製作は、ドリームワークスの重役夫妻ウォルター・パークスとローリー・マクドナルド。脚本家出身のパークスはうるさく口を出す事で有名で、本作のコンセプトをめぐる紆余曲折にも大きく関わっている。『シンドラーのリスト』のブランコ・ラスティグも製作を担当しているが、よほど監督と気が合ったのか、後のスコット作品もしばらくプロデュースし続けている。 メイキング・ドキュメンタリーによれば、脚本はまず『アミスタッド』のデヴィッド・フランゾーニが大きな枠組みを作ったが、セリフが複雑で分かりにくく、キャラクターも深める必要があったとの事。そこでスコットが知り合いの劇作家ジョン・ローガンを引き入れ、人間関係を重視して映画を3幕物に構成し直す。完成版に採用された名ゼリフのほとんどがローガンのものとの事。 しかし撮影2週間前になってもまとまらなかったため、脚本は『永遠の愛を生きて』のウィリアム・ニコルソンに引き継がれる。彼によれば、「暗い復讐の話だったし、第3幕も混乱していたが、あの世で家族に会う話にして大きく印象が変わった。大ヒットへの鍵を握る女性客の心を掴んだのは、恐らくここだ。大事なのは、誰かを殺したい男ではなく、誰かを愛する男の話にする事だった。どうすれば主人公の死が勝利に変わり、報われるかを考えた」。変更されたラストシーンは関係者の胸を打ち、映画全体のテイストが大きく変わった。 撮影のジョン・マシソンはスコット作品初参加だが、息子ジェイクの監督デビュー作『プランケット&マクレーン』のカットがあらゆる面で素晴らしい出来だったのに感心し、撮影を担当したマシソンを勧誘したという。スコット曰く、「典型的な手法で戦闘場面を撮るのはやめて、大掛かりで荘厳な映像を構成するため、ジョンと2人で適切なレンズを選んでいった。闘技場の場面はビデオ撮影の技法を応用し、多彩な技術を駆使して手持ちキャメラで今風に作り込んだ」。 プロダクション・デザインのアーサー・マックス、衣装のジャンティ・イェーツ、編集のピエトロ・スカリアと、前作『G.I.ジェーン』から固まりつつあった鉄壁の布陣は、本作で出来上がった印象。以降このチームは、プロフェッショナルな仕事ぶりでスコット作品を支え続ける。助監督のテリー・ニーダムやアダム・ソムナー、セカンド・ユニットを担当したアレクサンダー・ウィット、セット装飾のソーニャ・クラウスなど、裏方のチームも完全に固まってきた感じ。 当初はローマで数週間のロケハンが行われたが、遺跡では撮影の許可が下りないと分かり、あちこちで撮影して継ぎ合わせる手法に切り替えられた。冒頭の戦闘シーンは、イングランド南部サリーの森林。伐採される予定だったため、火事を起こす許可も得られた。 第2幕はモロッコの古い城塞都市ワルサザードで、残っていたローマ風の闘技場を改修して使用。ローマの場面は、『白い嵐』で滞在したマルタ島のミフィサルファイにある前フェニキア時代の廃墟や、ナポレオンの軍隊が使った17世紀スペインの砦、コロシアムが再現できる広い観兵広場を使い、これらを組み合わせた。以後スコットは、物語の年代設定には関係なく、モロッコやマルタをお気に入りのロケ地として何度も使っている。 音楽はハンス・ジマーと、歌を担当したリサ・ジェラードが共作。元々彼女の曲が仮トラックに付いていたそうだが、数日の録音予定が数か月続き、気が合って監督と3人で試行錯誤したそう。ジマーの音楽の素晴らしさは前述の通りである。曰く、「女性にも最後まで観て欲しいから、感情豊かな音楽にした。こういう映画では冒険や挑戦をしなくては意味がない。リドリーは大きなキャンバスを与えてくれた。もう何十作もやっているが、オーケストラのプレイヤーが映画について知りたがったのは初めての事だ。彼らが映像や物語に興味を示したんだよ」。 |