しく花火が飛び交う中、主演の2人がスローモーションで踊るシーンで鮮烈の極み。

『菩提樹 リンデンバウム』

 (1988年 CBSソニー)

 南野陽子主演映画サントラ。シューベルトの表題曲と、南野陽子が歌う2曲のポップ・ソング以外は全て加藤和彦作曲・編曲。“菩提樹”はパリの木の十字架合唱団のアカペラ、スコアの演奏はL'Orchestre de Ma Vie、サックスの曲はBig Mac、英語詞のポップ・ソングはBrian Richyとなっていますが、音楽に関する解説が全くないので、どういう人達なのか全く分かりません。スコアはどう聴いてもシンセサイザーの音なので、勝手にオーケストラの名前を付けただけかも。

 全体にゆったりと叙情的な雰囲気で、スローな3拍子の曲がほとんど。ピアノによるワルツは、テーマ曲がショパンの有名なノクターンにそっくりで、ドビュッシー風もあるなど亜流っぽいのはご愛嬌。ヨーロッパ風のクラシカルなタッチを基調にしている点は、さすが加藤和彦です。角川映画ではないのに、一部セリフがダビングされているのは残念。

『LE PILOTE』

 (1992年 TM FACTORY)

 マーク・ゴールデンバーグとの共作アルバム。解説書にも帯にも説明がないのでよく分かりませんが、映画のサントラではなく、鈴木亜久里が所属していたF-1チーム“Footwork Mugen”のイメージ音楽集みたいな体裁です。冒頭曲“INNOCENCE”は東芝DynabokkのCMソング。帯にはこのチームのドキュメンタリーらしき『VICTORY』というビデオの宣伝も載っていますので、その映像のサントラだったのかもしれません。

 曲そのものはソロ・アルバムの延長線上にあり、メロディアスな歌謡曲をヨーロッパ風の各音楽ジャンルに味付けしたような雰囲気。インストなので、音色の雰囲気もあってより欧州色が強いですが、メロディ自体は完全に加藤節です。時代柄、シンセをメインに使いながらも、生楽器や民族楽器の音色も生かしています。ディスコ調のリズムを用い、そこにフラメンコ風のギターを載せるという攻めた曲もあり。ポップな曲もありますが、全体に叙情性の強い、ロマンティックな音楽。

 全9曲中、加藤が6曲、ゴールデンバーグが3曲を担当。それぞれ作・編曲、プロデュース、演奏を自身が手掛け、録音は加藤が東京の自前スタジオ、ゴールデンバーグはカリフォルニアで行っています。両者の音楽には雰囲気に親和性もあり、アルバム全体として統一感もあり。

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