製作はスコット自身の他、スコット・フリーのミミ・ポーク・ギトリン、第1助監督を兼任するテリー・ニーダムが担当。第2助監督のアダム・ソムナーも前作から続投している他、後のスコット作品を多くプロデュースするマーク・ハッファムが、西インド・ユニットのプロダクション・マネージャーを務めています。脚本と共同製作を兼ねる新人脚本家トッド・ロビンソンは、他にめぼしい執筆作はないようですが、本作でヒューストン国際映画祭の最優秀脚本・審査員特別賞に輝きました。 撮影監督のヒュー・ジョンソンは、『エイリアン』を撮影したデレク・ヴァンリントのスタジオで働いていた人で、CM時代にスコット兄弟と知り合っています。過去のスコット作品でも助手やセカンド・ユニットの撮影を担当していますが、本作のキャメラワークと映像美は見事なもの。次作『G.I.ジェーン』を担当した後、また裏方に戻ってしまったのは残念です。 プロダクション・デザイナーは『デュエリスト/決闘者』でも組んだピーター・J・ハンプトンと、『1492コロンブス』の美術を監修したレスリー・トムキンズ。ロケは、まずカリブ海の西インド諸島で開始。セント・ヴィンセント島のヤング・アイランド・ハーバーでは、色を塗り直してハバナの波止場として撮影。スフレール山ではクレーターまでヘリで機材を運び、ガラパゴス島山頂のシーンを撮影。次にセント・ルシア島へ移り、町の広場や波止場、市場、街路を3日間で撮影。さらにグレナダ島で、変化に富む景観とヨーロッパ風の建築を撮影しています。 さらにマルタ共和国のカルカラにあるメディテレニアン・フィルム・スタジオ(『グラディエーター』でも使用)で、有名な野外タンクを使って嵐のシーンを撮影。過去に『ポパイ』や『タイタンの戦い』も撮影された巨大プールで、とてもセットとは思えない撮影を敢行。その後、アメリカに戻ってファースト・シーンを撮影し、英国での撮影を経て、南アフリカのケープタウンで荒れる海の場面を撮り、約4か月の撮影を終了。編集のジェリー・ハンブリングは、『ミッドナイト・エクスプレス』『ザ・コミットメンツ』『父の祈りを』等でアカデミー賞にノミネートされたベテランです。 音楽は当初、デヴィッド・リーン作品で有名なモーリス・ジャールに依頼されました。スコットとは元々『ブラック・レイン』で組む話もあり、仮編集のテンプ・トラックにもジャールの『刑事ジョン・ブック/目撃者』や『いまを生きる』の音楽が付いていたそうです。この雰囲気で作曲して欲しいと頼まれたジャールは、合唱入りの壮大な音楽を書き、再編集の際も追加の作曲で協力しますが、2度目の録音セッションで突然、プロデューサーから「リドリーが録音を中止して欲しいと言っている」と伝えられます。 ジャールは合唱団までブッキングしていたため、せめて録音だけでもさせて欲しいと粘りますが、それも却下。ギャラも支払われなかった事に怒ったジャールは、スコットを訴えました。過去のジェリー・ゴールドスミスとのトラブル同様、途中経過で正直な感想を伝えず、突然キャンセルを伝える点が問題のようです。結局、スコットは今回もハンス・ジマーに相談し、ジェフ・ローナを紹介してもらって曲を全面的に差し替えます。ジマー自身も、追加音楽の作曲で助っ人参加。スティングによるエンディング・テーマ、“ヴァルパラディソ”も評判を呼びました。 ローナは『トイズ』等にも参加していたジマーの一派で、インパクトの強いテーマ曲こそないものの、センスの良いハイ・クオリティのスコアが耳を惹きます。結果的にはジャールの音楽より良かったのかもしれませんが、全くベクトルの異なる作風ですから、大方の仕上がりは予測できた筈です(スコット作品ではいつも、オーケストラ音楽からシンセ音楽に差し替えられます)。明確なヴィジョンを持つ仕事ぶりで有名なスコットですが、音楽をめぐる態度だけは常に曖昧で、私にもよく理解できません。 |