翼のない天使 

Wide Awake 

1998年、アメリカ (87分)

 監督・脚本: M・ナイト・シャマラン

 製作総指揮:ボブ・ウェインスタイン、ハーヴェイ・ウェインスタイン

        メリル・ポスター、ランディ・オストロウ

 製作:ケリー・ウッズ、キャシー・コンラッド

 共同製作:ジェームズ・ビッグウッド、ティモシー・ロンズデール

 撮影監督:アダム・ホランダー , A.S.C.

 プロダクション・デザイナー: マイケル・ジョンストン

 衣装デザイン:ブリジット・ケリー

 編集:アンドリュー・モンドシェイン

 音楽:エドモンド・チョイ

 出演:ジョセフ・クロス  デニス・レアリー

    ダナ・デラニー  ロバート・ロッジア

    ロージー・オドネル

* ストーリー

 カトリックの男子校に通う小学生ジョシュア。大好きだったおじいちゃんが亡くなって数ヶ月、おじいちゃんはどうなったのか、天国に無事たどり着いたのか、死とは何か、両親も先生も教えてくれない答えを見つけるため、少年は一人で神様を探しはじめる。

* コメント

 ハリウッドにおける、シャマランの第1作目。まだ実績のない新人監督という事で思い通りに撮影させてもらえなかったのか、それとも経験不足による技術的未熟さゆえか、次作『シックス・センス』で確立する特有のタッチはまだそれほど出ておらず、オーソドックスな演出という印象。全体にほのぼのとした穏やかさと暖かなムードに溢れた感動的な作品で、おじいちゃんの椅子をめぐるやり取りや、運動会の回想シーンなど、私には思い出しただけで大泣きしてしまう名場面もあります。

 シャマランの個性は、主人公が少年である事や超自然的なテーマ、フィラデルフィアでのロケ撮影、静的なトーンを基調としながらも、俳優達の演技によってドラマティックな緩急を付けている所など、そこここに光っています。気の利いた素敵なラストも、シャマランらしいストーリー・センスの萌芽と言えるでしょう。ちなみに、彼が通っていた小学校、ウォルドロン・マーシー・アカデミーも撮影に使用されているそうです。

 一つだけ気になったのはDVDの日本語字幕。ジョシュアがおじいちゃんの事をずっと“じじ”と呼びますが、オリジナルのセリフは普通に“グランパ”となっているようだし、日本でも祖父の事を“じじ”なんて呼ぶ子はあまりいないと思うので、これにはかなり違和感があり、興を削がれました。

* スタッフ/キャスト

 主要スタッフはあまり名前を聞かない人ばかりで、大スターも出ていませんが、主にコメディで才能を発揮しているロージー・オドネルやデニス・リアリーなどの個性派俳優を起用して、手堅いアンサンブルを展開。

 主人公の少年を演じたジョゼフ・クロス君は、繊細かつ感受性豊かな演技で泣かせます。人によっては“お涙頂戴”だというのかもしれませんが、真情のこもった表現であれば私は大歓迎。彼は後に、イーストウッドの『父親たちの星条旗』、スピルバーグの『リンカーン』、ガス・ヴァン・サントの『ミルク』など、大きな役ではありませんが大物監督の重要な作品に参加していて、着実にキャリアを築いています。

 ところで、シャマラン監督は学園ドラマ『ルディ/涙のウイニング・ラン』の大ファンで、そのサントラを聴きながら本作の脚本を執筆したそうですが、偶然にもその脚本に注目し、映画化に漕ぎ着けたプロデューサーの一人が、その『ルディ』のケイリー・ウッズでした。シャマランには、こういう因縁めいた話がよく似合いますね。

 

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