リドリー・スコットの映画を支えるスタッフ達

 複数のスコット作品に参加している人々を追ってみましょう。

《プロデューサー》

アイヴァー・パウエル

 『デュエリスト/決闘者』『エイリアン』『ブレードランナー』

 スコットの初期3作品で共同製作者として参加。『ブレードランナー』は劇映画から撤退し、CMの仕事に専念している言われます。ちなみにイギリスでいう共同製作者とは、アメリカのライン・プロデューサーに相当し、本編撮影段階の様々な雑務をこなす重要なポジション。

 メイキング映像にも主役格で登場して喋りまくっていますが、『ブレードランナー』の企画から降ろされて映画にも批判的なハンプトン・ファンチャーが、パウエルの事を「チンピラのような男」だったと言っているのが笑えます。『エイリアン』の準備期間に、参考として『悪魔のいけにえ』を含む大量のホラー映画を監督に観せたのもこの人。

ミミ・ポーク(・ソテラ、・ギトリン)

 『誰かに見られてる』『ブラック・レイン』『テルマ&ルイーズ』『1492 コロンブス』『白い嵐』

 ミネアポリス出身。ミドルバリー大学ボーモント校で商業経済学を学ぶ。卒業後はニューヨークに移り、企業PR用のフィルム制作会社を経営しながら、ニューヨーク大学映画科の夜間部に通った。83年にロンドンに渡り、スコットと出会う。87年にはロスに移り、パーシー・メイン・プロダクションの副社長に。これを元に設立されたスコット・フリーでも辣腕を振るう。スコット・フリーの『ゆかいな天使/トラブるモンキー』『明日に向かって…』を手がけてフリーに転身し、『ヴァージン・ハンド』『コール』『フラワーショウ!』等を製作。

 スコット曰く、「ミミは『レジェンド/光と闇の伝説』の時から私を補佐してくれていた。パーシー・メインは私が初めて設立した小規模な企画会社だったが、ミミが運営していたんだ。私が立ち上げるオフィスはみんな、誰よりもまず最初にミミが切り盛りしてくれたんだよ」

テリー・ニーダム

 『1492 コロンブス』(第1助監督)、『白い嵐』『G.I.ジェーン』『グラディエーター』『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』(以上、第1助監督と製作)、『キングダム・オブ・ヘブン』

 スコット作品の第1助監督を『ブラックホーク・ダウン』まで長年に渡って務め、『白い嵐』以降はプロデューサーも兼任。他に、『アベンジャーズ』『リーグ・オブ・レジェンド/時空を越えた戦い』など。

ナイジェル・ウール

 『白い嵐』『G.I.ジェーン』

ブランコ・ラスティグ

 『グラディエーター』『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』『キングダム・オブ・ヘブン』『プロヴァンスの贈りもの』『アメリカン・ギャングスター』

 クロアアチア出身、ナチスの強制収容所で2年間過ごす。戦後はクロアチア最大の映画スタジオ、ヤドラン・フィルムズでキャリアをスタート。『屋根の上のバイオリン弾き』『ソフィーの選択』でプロダクション・マネージャー、『ブリキの太鼓』で助監督を務めた。『シンドラーのリスト』『グラディエーター』でアカデミー賞作品賞を受賞。

 スピルバーグ監督『シンドラーのリスト』ではアカデミー賞受賞式のスピーチで、「私はホロコーストの生き残りで、番号は83317番でした。アウシュヴィッツからこの舞台まで長い道程でした」と語り、会場が万来の拍手と感動に包まれました。

チャールズ・J・D・シュリッセル

 『マッチスティック・メン』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』

 ワシントン大学とサンフランシスコ州立大学で映画とメディアを専攻し、UCLAで経済学で学位を取得して首席で卒業。学費を払うために、インディペンデント映画、MV、CMの仕事をする。

 アメリカン・フィルム・インスティチュートの製作部門に入学後、『スペースボール』でメル・ブルックスの助手を務め、バリー・レヴィンソン監督が設立したボルティモア・ピクチャーズに企画部長として参加。『わが心のボルチモア』でポスト・プロダクション監修を担当、製作主任として『バグジー』『トイズ』『ホミサイド/殺人捜査課』『KAFKA/迷宮の悪夢』にも参加。独立後は、『あなたが寝てる間に』『レッド・プラネット』『インソムニア』『フライトプラン』『プレステージ』など。

リサ・エルジー

 『キングダム・オブ・ヘブン』『プロヴァンスの贈りもの』

 スコット・フリーの社長を務めた時期、『イン・ハー・シューズ』『トリスタンとイゾルデ』『ドミノ』『ジェシー・ジェームズの暗殺』でも製作を担当。他に『メン・イン・キャット』など。

