ウェイワード・パインズ/出口のない街

       〜第1話『偽りの理想郷』(TVシリーズ)

Wayward Pines 〜Where Paradise Is Home

2015年、アメリカ (44分)

 監督: M・ナイト・シャマラン

 製作総指揮:ドナルド・デ・ライン、アシュウィン・ラジャン

       チャド・ホッジ、M・ナイト・シャマラン

 共同製作総指揮:ロブ・フレスコ

 製作:ロン・フレンチ

 共同製作:キャシー・フランク

 脚本:チャド・ホッジ

 (原作:ブレイク・クロウチ)

 撮影監督:アメリア・ヴィンセント

 プロダクション・デザイナー:カート・ビーチ

 衣装デザイナー:メアリー・E・ヴォーグト

 編集:エリザベス・クリング、マイケル・ルシオ

 音楽:チャーリー・クロウサー

 第1助監督:ジョン・ラスク

 シャマランの助手:ドミニク・カタンザリテ

 出演:マット・ディロン  ジュリエット・ルイス

    カーラ・グギーノ  メリッサ・レオ

    トビー・ジョーンズ  シャニン・ソサモン

    リード・ダイヤモンド  テレンス・ハワード

    ティム・グリフィン  チャーリー・ターハン

* ストーリー  ネタバレ注意!

 シークレット・サービス捜査官のイーサン・バークは、失踪した同僚ケイトとエヴァンスの行方を捜査中、交通事故に遭ってしまう。彼は見知らぬ街の病院で目を覚ますが、そこは奇妙な掟で支配された、脱出不可能な街だった。

* コメント   ネタバレ注意!

 シャマランが初めて手掛けたテレビ・シリーズで、彼は製作総指揮と第1話の監督を担当。原作物だし、脚本の執筆には関わっていないとあって、謎を秘めた驚きのストーリー展開を売りにしている以外は、あまりシャマラン色の強くない作品です。ただ、シリーズ後半まで観ていくと、閉ざされた街という『ヴィレッジ』の設定や、地球の進化や人類への脅威という『ハプニング』や『アフターアース』のテーマも踏襲されているのが面白い所。

 多くのレビュアーが指摘しているように、最初はデヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』のような雰囲気で始まりますが、それも謎の田舎町を舞台にしているというだけで、ストーリーの方向性はだいぶ違います。種明かしは中盤に仕掛けられ、シャマラン自身がメイキング映像で述べているように、5話めからがらっとジャンルが変わってしまうのが特徴。端的に言えば、SFとホラーの要素が入ってきて、最終的にはアクション・スリラーへと発展します。

 人気の原作を下敷きにしているだけあって面白いストーリー展開ですが、全10話の構成としてはやや冗長。『ツイン・ピークス』のように、世界観やキャラクターのユニークさで見せてしまうような中毒性はありません。陰惨なエピソードも多く、最終話の後味も悪いので、最後まで観てもスカっとしないのが残念。クリーチャーの造形も、予算の都合か至ってオーソドックス。シャマラン自身は、自分や出演者達の多くにとってTVの分野は初めてだから、映画のようなアプローチで登場人物をじっくり描いたと語っています。

 シャマランが監督した第1話は、まだ導入部だけあってミステリアスな雰囲気こそ維持しますが、映像や芝居のタッチは特にシャマラン映画のテイストでもなく、言われなければ彼の演出だとは分からないかも。まあシリーズ物ですから、後のエピソードとあまりクオリティが違ってもいけないのでしょうが、それにしても、他の監督達と演出力に大差ないというのは、シャマランのファンにしてみれば物足りない所です。

 メイン・スタッフもテレビ界の人達が中心のようですが、製作のアシュウィン・ラジャンは本作以降シャマランの映画作品もプロデュースしています。又、映画で第1助監督を務めてきたジョン・ラスクはここでも続投。

* キャスト   ネタバレ注意!

 主演はかつての青春スター、マット・ディロン。濃い風貌に抑制の効いた演技で、主演としては悪くありません。父親らしい雰囲気もちゃんとあります。彼はこれがTV映画初主演との事。前半には、人気女優ジュリエット・ルイスが重要な役で出演していて、これも豪華キャスティングですが、あっけなく消えてしまうのが残念。全10話に出演させるには、ギャラが高すぎるのでしょうか。

 主人公イーサンのかつての同僚で、既にこの街に住み着いているケイト役は、カーラ・グギーノ。『スパイキッズ』シリーズの母親役で有名ですが、『スネーク・アイズ』『アメリカン・ギャングスター』等にも出演している売れっ子です。役柄上、髪型やメイクが大きく変化しますが、やはり過剰に陥らない演技が好印象。

 謎を握る側の人達にも、映画で活躍する人達を起用しています。看護師パム役は、メリッサ・レオ。TVシリーズ『ホミサイド/殺人捜査課』でスターになり、『ザ・ファイター』でオスカー女優となった実力派です。街の秘密に関わる大物ジェンキンズを演じるのは、『フロスト×ニクソン』『ブッシュ』等政治物や、ファンタジー作品への出演が多いトビー・ジョーンズ。最初の保安官を演じるテレンス・ハワードも、TVシリーズで主演する事もある他、『RAY/レイ』『陽の当たる教室』など音楽映画に多数出演している個性派。

 

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