奥さまは魔女

Bewitched

2005年、アメリカ (103分)

 監督:ノーラ・エフロン

 製作総指揮:ジェームズ・W・スコッチドポール

       スティーヴン・H・バーマン、ボビー・コーエン

 製作:ダグラス・ウィック、ルーシー・フィッシャー

    ペニー・マーシャル、ノーラ・エフロン

 共同製作:ダイアン・ドライヤー、メアリー・パット・ウォルシュ

 脚本:ノーラ・エフロン、デリア・エフロン

 撮影監督:ジョン・リンドレー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:ニール・スピサック

 衣装デザイナー:メアリー・ゾフレス

 編集:ティア・ノーラン

 音楽:ジョージ・フェントン

 スクリプト監修:ダイアン・ドライヤー

 ユニット・プロダクション・マネージャー:デニス・L・スチュワート

 ニューヨーク・プロダクション・スーパーヴァイザー:エリカ・ケイ

 ノーラ・エフロン助手:J・J・サシャ

 キャスト:ニコール・キッドマン  ウィル・フェレル

      シャーリー・マクレーン  マイケル・ケイン

      ジェイソン・シュワルツマン  クリスティン・チェノウェス

      ヘザー・バーンズ  ジム・ターナー

      スティーヴ・カレル  スティーヴン・コルバート

* ストーリー

 魔女のイザベルは、魔法を使わず普通の生活をし、普通の恋がしたいと人間界へ舞い降りる。その頃、最近ヒットから遠ざかっているスター俳優ジャックのもとに、TVドラマ「奥さまは魔女」のリメイク企画が舞い込んでくる。このドラマに復活をかけるジャックは自分を目立たせるため、サマンサ役に新人女優を起用したいと考える。

 イメージ通りの女性が見つからず苦労していたジャックは、ある日街で偶然イザベルを目撃し、イメージにピッタリと彼女を大抜擢。魔女であることを秘密にしたままジャックとの撮影に入ったサマンサだったが‥‥

* コメント

 日本でも放映されて有名だった、人気TVシリーズの映画版。といっても、エフロンが採ったアプローチはオリジナルのリメイクではなく、リメイク映画を作ろうとする映画人たちと本物の魔女の出会いを描く事。普通の人間になりたいと願う主人公イザベラの人物造形は、逆説的に、人間の性質の根底にある「無い物ねだり」の普遍性を描いてもいます。

 脇の人々を生き生きと描き、人と人の関係性で話を繋いでゆくのはエフロンの真骨頂。女性陣が個性的なのに比して、演出家やプロデューサーなど男性陣の存在感が弱いのは少し気になりますが、その分、ウィル・フェレルのコメディ演技が引き立っているという事でしょうか。どんな魔法も愛には適わないというテーマを、優しい視点で入れている所も凡百のラブコメとは一線を画します。

 雨の中にイザベルが飛び出してゆく所や音楽の使い方など、ロマンティックで古風なテイストが横溢しますが、ビバリーヒルズ・ホテルのシーン(特にグラフィカルな俯瞰ショット!)など、モダンな感覚も生かしているのが特色。ただ、かなりはっちゃけた編集が目立ち、過剰演技もちらほら。ストーリー展開にもご都合主義的な箇所が多く、それが本気でやっているのか、それとも敢えて古い映画を模しているのか、判然としません。

 魔法の映画なので、特殊効果をたくさん使っているのがエフロン作品では異色。ただ、最新のCGではなく、ジャンプ・カットや単純な合成などが多いです。監督曰く、「特殊効果には様々な側面があり、今回やったのは時代遅れにする事。TV版のちゃちな効果を真似たの」。ちなみに冒頭の空撮は、イザベルの視点から見たロスの映像だそうです。

* スタッフ

 製作は『ミックス・ナッツ/イブに逢えたら』『めぐり逢えたら』でも組んだジェームズ・W・スコッチドポール、

『グラディエーター』のダグラス・ウィック、『レナードの朝』『プリティ・リーグ』の監督ペニー・マーシャル、脚本の監修も務めるダイアン・ドライヤー、そしてエフロン自身。脚本はノーラとデリアのエフロン姉妹で書いています。

 撮影監督は『マイケル』以来、4度目のコラボとなるジョン・リンドレー。プロダクション・デザイナーは、『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』『ギフト』『スパイダーマン』シリーズとサム・ライミ作品で活躍するニール・スピサック、  編集は『ユー・ガット・メール』で共同製作を務めたティナ・ノーラン。音楽は、こちらも4作目のエフロン作品となるジョージ・フェントンですが、個人的には彼の平均的ハリウッド調スコアには感心しません。

 衣装は、エフロンがぜひ組みたかったというメアリー・ゾフレス。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『ターミナル』『メリーに首ったけ』の他、コーエン兄弟の作品でも知られますが、イザベルの衣装については「抱きしめたくなるほど愛らしい感じ」を目指したそうです。エフロンによれば、「女性スタッフに着たいと思われたらまずは合格、というのが目安ね」との事。

* キャスト

 主演のニコール・キッドマンはシリアスな役が多く、コミカルな役はほぼ初めてだったそうですが、エフロンは普段の明るい彼女を知っていたため、全く心配していなかったとの事。彼女の出演が決まってからは、脚本を当て書きさえしています。

 相手役のウィル・フェレルは、人気番組『サタデー・ナイト・ライヴ』出身。7年に渡ってレギュラー出演し、ブッシュ大統領やショーン・コネリーの物真似で人気を博したそうです。『オースティン・パワーズ』で映画に初出演後、ウディ・アレンの『メリンダとメリンダ』など幾つかの出演作あり。アメリカン・コメディを地で行く過剰な芝居は好みを分つ所ですが、魔法でイザベラに惚れてしまう一連のシーンは、苦手な私でも大笑いしてしまいました(結構シュールなセリフだったりします)。

 イザベラの父を英国の名優マイケル・ケイン、アイリス役の大御所女優を『アパートの鍵貸します』名女優シャーリー・マクレーンが演じているのも豪華。女性陣では、イザベルの友人マリア役で歌手のクリスティン・チェノウェスが映画デビュー、『ユー・ガット・メール』でデビューして注目されたヘザー・バーンズが記録係ニーナを演じています。

 これに較べると男性陣は集団でまとめられてしまった感がありますが、中でもウェス・アンダーソンやソフィア・コッポラ作品の常連ジェイソン・シュワルツマンが、ジャックのマネージャーを大袈裟に演じていて存在感があります。プロデューサーのラリーを演じるジム・ターナー、脚本家ステュを演じるスティーヴン・コルバート、アーサーおじさんを演じるスティーヴ・カレルもコメディ劇団出身。

 本編には映画撮影のシーンがたくさん出てきますが、ここでは本作のスタッフ達がエキストラとして本人役で出演しています。脚本スーパーヴァイザーや制作アシスタント以下、キッドマンやフェレルのヘア・メイク、衣装チームまで出演。又、ヴォイス・オーヴァーのアナウンサーでエフロンの助手J・J・サシャが声の出演をしています。

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