ブライアン・グレイザー

 『アメリカン・ギャングスター』『ロビン・フッド』

 ロン・ハワード監督と立ち上げたイマジン・エンターティメントの代表として、初期作『ラブ IN ニューヨーク』から、ほぼ全てのハワード作品をプロデュース。『フェリシティの青春』や『24 TWENTY FOUR』などTVシリーズも大ヒットさせ、98年にはハリウッドのウォーク・オブ・フェイムに名前を刻まれた数少ないプロデューサーの一人となる。ハワード作品の他に、『スパイ・ライク・アス』『キンダガートン・コップ』『ドアーズ』『バラ色の選択』『サイコ』『永遠の僕たち』『カウボーイ&エイリアン』『ロック・ザ・カスパ!』『チェンジリング』など。

ジム・ウィテイカー

 『アメリカン・ギャングスター』『ロビン・フッド』

 ロン・ハワードとブライアン・グレイザーが立ち上げたイマジン・エンターティメントの、映画製作部門トップ。他に、『8 Mile』『プライド/栄光への絆』『おさるのジョージ/Curious George』『チェンジリング』など。

マイケル・コスティガン

 『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』『プロメテウス』『悪の法則』

 ソニー・ピクチャーズで製作部門の取締役副社長を9年間務め、『17歳のカルテ』をはじめ多くの映画の買付、製作を仕切る。2005年から12年までスコット・フリーの社長を務め、その後はコタ・フィルムズの社長。他に、『ブローバック・マウンテン』『イン・ハー・シューズ』『ドミノ』『サブウェイ123/激突』などを製作。

マイケル・エレンバーグ

 『ロビン・フッド』『プロメテウス』

マーク・ハッファム

 『白い嵐』(西インド・ユニットのプロダクション・マネージャー)、『プロメテウス』『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』『エイリアン:コヴェナント』『ゲティ家の身代金』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』『ハウス・オブ・グッチ』

 スピルバーグの『プライベート・ライアン』で初めてアソシエイト・プロデューサーとしてクレジットされ、その後『コレリ大尉のマンドリン』『クイルズ』『めぐりあう時間たち』『ジョニー・イングリッシュ』『マンマ・ミーア!』など、数々の話題作を製作。スコット作品では、『白い嵐』の西インド・ユニットで製作主任として関わった後、『プロメテウス』以後ずっと製作者として組んでいます。

マイケル・シェイファー

 『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』『エイリアン:コヴェナント』

 ワインスタイン・カンパニーの製作部責任者を務めたのち、サミット・エンターテインメントのシニア・エグゼクティヴとして『ハートロッカー』『インポッシブル』『グランド・イリュージョン』『50/50 フィフティ・フィフティ』『フッテージ』『ミッション:8ミニッツ』などに関わる。その後、スコット・フリーの社長として多くの作品を製作。ニュー・リージェンシー・プロダクションズの映画グループ社長も務める。

テレサ・ケリー

 『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』『マッチスティック・メン』『プロヴァンスの贈りもの』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』(以上、ポスト・プロダクション監修)、『キングダム・オブ・ヘブン』『プロメテウス』『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』『エイリアン:コヴェナント』『ゲティ家の身代金』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 『ハンニバル』以降、スコット作品のポスト・プロダクションを統括している重要人物。その手腕が認められてか、『キングダム・オブ・ヘブン』と『プロメテウス』以降の作品ではプロデューサーを担当。

アダム・ソムナー

 『1492コロンブス』(助監督)、『白い嵐』『G.I.ジェーン』『グラディエーター』『ハンニバル』(以上、第2助監督)、『ブラックホーク・ダウン』(セカンド・ユニット第1助監督)、『キングダム・オブ・ヘブン』(第1助監督)、『エクソダス:神と王』、『ゲティ家の身代金』(イギリス・ユニット第1助監督)

 『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』のセカンド・ユニットで第3助監督を担当後、『宇宙戦争』以降のスピルバーグ作品で第1助監督を担当。『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』でプロデューサー昇格後も助監督を続け、『戦火の馬』『リンカーン』『ブリッジ・オブ・スパイ』『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』『レディ・プレイヤー1』に参加。他にマーティン・スコセッシ監督『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ザ・マスター』『インヒアレント・ヴァイス』も製作。

 ずっとスコット作品の第1助監督だったテリー・ニーダムが、『キングダム・オブ・ヘブン』ではプロデュースに専念したため、第2助監督だったソムナーが昇格。曰く、「今までコーヒーを入れたり、昼食の手配をしたり、交通を止めたり、駆けずり回ってずっと第1助監督を目指してきた。スケジュールの計画や管理、撮影の進行など、責任が重くて大変な仕事だけど、これほどの大作には二度と関われないかもしれない。誇りに思うよ」。彼もまた非常に有能な人らしく、久々のスコット作品『エクソダス:神と王』にはプロデューサーとして参加。

アイダン・エリオット

 『ゲティ家の身代金』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

ケヴィン・J・ウォルシュ

 『ゲティ家の身代金』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 カリフォルニア州生まれ。製作会社スコットフリーの代表。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー最優秀作品賞にノミネート。他に『ナイル川殺人事件』など。

