エフロンが再びジョン・トラヴォルタと組んだ犯罪コメディ。製作陣にも『マイケル』の面々が揃っています。この内容にしては豪華な俳優を揃えて、製作にも力が入っていますが、エフロン作品で唯一、彼女自身が脚本を執筆していない映画でもあり、エフロン作品らしくないテイストにかなり違和感を覚える1作でもあります。 実際の事件を下敷きにしているそうですが、計画は安直だし、ストーリー展開もあまりに雑で荒っぽいので、エフロン作品を観ている気がしなくなるのは残念。彼女の脚本にはまず登場しないような殺人、格闘、濃厚なラヴ・シーンもあるし、セリフがとにかく下品です。他の監督に脚本を提供するくらいだから、本作も自分で書けば良かったと思うのですが、インタビューでも彼女はいたくこの脚本を気に入った様子で、自分では書けないワイルドな映画を監督してみたかったのかもしれません。 犯罪で大金を手に入れながら、想定外のトラブルが続いて結局自分の物にならない展開は、サム・ライミ監督の『シンプル・プラン』を彷彿させますが、そこまでの悲壮さはなく、あっさり人が死んで、あっさり計画が変わり、最後まで罪に問われない人物もいます。全体を見ると、トラブルが起きても常に冷静に次の手を考えているギグが、一番賢く世の中を渡っているようですね。 実際に舞台のハリスバーグでロケしていて、背景に独特の空気感があるのはエフロン作品らしい所。もちろん俳優の演技を中心にした場面には素晴らしい箇所もあります。例えば、ラスとクリスタル、ギグの3人で計画を練る場面は、エフロンらしい才気煥発なユーモア・センスで構築されていて魅力的。ラスの浅はかさを後の2人が茶化す所など、ダイアローグも演技も絶妙の間合いです。 キャスティングがとにかく豪華ですが、異色の配役はクリスタルの親戚ウォルターを演じるマイケル・ムーア。『ボウリング・フォー・コロンバイン』で脚光を浴びた、ドキュメンタリーの映画監督です。俳優達の演出に関しては、リハーサルなしで即興をメインにした様子。エフロン曰く、「必要な事を簡潔に伝えたら、あとは自由に演じさせる」 |