厳しい現実の中で生きる子供たちの姿を描いた、国際オムニバスの一話。国連の二つの機関、ユニセフとWFP国連食糧計画が制作に参加していて、製作会社が得る収益も全額が後者に寄付されます。監督にはユニークな人選がなされていますが、本作で際立っているのは、驚くほど繊細で多彩な映像美。こういうシビアな内容のオムニバスに映像美までは期待していなかったので、これは意外でした。演技経験のない子も多いスクリーン上の子供たちもみな生き生きとして、正に自分たちの生きる状況を体現しています。 リドリー・スコット篇『ジョナサン』は、娘のジョーダンと共同監督。もっとも、リドリーは師匠の立場で参加し、主に撮影を進めたのはジョーダンのようです。脚本もジョーダンによるもの。さすがに父リドリーの単独作とは違い、最初のジョナサンと妻のやり取りなど、実力派俳優を起用しているにも関わらずどこかアマチュアっぽい拙さも感じられます。特に妻の性格描写は無きに等しく、そのせいで主人公の苦悩が浅く見えてしまうのも残念。 しかし、森の中が戦場になる辺りはかなり本格的な戦争映画の趣で、スモークも焚いたりして迫力あり。その中にごく日常的な服装の子供達を置く事で、中東やアフリカで起っている紛争の無惨な現実をヴィヴィッドに感じさせるのは、意義のある演出です。「こんな状況にこの子達がいてはいけない」と、見ていて本能に訴えかけてくるものがあります。ただ16分というのは中途半端な尺で、あと10分プラスするか、思い切って10分間の短篇にすれば、構成に工夫も凝らせたのではないでしょうか。 ちなみに、オムニバスの他の参加監督はメディ・カレフ、エミール・クストリッツァ、スパイク・リー、カティア・ルンド、ステファノ・ヴィネルッソ、ジョン・ウー。映画全体のコメントに関しては、別のコーナー“オムニバスの虜”で取り上げているので、そちらをご参照下さい。 |