マルコ・ヴァレリオ・プジーニ

 『ゲティ家の身代金』『ハウス・オブ・グッチ』

《脚本家》

ジョン・ローガン

 『グラディエーター』『エイリアン:コヴェナント』

 数多くの戯曲を手掛け、演劇界で輝かしいキャリアを誇る劇作家。『グラディエーター』『アビエイター』でアカデミー賞受賞、『ヒューゴの不思議な発明』でノミネート。他に、『エニイ・ギブン・サンデー』『ラストサムライ』『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師』『007スカイフォール』『007スペクター』など。

 劇作家らしく、陰影に富んだダイアローグが持ち味。第2稿を担当した『グラディエーター』では、完成稿に残っている名ゼリフのほとんどが彼によるものとの事です。『エイリアン:コヴェナント』も、アンドロイド2体による思索的なやり取りなどは、恐らく彼のテイストではないでしょうか。

ウィリアム・モナハン

 『キングダム・オブ・ヘブン』『ワールド・オブ・ライズ』

 マサチューセッツ大学を卒業後、ニューヨークでジャーナリスト、エッセイスト、批評家として活躍。『Spy』誌の編集者を務めた後、97年に短編小説でプッシュカート賞を受賞。00年、初の長編小説『Light House:A Trifle』が高く評価され、『キングダム・オブ・ヘブン』で脚本家デビュー。『ディパーテッド』でアカデミー賞受賞。十字軍に関する資料を洗いざらい調べ尽くすなど、徹底した取材力には定評があります。

スティーヴン・ザイリアン

 『ハンニバル』『アメリカン・ギャングスター』『エクソダス:神と王』

 53年、カリフォルニア出身。『シンドラーのリスト』でアカデミー賞受賞、『レナードの朝』『ギャング・オブ・ニューヨーク』でノミネート。他に、『コードネームはファルコン』『みんな愛してる』『今そこにある危機』『ミッション:インポッシブル』『ザ・インタープリター』『マネーボール』『ドラゴン・タトゥーの女』など。監督としても『ボビー・フィッシャーを探して』『シビル・アクション』『オール・ザ・キングスメン』と、評価が高い人です。

 インタビューによれば監督業に進出したのは、「脚本がズタズタに切られ、作品から閉め出された経験があまりにも辛かったから。しかしトップクラスの監督達は、共同作業者としても素晴らしい。ライターに敬意を抱き、そばにいて欲しいという態度を取ってくれる。マーティン・スコセッシ、スティーヴン・スピルバーグ、リドリー・スコットらはそうした監督だ。リドリーの場合は、俳優が違うことにトライしたければそれをやらせるし、その上で脚本に書かれている事もしっかりカバーしておいてくれる」

《撮影監督》

エイドリアン・ビドル

 『デュエリスト/決闘者』『エイリアン』(フォーカス係)、『テルマ&ルイーズ』『1492 コロンブス』

 CM業界では有名な英国の撮影監督。52年ロンドン生まれ、スコット作品のカチンコ係としてキャリアをスタートさせ、スコット兄弟やヒュー・ハドソンなどCM監督の下で修行する。映画の撮影監督としてはスコットと2作品でしか組んでいないのが残念ですが、ジェームズ・キャメロン監督『エイリアン2』で撮影監督デビューしているのも、スコットとの因縁を感じさせます。『テルマ&ルイーズ』でアカデミー賞ノミネート。

 スコット作品の撮影監督の中でも図抜けて才能に恵まれた人で、その映像美から『ウィロー』『プリンセス・ブライド・ストーリー』『101』シリーズなどファンタジー映画が多いですが、残念ながら働き盛りの53歳で他界。他に、『彼女がステキな理由』『ハムナプトラ』シリーズ、『シティ・スリッカーズ2/黄金伝説を追え』『ジャッジ・ドレッド』『イベント・ホライゾン』『ブッチャー・ボーイ』『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』『シャンハイ・ナイト』『サラマンダー』『ブリジット・ジョーンズ/きれそうなわたしの12ヶ月』『Vフォー・ヴェンデッタ』『アメリカン・ホーンティング』など。

ヒュー・ジョンソン

 『デュエリスト/決闘者』(ローダー)、『エイリアン』(撮影助手、ノン・クレジット)、『1492 コロンブス』(セカンド・ユニット監督)、『キングダム・オブ・ヘブン』(セカンド・ユニット監督、撮影監督)、『白い嵐』『G.I.ジェーン』

 アイルランド生まれ。大学の休暇でロンドンを訪れた際に『エイリアン』の撮影監督デレク・ヴァンリントと出会い、彼のスタジオでキャリアをスタート。そこでスコット兄弟と出会う。以来CMで彼らと組み、3年後にフリーとなった後も親交を深める。トニーの『ハンガー』にも撮影助手として参加。他に、『リディック』『エラゴン/遺志を継ぐ者』『JIGSAW/デビルス・ゲーム』など。『チルファクター』では監督業にも進出。

