マッドマックス2

Mad Max 2

1982年、オーストラリア (96分)

 監督:ジョージ・ミラー

 製作:バイロン・ケネディ

 脚本:テリー・ヘイズ、ジョージ・ミラー、ブライアン・ハナント

 撮影監督:ディーン・セムラー, A.C.S.

 美術監督:グラハム“グレイス”ウォーカー

 衣装デザイナー:ノーマ・モリソー

 編集:デヴィッド・スティヴン、ティム・ウェルバーン

    マイケル・チルグウィン

 音楽:ブライアン・メイ

 美術監督助手:スティーヴ・アメズドロス

 追加編集:ジョージ・ミラー、クリストファー・プロウライト

 スタント・チーム、モーターサイクル・メカニック:ガイ・ノリス

 ドキュメンタリー撮影:アンドリュー・レスニー

 プロダクション・アカウンタント:キャサリン・バーバー

 出演:メル・ギブソン  ヴァーノン・ウェルズ

    ブルース・スペンス  エミール・ミンティ

    ヴァージニア・ヘイ  マイク・プレストン

    マックス・フィップス  ケル・ニルソン

* ストーリー

 前作から数年後、石油危機を迎え荒廃した世界。凶悪な暴走族と戦いながら荒野の中で生活を続ける一団に、マックスは用心棒として協力する。

* コメント

 大ヒットした前作から3年後を舞台に、ヴァイオレンス・アクションのファンの間でカルト的な人気を誇る続編。第1作と同様、シネスコ・サイズで撮影されています。主人公はずっと寡黙になり、セリフが大幅に減った一方、神話の英雄のような雰囲気が加味されました。それはラストシーンに顕著です。

 モノクロのニュース・フィルム風のオープニングは、後の『ハッピー・フィート』も想起させますが、その中に第1作のダイジェストも挿入。開巻早々のカー・アクションは、セリフなしで世界観を提示するサイレント映画風の表現が圧巻。高台からコミュニティの観察を続ける場面もほぼセリフなしで、何か状況に動きがあると音楽とキャメラで表現されます。サイレント映画としても通用するほどの描写力。

 ただ、ヴァイオレンス映画の割には緊迫した雰囲気がなく、むしろコメディに見えるシーンも多くて、全体に陽気です。B級ホラー映画風の安っぽいこけ脅しもあり。捕虜の処刑シーンなどは異様なセンスでコラージュされていて、音楽もシュール。日本の古い特撮ドラマみたいな、妙に時代がかったタッチも随所に感じられます。要塞を死守するというシンプルなプロット、構図や編集のタッチには、ミラーが影響を受けているという黒澤映画の雰囲気もあり。

 パワー・アップしたアクションは凄絶で、またスタントマンの負傷者を複数名出していますが、ヴォリュームの面では巷に言われるほどアクション・シーンばかりという印象は受けません。むしろ、延々と監視を続ける所や、夜に要塞を抜け出すくだりなど、スタティックな場面も多い感じ。本作でも、アクションの動きが不自然に軽くなってカクカクするショットがあり、早回しは使っているようです。

 本作にもキャラクターに様々なバックストーリーがあったと、俳優達が語っています。ウェズを演じたヴァーノン・ウェルズは、彼が連れている金髪の青年に関して「よく勘違いされるが、あれは両親を殺されて一人でいた少年を、ウェズが助けて養子みたいにしているんだ」との事。ちなみにヒューマンガスはウェズに「愛人を失ったんだ」と同情しているので、ボスは同性愛と解釈しているようです。

 ウェルズはミラーの演出について、「カーアクションに関しては口うるさいくらい細かく指示を出していたが、本当に注意深くて、絶対に誰も怪我させないように気を付けていた。それは彼が医者だからというのもあるけれど、ジョージの頭の中には場面が完璧にプランされてるんだ。予定より少しでも早く車が通り過ぎただけで、最初から撮り直していた。それに、ハプニングが起きても修正の決定や反応がとにかく速い」と絶賛しています。

 尚、本作ではワーナーの日本支社が現地取材を敢行し、日本テレビが『カースタントに賭ける男たち! V8エンジン爆走! マッドマックス2初公開』という番組を放映しましたが、これは海外のマッドマックス・ファンを騒然とさせ、「死ぬまでに絶対観たい」幻のレア映像として知られているそうです。

* スタッフ

 製作は1作目と同様バイロン・ケネディ。共同脚本は、前作のノベライズを担当したテリー・ヘイズ。彼は3作目にも関わっている他、ミラー製作の『君といた丘』『デッド・カーム/戦慄の航海』『ニコール・キッドマンの恋愛天国』などに脚本家、プロデューサーとして参加。ミラー作品以外では、『ペイバック』『バーティカル・リミット』『フロム・ヘル』の脚本も執筆しています。

 撮影監督は、次作にも参加しているディーン・セムラー。ダイナミックな映像表現はハリウッドでも評価され、渡米して『ウォーター・ワールド』『ラスト・アクション・ヒーロー』など大作を手掛けて売れっ子となりました。メル・ギブソンの監督作『アポカリプト』も担当しています。

 プロダクション・デザイナーのポストは置いていませんが、美術監督として次作にも参加しているグラハム“グレイス”ウォーカーを起用。要塞のセットや武装マシンの数々に、マニア心をくすぐるデザイン・センスを発揮しています。

 衣装のノーマ・モリソーは70年代後半をロンドンで過ごし、写真家としてマルコム・マクラーレンやヴィヴィアン・ウェストウッドを撮ったという人。SMショップやスポーツ用品店まで回り、軍の払い下げ品、古着やジャンクパーツを組み合わせて、近未来のファッションを作り上げました。

* キャスト

 この時期のメル・ギブソンは、まだハリウッド映画には出ていませんでした。しかしオーストラリアでは舞台で高い評価を得て、映画でも幾つかの賞を取るという、若さに似合わない実力を発揮。この第2作がアメリカでも成功した事で、知名度を上げる事になりました。

 本作の悪玉は仮面を被ったヒューマンガス(演じるのはスウェーデン出身のボディビルダー、ケル・ニルソン)ですが、実際に活躍している悪役はモヒカン頭、ティラノサウルス顔のウェズでしょう。演じるヴァーノン・ウェルズは、当時テレビと舞台で8年のキャリアがあったそうです。ちなみにジョン・ヒューズ監督の『ときめきサイエンス』には、彼がウェズの格好で乱入してくるパロディ場面あり。

 フェラル・キッドを演じたエミール・ミンティは、今は家族経営のジュエリー・ショップを継いだ一般人。当時はCMに出ていた子役でしたが、ミラーはオーディションで、なんとこの子にも「フェラル・キッドにどういう背景があるのか考えてみて」と課題を出したそうです。ムック本『マッドマックス・ムービーズ』(洋泉社)には、彼とヴァーノン・ウェルズのインタビュー記事あり。

 女戦士役のヴァージニア・ヘイは、雑誌のカバーガールとしてオーストラリアでは有名なモデル。映画出演の依頼も多かったそうですが、内容のある役を演じたいという事で全て断っていたそうです。この女戦士も内容はそんなにないと思うのですが、本人によれば「冷酷無比な役が今まで待ち望んでいたものにぴったろだった」との事。

磷付にされる捕虜の一人を演じています。マックスの革ジャンを切り裂くベアクロー・モホークを演じるのは、スタントマンのガイ・ノリス。後のミラー作品にも関わっています。

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