アフターアース

After Earth

201年、アメリカ (100分)

 監督: M・ナイト・シャマラン

 製作総指揮:E・ベネット・ウォルシュ

 製作:ウィル・スミス、 M・ナイト・シャマラン

    ケイレブピンケットジェイダピンケット・スミスジェイムズ・ラセター

 共同製作:アシュウィン・ラジャン、ジョン・ラスク、クワメ・L・パーカー

 脚本: M・ナイト・シャマラン、ゲイリー・ウィッタ

 (原ウィルスミス

 撮影監督 :ピーター・サシッツキー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー :トム・サンダース

 衣装デザイナー:エイミー・ウェスコット

 編集 :スティーヴン・ローゼンブラム

 音楽 :ジェイムズ・ニュートン・ハワード

 ユニット・プロダクション・マネージャー:E・ベネット・ウォルシュ

 第1助監督:ジョン・ラスク

 第2助監督:ジョン・R・ソーンダース、ジョン・ナスラウェイ

 美術監督:ネイマン・マーシャル

 編集助手:ルーク・フランコ・シロアッキ

 シャマランの助手:ドム・カタンザリテ

 出演:ウィル・スミス     ジェイデン・スミス

    ソフィー・オコネドー  ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ

* ストーリー

 西暦3071年。人類はその100年前に地球を捨て、ノヴァ・プライムという惑星に移住していた。士官学校の訓練生キタイは、軍の総司令官である父サイファと宇宙遠征に臨むが、宇宙船の事故で見知らぬ星に不時着する。乗組員は全滅し、父も瀕死の重傷を負う中、キタイは緊急発信機を探すため、父の助言の下で宇宙船の外に飛びだす。しかし実はこの星こそ、人類が住むのに適さない危険な世界となった地球なのだった。

* コメント  

 前作『エアベンダー』に続き、現代アメリカ以外の舞台設定を用いたSFアクション。宣伝で監督の名前を控えたのが良かったのか、はたまたウィル・スミスの親子競演が話題を呼んだのか、長らく評判を落としていたシャマランとしては、久々のヒットとなった映画です。もっとも、製作陣は過去のシャマラン作品と全く違うし、ウィル・スミス自身による原案も仕掛けのある物語ではなく、脚本は共同執筆。客観的に観ても、シャマラン色は薄い映画と言えるでしょう。

 しかし映像の特性共々、全体としては彼の才気が充溢した傑作です。特にウィル・スミスの、抑えた低いトーンによる訥々とした喋り方は、正にシャマラン作品固有の演技スタイル。又、画面の手前で、クルーの死体に反応して半透明の自動ジャバラが開閉する場面がありますが、こういった往復運動や、規則的な動きを画面の中に取り込んで不思議なリズムを作り出すのも、シャマラン特有の手法です。

 危険な土地に重要なアイテムを探しにゆく通過儀礼のストーリーはシンプルかつ直線的で、枝葉を付け足して二時間以上に肥大しつつある現在のハリウッド映画からすると、すこぶるストイックで潔く見えます。しかし、怪我で動けない父親が主人公の行動を監視し、無線を通じて助言するという構図がプロットに立体感を与えているし、それによってシャマランお得意の、目に見えないけれど近くに存在する脅威の描き方も、よりスリルの度合いを増します。

 死者の記憶が主人公に強い影響を及ぼすというのは、過去のシャマラン作品に繰り返し表れたテーマ。恐怖とは未来を想像する事であって、いま目の前にある現実だけに集中すれば恐怖を克服できるという思想には、東洋的な雰囲気も漂います。「危険は実在する。しかし恐怖は自分次第だ」とは名言。それによって映像に求道的なパワーが生まれ、よくあるディザスター・ムーヴィーやゲーム感覚のアトラクション映画になっていない所に才気とセンスを感じます。

 本作はロケーションや背景の設定が素晴らしく、サスペンスやアクションの演出共々、技術的な見地からも傑出した作品と言えます。惑星や宇宙船内の空間や居住スペースには、アジアやアフリカの民族的イメージも取り入れて、不思議な美的感覚を開陳。特殊効果やCGをむやみに多用せず、使う場合でもアナログ的な感覚を基調にしているのはシャマランらしいです。

 家族4人の芝居だけでほぼ全体を占めるという、SFアクションとしては斬新な作劇ですが、いくら1時間40分の短い映画とはいえ、凡庸な監督が演出していたらとても間が持たなかった所でしょう。

* スタッフ

 製作陣は主にウィル・スミスのブレーンですが、シャマラン自身や第1助監督を務めてきたジョン・ラスク、本作以降のシャマラン作品を続けて製作するアシュウィン・ラジャンも名を連ねています。初の原作物だった『エアベンダー』に続いて、本作もウィル・スミスの原案が元で、脚本にも共同執筆者として英国出身のビデオゲーム編集者/脚本家ゲイリー・ウィッタが起用されました。シャマラン自身、大スターで企画の発案者でもあるウィル・スミスと「衝突はなかったとはいえない」と認めています。

 シャマラン作品初参加の撮影監督ピーター・サシッツキーは、ケン・ラッセルやデヴィッド・クローネンバーグなど異色監督とのコラボで知られる英国のベテラン。SF映画に起用される事も多く、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』やティム・バートン監督『マーズ・アタック!』の撮影も担当しています。

 様々な文化を融合させた斬新なプロダクション・デザインは『ドラキュラ』『プライベート・ライアン』のトム・サンダース、編集は『ラスト・サムライ』などエドワード・ズウィック監督作品の常連スティーヴン・ローゼンブラムと、いずれもシャマラン監督とは初コラボ。シャマラン組のメイン・スタッフは音楽のジェームズ・ニュートン・ハワードだけという布陣になりましたが、衣装のエイミー・ウェスコットは続いて『ヴィジット』も手掛けています。

* キャスト

 本作は非常に出演者の少ない映画で、ほぼウィル・スミス親子だけで進行するような体裁。そんな中、出番は少ないながらピンポイントで印象を残すのが主人公の姉と母親という、二人の女性です。前者はレニー・クラヴィッツとリサ・ボネの娘で、後に『マッドマックス/怒りのデス・ロード』でも活躍するゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ。後者は『ホテル・ルワンダ』でアカデミー賞にノミネートされた、ソフィー・オコネドーが演じています。

 

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