スティーヴン・ポスター

 『ブレードランナー』(追加撮影)、『誰かに見られてる』

 後に『トレイン・スポッティング』などダニー・ボイル作品を撮影するブライアン・トゥファーノと共に、『ブレードランナー』の追加撮影を担当した人。そのままの絢爛たる映像美を『誰かに見られてる』に持ち込んだ手腕は並大抵ではありません。キャリア初期には、『未知との遭遇』の追加撮影も担当しており、後年にはパトリス・ルコント監督の『ハーフ・ア・チャンス』も手掛けています。その後も『アンブレイカブル』等の追加撮影を担当。

 他に、『ゾンゲリア』『スプリング・ブレイク』『ブルー・シティ/非情の街』『ミリイ/少年は空を飛んだ』『ピーウィー・ハーマンの空飛ぶサーカス』『ロッキー5/最後のドラマ』『メル・ブルックス/逆転人生』『微笑みがえし』『ドニー・ダーコ』『キャッツ&ドッグス/地球最大の肉球戦争』など。

ジョン・マシソン

 『グラディエーター』『ハンニバル』『マッチスティック・メン』『キングダム・オブ・ヘブン』『ロビン・フッド』

 スコットランド生まれ。デレク・ジャーマン監督作品でフィルム装填係としてキャリアをスタートし、その後ガブリエル・ベリスタインの助手を担当。ミュージック・ヴィデオの製作に携わるようになり、7年間で350本ものMVとTVスポットを撮るが、その中にはBMW/X5のCMや、マドンナによる“アメリカン・パイ”のリメイクもある。

 スコット・フリー製作のTVシリーズ『ザ・ハンガー』に参加し、スコットの長男ジェイクの監督デビュー作『ブランケット&マクレーン』を手がけたのがきっかけで、『グラディエーター』に抜擢。『オペラ座の怪人』『グラディエーター』でオスカーにノミネート。他には、『ピガール』『ツイン・タウン』『ヴィゴ』『光の旅人/K-PAX』『奇跡のシンフォニー』『バーク アンド ヘア』など。

アレクサンダー・ウィット

 『ブラック・レイン』『テルマ&ルイーズ』(オペレーター)、『グラディエーター』『ハンニバル』『ロビン・フッド』(セカンド・ユニット監督、撮影監督)、『ブラックホーク・ダウン』『アメリカン・ギャングスター』(セカンド・ユニット監督)、『ワールド・オブ・ライズ』

 チリ、サンティアゴ出身。73年にヨーロッパへ渡り、名匠スヴェン・ニクヴィストをはじめ著名な撮影監督の下で助手として仕事を始める。84年にロスへ移住。『スピード』でセカンド・ユニットの監督と撮影を務める。04年には、『バイオハザード2/アポカリプス』で監督デビュー。

ダリウス・ウォルスキー

 『プロメテウス』『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』『エイリアン:コヴェナント』『ゲティ家の身代金』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 ポーランド、ワルシャワ生まれ。ウッジ映画大学で学び、79年に渡米。ドキュメンタリー、インディーズ映画、ミュージック・ヴィデオ、CMの撮影を手掛ける。

 90年代以降は映画で活躍し、初期作ではリドリーの弟トニーの『クリムゾン・タイド』『ザ・ファン』も担当。他に同郷のゴア・ヴァービンスキー監督作『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『ザ・メキシカン』、ティム・バートン監督『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師』『アリス・イン・ワンダーランド』、『蜘蛛女』『ダイヤルM』『クロウ/飛翔伝説』『9デイズ』『ダーク・シティ』『イーグル・アイ』『ラム・ダイアリー』『ザ・ウォーク』など。

《プロダクション・デザイナー》

ピーター・J・ハンプトン

 『デュエリスト/決闘者』『白い嵐』

 低予算映画だった『デュエリスト/決闘者』を、キューブリックの『バリー・リンドン』に負けない美術のクオリティに仕上げた才人。ノン・クレジットですが、『ブレードランナー』でも追加シーンのデザイナーを務めているそうです。他に、『ディーラーズ』『ノストラダムス』『シャンハイ・ヌーン』など。

ノリス・スペンサー

 『ブラック・レイン』『テルマ&ルイーズ』『1492 コロンブス』『ハンニバル』

 ロンドンの王立芸術院で家具デザインを専攻。CM業界でトニー・スコットと知り合い、RSAに誘われてリドリーと組む事になる。82年にリンゼイ・アンダーソン監督の『ブリタニア・ホスピタル』で映画デビュー。ジェイク・スコットの『ブラケット&マクレーン』、トニー・スコットの『スパイ・ゲーム』も手掛ける。

