ラッキーナンバー

Lucky Numbers

2000年、アメリカ (106分)

 監督:ノーラ・エフロン

 製作総指揮:G・マック・ブラウン

 製作:アンドリュー・ラザール、ジョナサン・D・クレイン

    ショーン・ダニエル、ノーラ・エフロン

 共同製作:ドナルド・J・リーJr、ジョディ・ハイデン

      リンダ・ファヴォリア、アンソン・ダウンズ

 脚本:アダム・レズニック

 撮影監督:ジョン・リンドレー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:ダン・デイヴィス

 衣装デザイナー:アルバート・ウォルスキー

 編集:バリー・マルキン

 音楽:ジョージ・フェントン

 セカンド・ユニット、ヘリコプター・ユニット第1助監督

                 :ジョン・ラスク (ハリスバーグ)

 プロダクション・コーディネーター:エリカ・ケイ (ハリスバーグ)

 アルファヴィル・プロダクション・エグゼクティヴ:ティ・ウォーレン

 スクリプト監修:ダイアン・ドライヤー

 ポスト・プロダクション監修:ポール・A・レヴィン

 ポスト・プロダクション助手:アン・グレイ

 音楽コンサルタント:ロザンナ・アークエット

 エフロンの助手:J・J・サシャ

 キャスト:ジョン・トラヴォルタ  リサ・クードロー

      ティム・ロス  エド・オニール

      マイケル・ラパポート  ビル・プルマン

      マイケル・ムーア  リチャード・シフ

      マリア・バムフォード  マイケル・ウェストン

      ダリル・ミッチェル

* ストーリー

 ペンシルバニア州ハリスバーグ。地元テレビの人気お天気キャスターであるラスは、副業の経営が悪化したために大金が必要になる。相談した友人ギグのアドバイスは、ナンバーくじ番組のクリスタルと組み、不正を仕掛けて640万ドルを横領する一獲千金の計画。それで大金を手にできる筈だったが、想定外のトラブルが連続する。

* コメント  *ネタバレ注意!

 エフロンが再びジョン・トラヴォルタと組んだ犯罪コメディ。製作陣にも『マイケル』の面々が揃っています。この内容にしては豪華な俳優を揃えて、製作にも力が入っていますが、エフロン作品で唯一、彼女自身が脚本を執筆していない映画でもあり、エフロン作品らしくないテイストにかなり違和感を覚える1作でもあります。

 実際の事件を下敷きにしているそうですが、計画は安直だし、ストーリー展開もあまりに雑で荒っぽいので、エフロン作品を観ている気がしなくなるのは残念。彼女の脚本にはまず登場しないような殺人、格闘、濃厚なラヴ・シーンもあるし、セリフがとにかく下品です。他の監督に脚本を提供するくらいだから、本作も自分で書けば良かったと思うのですが、インタビューでも彼女はいたくこの脚本を気に入った様子で、自分では書けないワイルドな映画を監督してみたかったのかもしれません。

 犯罪で大金を手に入れながら、想定外のトラブルが続いて結局自分の物にならない展開は、サム・ライミ監督の『シンプル・プラン』を彷彿させますが、そこまでの悲壮さはなく、あっさり人が死んで、あっさり計画が変わり、最後まで罪に問われない人物もいます。全体を見ると、トラブルが起きても常に冷静に次の手を考えているギグが、一番賢く世の中を渡っているようですね。

 実際に舞台のハリスバーグでロケしていて、背景に独特の空気感があるのはエフロン作品らしい所。もちろん俳優の演技を中心にした場面には素晴らしい箇所もあります。例えば、ラスとクリスタル、ギグの3人で計画を練る場面は、エフロンらしい才気煥発なユーモア・センスで構築されていて魅力的。ラスの浅はかさを後の2人が茶化す所など、ダイアローグも演技も絶妙の間合いです。

 キャスティングがとにかく豪華ですが、異色の配役はクリスタルの親戚ウォルターを演じるマイケル・ムーア。『ボウリング・フォー・コロンバイン』で脚光を浴びた、ドキュメンタリーの映画監督です。俳優達の演出に関しては、リハーサルなしで即興をメインにした様子。エフロン曰く、「必要な事を簡潔に伝えたら、あとは自由に演じさせる」

* スタッフ

 製作は『マイケル』のG・マック・ブラウン、ジョナサン・D・クレイン、ドナルド・J・リーJrらにエフロン自身。脚本はティム・バートン製作の下、『キャビン・ボーイ/航海、先に立たず』の脚本・監督を務めたアダム・レズニック。ちなみに彼のもう1作『デス・トゥ・スムーチー』は、ダニー・デヴィートが監督した暗殺物のサスペンス・コメディで日本未公開。

 経歴からしてもどうもこのレズニック、ぱっとしない脚本家という感じですが、エフロンは「脚本が面白かった。トラヴォルタも目を付けていると聞いて、ラスは彼だと思ったが、20ページほど読むとヒロインにも惹き付けられた。脚本を読んでいると、何かに突然心を掴まれる。クリスタルの、『具のフライはどこ?』。今回はあのセリフね」と絶賛しています。

 スタッフは撮影監督のジョン・リンドレー、プロダクション・デザインのダン・デイヴィス、衣装のアルバート・ウォルスキー、音楽のジョージ・フェントンとエフロン組大集結ですが、だからといってエフロン作品らしい雰囲気が出る訳でもないようです。編集も、フランシス・コッポラ作品を多く手掛けるバリー・マルキンと大物が担当。

* キャスト

 主演は『マイケル』で組んだジョン・トラヴォルタ。クリスタル役はTVシリーズ『フレンズ』で人気のリサ・クドロー。エフロン関連作では、『電話で抱きしめて』にも出演しています。エフロンは「配役を決める時は、笑わせてくれる俳優を選ぶ」と言っていますが、トラヴォルタは「リサ・クドローも僕もクリーンな役が多い」と語っているので、いずれもイメージと違う役柄に挑戦した感じです。

 サブ・キャラも豪華で、ラスに悪知恵ばかり吹き込むギグに『海の上のピアニスト』やタランティーノ作品のティム・ロス、上司ディックに『クルージング』『ボーン・コレクター』のエド・オニール、チンピラに『トゥルー・ロマンス』『誘惑のアフロディーテ』のマイケル・ラパポート、やる気の無い警官に『めぐり逢えたら』に続いてビル・プルマン、ラスを脅迫して消されるノミ屋に『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』『マイケル』のリチャード・シフ。

 異色の配役はクリスタルの親戚ウォルターを演じるマイケル・ムーア。この2年後に『ボウリング・フォー・コロンバイン』を発表して注目を浴びたドキュメンタリー監督ですが、ここでは鈍重で超真面目なのに、下ネタや犯罪に全く抵抗を示さない、特異なキャラクターを演じて異彩を放ちます。

 純朴な部下ラリーを演じるマイケル・ウェストン、ウェイトレスのウェンディを演じるマリア・バムフォード、警官チェンバースを演じるダリル・ミッチェルなど、脇役も存在感あり。ゲーム・ショーのアナウンサーを、エフロンの助手で次作の製作も担当しているJ・J・サシャが演じています。

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