往年の人気テレビ番組『トワイライトゾーン』を映画でリメイクしようという、スピルバーグらしい企画。『アニマル・ハウス』『ブルース・ブラザーズ』の監督ジョン・ランディスとプロデューサーを兼任し、スピルバーグ、ランディス共に1話ずつ監督、『グレムリン』のジョー・ダンテとミラーも参加して、大変ユニークなオムニバス映画となった。 結果から言えば、過剰なほど人工的な演出でセンチメンタルなスピルバーグ篇は大きくバランスを崩した格好で、暗いアイロニーが支配するランディス篇、徹底的に個性を発揮したダンテ篇と、職人的に腕を振るったミラー篇が圧勝という印象。 これには、ランディス篇の撮影中に起った事故の影響がある。主演のヴィック・モローと2人のアジア人子役の上にヘリコプターが墜落し、3人が無惨な死を遂げた。製作者でもあったスピルバーグとフランク・マーシャルは責任を問われ、出頭を求められたが、外国へのロケハンなどを理由に追跡の手を交わし続け、2人とも最後まで法廷に立つ事はなかった。 スピルバーグの態度は批判され、業界で大いに嫌われる事にもなり、仲間だったジョン・ランディスとスピルバーグの関係にも亀裂が入る。イメージ・ダウンを恐れたスピルバーグは即座に本作から手を引こうとしたものの、ワーナー・ブラザーズが契約の履行を求めたため、彼はできるだけ恐怖を感じさせない、ハートウォーミングなエピソードを監督する事に急遽変更したという。 ミラーはクライマックスとなる第4話を監督。本来であればスピルバーグが得意としたような、サスペンス・スリラーに超自然的要素を足した挿話で、4話中で最もバランスの良い仕上がり。飛行機の中だけで展開する密室劇は、神経症的にデフォルメされた主人公の恐怖と、あくまで平静な他の乗客や乗務員との対比がサスペンスを増幅し、ミラー作品には珍しいヒッチコック的なタッチもある。 とはいえ、かなりハードなスリラーのはずなのに、ジョン・リスゴーによるウディ・アレンばりの過剰演技のおかdげで、ほとんどドタバタ・コメディになっている辺りは、やはりミラーらしい。ポラロイド・カメラや腹話術人形など小道具を駆使する少女、仏頂面の太った男、愛想はいいがいい加減な老夫人など、周囲の乗客を怪物的に描きながら、CAや副機長ら関係者を日常的なノーマル・タッチで対比させているのもユニーク。 たった22分の尺ながら、概してこういう「対比の手法」が激烈な効果を生んでいて、特に緩急の振幅は全く見事。主人公が錯乱する箇所は、そこが最後の山場かと思うほど画面全体が激昂するのに、その合間の会話場面は極端なほど沈静化する。人物の顔のクローズアップを多用しているのも、密室の閉所恐怖感を煽る。ジェリー・ゴールドスミスの、パワフルでインパクトの強い音楽も傑作。 ミラー曰く、「ごく短い時間内に全てのキャラクターを動かして、ストーリーを運ばなくてはならない。だから、一切を極めて濃縮させる事になった。その結果、全ての調子が強められ、重要になってくる。主人公は、何か悪い兆しが現れるのではと伺いながらスチュワーデスの目をじっと見る。彼はただ空を飛んでいるのが恐いだけの、正気の人間なんだ。それはあなたでもあり、私でもありうる」。 |