レスリー・トムキンズ

 『1492コロンブス』(美術総監督)、『白い嵐』

アーサー・マックス

 『G.I.ジェーン』『グラディエーター』『ブラックホーク・ダウン』『キングダム・オブ・ヘブン』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』『プロメテウス』『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』『ゲティ家の身代金』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 ニューヨーク州出身。70年代初期までピンク・フロイドやT-REX、ジェネシスなどコンサートの照明デザイナーとして活躍し、伝説的な69年のウッドストック・フェスティバルやビル・グラハムの有名なフィルモア・イーストのプロジェクト、フランスのバレエや英国の舞台美術なども手掛ける。その後、ロンドン大学と王立芸術大学で建築学を専攻。

 80年代中頃から映画美術の世界に参入。スチュアート・クレイグなど現役プロダクション・デザイナーの下で『キャル』『グレイストーク/類人猿の王者ターザンの伝説』などのアシスタントを務め、美術監督として『マリリンとアインシュタイン』『レボリューション/めぐり逢い』を手掛ける。85年から95年にかけてCMに関わり、デヴィッド・フィンチャーやスコットと出会う。『セブン』でプロダクション・デザイナーとしてデビュー。他に『パニック・ルーム』など。『グラディエーター』『アメリカン・ギャングスター』『オデッセイ』でアカデミー賞にノミネート。

ソーニャ・クラウス

 『グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』『悪の法則』(以上、セット・デコレイター)、『プロヴァンスの贈りもの』

 ロスアンジェルス生まれ、イギリス育ち。ロンドンの演劇界でキャリアをスタートし、TVやCMに活躍の場を広げる。その業績が認められ、セット・デコレイターとして『トゥームレイダー』シリーズなどに参加。プロダクション・デザイナーとしては他に、マチュー・カソヴィッツ監督の『バビロン A.D.』。

 彼女のセンスを全面に生かしたかったのか、『プロヴァンスの贈りもの』ではプロダクション・デザインを任されていますが、後のスコット作品ではセット装飾に戻っています。スコットについて曰く、「リドリーはアイデアに溢れた人で、会うとお決まりの会話が始まる。『これは考え付かなかっただろ』『考えてたわ』『嘘だね』。彼には出来るだけ多くの物を見せて意見を求める。セットに関係あるものなら、動物だって見せる。選択肢は多い方がいいし、新たな試みも必要よ」

クリス・シーガース

 『エイリアン:コヴェナント』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』

 トニー・スコット作品を多数手掛けてきた人で、美術監督時代の仕事には『プライベート・ライアン』もあり。

《美術監督》

レス(レスリー)・ディレイ

 『エイリアン』『レジェンド/光と闇の伝説』

 『スター・ウォーズ』の美術でアカデミー賞を取った人で、『エイリアン』でもオスカー受賞。スコット・フリーの『ゆかいな天使/トラブるモンキー』、『スーパーマン』『007/ネバーセイ・ネバーアゲイン』『レイダース/失われたアーク』にも参加していますが、後にプロダクション・デザイナーへ転身。『スペースインベーダー』『アビス』『キャスパー』『ディープ・インパクト』『ディアボロス/悪魔の扉』など、多数手掛けています。

《衣装デザイナー》

チャールズ・ノード

 『ブレードランナー』『レジェンド/光と闇の伝説』『1492 コロンブス』

 英国ロイヤル・オペラやニューヨークのメトロポリタン歌劇場など、舞台でも活躍するアーティスト。BBC放送の『戦争と平和』でエミー賞にノミネート。他に、『ジャバーウォッキー』『007/ネバーセイ・ネバーアゲイン』『ブレイブハート』など。

マイケル・カプラン

 『ブレードランナー』『マッチスティック・メン』

 フィラデルフィア生まれ、フィラデルフィア美術大学で彫刻と素描を学んだ後、エンターテインメント業界に入る。彼が作り出す、流行を左右するデザインと感情に訴える歴史的再現は、大衆のファッション意識に影響を与える事も多いと言われます。

 主な仕事に、『フラッシュダンス』『カリブの熱い夜』『冷たい月を抱く女』『今ひとたび』『ビッグ・ビジネス』『ロング・キス・グッドナイト』『アルマゲドン』『パールハーバー』『アイ・アム・レジェンド』『スター・トレック』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『バーレスク』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』『ゲーム』『ファイト・クラブ』『パニック・ルーム』など。

ジャンティ・イェーツ

 『グラディエーター』『ハンニバル』『キングダム・オブ・ヘブン』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』『プロメテウス』『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』『エイリアン:コヴェナント』『ゲティ家の身代金』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 ファッション業界でキャリアをスタートさせ、助手として参加した『人類創世』で映画の世界に入る。『グラディエーター』でアカデミー賞受賞。他に、マイケル・ウィンターボトム監督の『日陰のふたり』『ウェルカム・トゥ・サラエボ』『いつまでも二人で』『ウィズアウト・ユー』や、『ウェールズの山』『ブランケット&マクレーン』『五線譜のラブレター/DE-LOVELY』『シャーロット・グレイ』『スターリングラード』『マイアミ・バイス』など。

《編集》

テリー・ローリングス

 『デュエリスト/決闘者』(ダビング編集)、『エイリアン』『ブレードランナー』『レジェンド/光と闇の伝説』

 初期のスコット作品を編集して作り上げた人ですから、『エイリアン』『ブレードランナー』でスコットのファンになった人にはとても重要な人物だと言えます。作曲家に見せる仮編集フィルムに、膨大なレコード・コレクションから既成音楽を付けるスタイルで知られ、スコットとは因縁の関係となった作曲家ジェリー・ゴールドスミスは、はっきりとローリングスを真犯人だと指摘しています。

 他に、『センチネル』『ウォーターシップダウンのうさぎたち』『ピラミッド』『炎のランナー』『愛のイエントル』『F/X 引き裂かれたトリック』『エイリアン3』『007/ゴールデンアイ』『セイント』『追跡者』『ヤング・ブラッド』『ザ・コア』『オペラ座の怪人』など。

クレア・シンプソン

 『誰かに見られてる』『ゲティ家の身代金』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 スコットは『誰かに見られてる』の編集担当を探している時、『プラトーン』を観て彼女を発見しますが、その下でアシスタントをしていたのが、後に多くの作品で組む事になるピエトロ・スカリアでした。スコットは又、この映画を観て主演にトム・ベレンジャーを起用しています。

 オリヴァー・ストーンや、スティーヴン・ダルドリー監督と組んできたベテランで、他に『ウォール街』『フォルテ』『抱擁』『NINE』『愛を読む人』『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『誰よりも狙われた男』など、話題作多し。スコットとは『ゲティ家の身代金』で30年振りに組みました。『プラトーン』でアカデミー賞、『ナイロビの蜂』で英国アカデミー賞受賞。

ピエトロ・スカリア

 『G.I.ジェーン』『グラディエーター』『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』『プロメテウス』『悪の法則』『オデッセイ』『エイリアン:コヴェナント』

 イタリア、シチリア生まれ、スイス育ち。10代でアメリカに渡り、85年にUCLA大学で映画、演劇芸術の修士号を取得。オリヴァー・ストーン監督の『ウォール街』『トーク・レディオ』『7月4日に生まれて』でアシスタントとして映画界でのキャリアをスタート。『JFK』『ブラックホーク・ダウン』でアカデミー賞を受賞。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『グラディエーター』でもノミネート。

 ガス・ヴァン・サント監督との『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』、『プロミスト・ランド』(特別協力)、『追憶の森』、ベルナルト・ベルトルッチ監督との『リトル・ブッダ』『魅せられて』、サム・ライミ監督『クイック・アンド・デッド』、マーク・ウエブ監督『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ、『SAYURI』『キック・アス』『ハンニバル・ライジング』など、幅広い作風を誇る人。

ドディ・ドーン

 『マッチスティック・メン』『キングダム・オブ・ヘブン』『プロヴァンスの贈りもの』

 カリフォルニア生まれ。ハリウッド・ハイスクール卒業後の78年、ジョン・カーペンターのTV伝記映画『エルヴィス』でプロダクション・アシスタントとして映画界入り。音響編集でローレンス・カスダン監督『再会の時』『シルバラード』、『愛は静けさの中で』『燃えつきるまで』『月を追いかけて』などに関わり、アラン・ルドルフ監督と出会って『モダーンズ』『チューズ・ミー』『トラブル・イン・マインド』『メイド・イン・ヘブン』等を手掛ける。86年に音響会社ソニック・キッチンを設立。90年に『アビス』でゴールデン・リール賞最優秀サウンド賞を受賞。

 編集者に転じてからは、『メメント』でアカデミー賞にノミネート、同年にTVミニ・シリーズ『ライフ・ウィズ・ジュディ・ガーランド:ミー・アンド・マイ・シャドウズ』でエミー賞とA.C.E.エディー賞にノミネート。他に、『インソムニア』『写真家の女たち』『シック』『クレージー・ナッツ/早く起きてよ』『ザッピング/殺意』『ゴドーを待ちながら』『オーストラリア』『容疑者、ホアキン・フェニックス』など、劇映画、TV、ドキュメンタリーを問わず実験的でユニークな企画が多い人。

《音楽》

ジェリー・ゴールドスミス

 『エイリアン』『レジェンド/光と闇の伝説』

 ロスアンジェルス生まれ、南カリフォルニア大学音楽部でミクロス・ローザに作曲を学び、卒業後はCBSに入社。『ナポレオン・ソロ』などTV作品を多く手掛けた後、57年に映画へ進出。『オーメン』でアカデミー賞受賞、『パピヨン』『砲艦サンパブロ』『猿の惑星』『パットン大戦車軍団』『風とライオン』などで何度もノミネートを受ける。『チャイナタウン』『ランボー』『トワイライト・ゾーン』『ポルターガイスト』など作風は幅広く、『グレムリン』のジョー・ダンテ監督とは長らくコラボを続けました。

 映画音楽界の重鎮にして超売れっ子ですが、スコットを「許さない」と言い続けた因縁の人でもあります。テンポラリー・ミュージック(テンプ・トラック。作曲家に見せる仮編集フィルムに付けた参考用音楽)として既成曲を付けるスコットのやり方は、作曲家にしばしば不快な思いをさせ、衝突も生みました。(ゴールドスミスは、山のようなレコードを抱えて参考音楽を付ける編集者テリー・ローリングスが犯人だと指摘)

 『エイリアン』のテンプ・トラックには、彼の旧作『フロイド/隠された欲望』が付いていました。「どうだい、なかなか合っているだろう?」と言うスコットに、ゴールドスミスは「いや、ひどいね」と答えます。それでも彼は監督のイメージに沿って無調風の音楽を作曲し、再編集の際も改変に協力しますが、完成作ではその音楽が無惨に切り貼りされた挙げ句、テンプ・トラックについていた旧作の音楽もそのまま残されました。さらにエンディング・テーマはボツにされ、ハワード・ハンソンの交響曲第2番に差し替えられる始末。

 なので『レジェンド/光と闇の伝説』で再度オファーされた時は、スタジオ側のキャスティングとはいえ、ゴールドスミスも驚いたそうです。しかし「『エイリアン』は最もみじめな経験の一つだった」と告げた彼に、スコットは「何がいけなかったんだ?」と返答。ゴールドスミスは、「リドリー、君は意志の伝達ができない人間なんだ」と滔々と諭します。

 またもローリングスが編集した『レジェンド』のテンプ・トラックには、ゴールドスミスの『サイコ2』の音楽があちこちに付いていましたが、彼は6か月かけて80分以上もの音楽を作曲。ところが、2時間20分あった映画は1時間半に短縮され、試写会の失敗の後、彼の音楽はタンジェリン・ドリームのニューエイジ・シンセ・ロックに丸々差し替えられました。

 その経緯は本文に書きましたが、スコットもさすがに後悔しています。「ジェリーは正に希望にかなった音楽を作曲してくれたのに、何ともやり切れない気持ちだった。ドリームの連中はよくやってくれたが、彼らの曲はジェリーの作品ほど格調高かっただろうか。いや、実に悲しく惨めな結果になった。状況を聞いたジェリーは狼狽し、以来私達は話をしていない。『エイリアン』で揉めた挙げ句にこんな事になってしまった以上、ジェリーはもう二度と私の映画に音楽を作ってくれないかもしれない」

 こうしてスコットは、ベルギーの雑誌『SOUNDTRACK!』の取材でゴールドスミスに「許してほしい」と謝罪しますが、作曲家は「ロサンジェルス・リーダー」誌に「その記事は読んだよ。許さない。なぜ許さなきゃならないんだ」と語り、自分のコンサートでは必ず、『エイリアン』のボツにされたエンディング曲を演奏しました。当時のスコットが『ブレードランナー』の失敗を引きずっておらず、さらにもっとコミュニケーションの上手な監督であれば、こんなトラブルにはならなかったかもしれませんね。

 ちなみにその『エイリアン』ですが、スコットは当初『デュエリスト/決闘者』のハワード・ブレイクに作曲を依頼しており、ブレイクはセットに何度となく足を運んだといいます。結果の良さからして、スコットの耳の確かさを讃えるべきなのでしょうが、最初から一発で適任者を選ぶ才能に欠けているとも言える訳で・・・。

ヴァンゲリス

 『ブレードランナー』『1492 コロンブス』

 43年、ギリシャ生まれの孤高のミュージシャンで、本名はエヴァンゲロス・O・パパナサチュー。68年、パリでアフロディティス・チャイルドというグループを結成、デビュー・アルバムがヨーロッパで大ヒット。ソロ・デビュー後、シンセサイザーを駆使して『チャイナ』『天国と地獄』など数々のアルバムを発表。映画『炎のランナー』の音楽は世界中でヒットし、オスカーを受賞。

 80年のアルバム『流氷源』の1曲“Memories of green”は、『ブレードランナー』と『誰かに見られてる』の両方(後者はオーケストラ・ヴァージョン)で使われました。映画音楽は他に、『ミッシング』『赤い航路』『フランチェスコ』など。日本では『南極物語』が有名。

ハンス・ジマー

 『白い嵐』(追加音楽)、『ジョナサン』(音楽製作)、『ブラック・レイン』『テルマ&ルイーズ』『グラディエーター』『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』『マッチスティック・メン』

 超売れっ子作曲家にして、ドリームワークスの映画音楽部門統括責任者。57年、ドイツのフランクフルト生まれ。英国でトレヴァー・ホーンのユニット、バグルズのメンバーとしてポップ・ミュージックの世界からキャリアをスタートさせたという、ユニークな経歴の持ち主です。82年、スタンリー・マイヤーズと『Moonlighting』を手掛けて映画の世界に入り、以後はシンセサイザーとオーケストラを巧みにミックスさせた独特のサウンドで一大ブームを牽引。

 アニメ『ライオン・キング』でアカデミー賞受賞、ノミネートは『レインマン』『恋愛小説家』『シン・レッド・ライン』『天使の贈り物』『プリンス・オブ・エジプト』『グラディエーター』と何度にも渡ります。他に、『ドライビング・ミス・デイジー』『M:I2』『バックドラフト』『心の旅』『パシフィック・ハイツ』『グリーンカード』『ザ・ロック』『パール・ハーバー』『トイズ』『プリティ・リーグ』『ピース・メーカー』『トゥルー・ロマンス』『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『ダヴィンチ・コード』シリーズなど、代表作も数え切れないほど。

 本人は謙虚な人で、「よく言うんだが、オスカー像と一緒に賞品として、次に書く曲の最初の4小節が欲しい。それほど苦しい。毎度自信喪失し、もう曲が書けない気がして、今すぐ映画会社に電話しなくてはと思うんだ。僕は無理だ、他の作曲家を探してくれ、とね」。スコットについては、「リドリーは私がどんな揉め事に直面しても、監督が取るべき態度を貫いてくれる。常に味方になってくれるんだ。私が9割方失敗しても、全力でやった結果だと知っている」

 しかしそういうスコットとも、『マッチスティック・メン』の音楽をめぐっては、メイキング・ドキュメンタリーに見られるように製作陣と見解の相違があり、これ以後はもう組んでいません。スコットは、「ハンスにはタブーがなくていい。何でも話し合える。彼も私の映画に対して遠慮なく批判するし、私もお前の音楽はイヤだと言い返す。そういう関係が成長を促すんだ」と言うのですが・・・

ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

 『プロメテウス』(追加音楽)、『キングダム・オブ・ヘブン』『オデッセイ』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』

 幼少の頃から音楽に類い稀な才能を見せ、ロンドンの名門ギルドホール音楽演劇学校に入学。その後エジプト、ケニヤで音楽プログラムに関わった後、ロンドンでスタンリー・マイヤーズに師事し、映画音楽を学ぶ。そこでハンス・ジマーと知り合い、『ライオン・キング』『クリムゾン・タイド』にも関わる。ニコラス・ローグ監督『Full Body Massage』『Hotel Paradise』で本格的なスコアを作曲し、95年ハリウッドに進出。

 スコット曰く、「ハリーは伝統ある聖歌隊の出身で、10歳になる前に音楽の寄宿学校に入り、11歳であらゆる楽譜を読みこなした」。他に、『陰謀のシナリオ』『リプレイスメント・キラー』『エネミー・オブ・アメリカ』『シュレック』シリーズ、『チキンラン』『マダガスカル』『ナルニア国物語』シリーズ、『スパイゲーム』『フォーンブース』『マイ・ボディガード』『ブリジット・ジョーンズの日記/きれそうなわたしの12ヶ月』など、目覚ましい活躍ぶり。

 レコーディングはロンドンを拠点にしているようで、本人曰く、「アビーロードでは30〜40本作ったから、ヴィオラ奏者の名前まで言えるし、誰が出産したかも知っている。みんなロンドン交響楽団などに所属している優秀なミュージシャンなんだ。映画音楽は制約が多く、身動きが取れない事もあるが、リドリーはちゃんと実力を発揮する場を用意してくれる」

マルク・ストライテンフェルト

 『グラディエーター』(テクニカル・スコア・アドヴァイザー)、『ハンニバル』『ブラックホーク・ダウン』『マッチスティック・メン』(以上、音楽編集)、『マッチスティック・メン』『キングダム・オブ・ヘブン』(以上、音楽監修)、『プロヴァンスの贈りもの』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』『ロビン・フッド』『プロメテウス』『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』

 ドイツ、ミュンヘン生まれ。19歳で渡米し、ロスでハンス・ジマーのアシスタントとしてキャリアをスタート。01年にフリーのスーパーヴァイザーとして独立し、『プロヴァンスの贈りもの』で初めて単独のクレジットを獲得する。他に、『クリステン・スチュワート/ロストガール』など。

ダニエル・ペンバートン

 『悪の法則』『ゲティ家の身代金』

 78年、イギリス生まれ。わずか16歳で、前衛的な電子音楽アルバムをリリースしてデビュー。数多くのTV作品やゲーム音楽を手掛ける他、ヴィヴアン・ウェストウッドやアーデム、ボウディッカ、エレイ・キシモトなどといったデザイナー達のファッション・ショーで、音楽演出も担当している才人。映画では他に、『アウェイクニング』『ランズエンド/闇の孤島』『スティーブ・ジョブズ』など。

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