本作は最初、『ダイ・ハード2』などのレニー・ハーリン監督作品として製作がスタートしました。DVDアルティメット・コレクションのメイキング映像をみると、彼は一年近くこの作品に関わり、新しいアイデアは出ないと悟って自ら降板したと語っています。 次に抜擢されたのが、『奇蹟の輝き』の監督ヴィンセント・ウォード。彼のアイデアはすこぶる斬新で、木造惑星(!)に中世のような生活を営む修道士達が住んでいて、そこにポッドが墜落してくるというもの。この脚本についてもメイキングで詳しく語られていますが、聞いているだけでワクワクする内容です。しかし、いざ撮影準備に入った途端、会社側が色々と注文を付けてきて、ウォードは結局、「言う通りにしないとクビにする」というスタジオの高圧的な態度を受けて降板してしまいました。 ウォードの名前は原案のクレジットに残っていますが、完成した映画に彼のアイデアはほとんど残っていません。次に抜擢されたのがフィンチャーで、彼の仕事ぶりはキャストもスタッフもいっぺんに魅了してしまいましたが、会社側とはやはり衝突し、毎日が喧嘩だったそうです。 何しろ、彼が撮影に参加した時には、既にウォードの脚本に基づいた巨大セットの建設が始まっていたのに、その脚本は白紙にされ、新しい脚本は出来上がっていなかったのです。彼の喧嘩相手は、後に『タイタニック』を製作したジョン・ランドーだったそうですが、そのランドーも、脚本なしで映画初監督という無茶苦茶な状況で本作を撮り上げたフィンチャーの才能を誉め称えています。 各スタッフの精妙な仕事ぶりには驚かされますが、撮影監督が途中で交替した事は、フィンチャーのファンなら既にご存知でしょうか。当初撮影を担当していたのは、シリーズ第1作の監督リドリー・スコットの傑作SF『ブレードランナー』で知られる、ジョーダン・クローネンウェス。スコットを敬愛するフィンチャーらしい人選です。 これもメイキングで明らかにされているように、クローネンウェスはパーキンソン病を患っており、撮影に耐えられる健康状態になかったため途中降板しました。代役は、これもリドリー・スコットのファンタジー映画『レジェンド』を撮影したアレックス・トムソン。彼もクローネンウェスのファンだといい、その美しい仕事を引き継げるかどうか自信がなかったと語っていますが、彼も暗くて陰影に富んだ映像を得意とするキャメラマンです。 編集のテリー・ローリングスもリドリー・スコットとコンビを組んできた人。プロダクション・デザイナーのノーマン・レイノルズは、スピルバーグ作品や『スター・ウォーズ』シリーズを手掛けた人なので、フィンチャーとは旧知の間柄といった所でしょうか。彼は“リアリズムの匂い”をコンセプトに、巨大で複雑なセットを幾つも組んだそうです。 特殊効果では、この分野の開拓者の一人、リチャード・エドランドが参加してるのが目を惹きます。エイリアンの造型は、元々スイスの有名な画家H・R・ギーガーがデザインしたものですが、前作には参加しなかった彼がここで再び新しいデザインを展開しているのも、第1作のファンには嬉しい所でしょう。 他では、目立って主張の強いのが音楽。エリオット・ゴールデンサルは、ハリウッドの作曲家の中でもひときわ異彩を放つ人で、実に濃密でほの暗い、不思議な音楽を書きます。シリーズ一作目のジェリー・ゴールドスミスも、二作目のジェームズ・ホーナーも、名実共にハリウッドを代表する売れっ子作曲家ではありますが、ゴールデンサルの、得体の知れない不気味な奥行きを持つ音楽の前には、どことなく影が薄い。それに彼特有の、陰鬱な世界に遠くから光が射すような微妙な色彩感は、フィンチャーの映画に、とてもよく合っていると思います。 脚本執筆に参加しているラリー・ファーガソンは、『プレシディオの男たち』『レッド・オクトーバーを追え!』など、熱くて男臭いアクション物で頭角を現した売れっ子ライターです。プロデューサーはシリーズ共通で、『48時間』の監督ウォルター・ヒルと脚本家デヴィッド・ガイラー。脚本も結局、彼らが担当する事になりました(でも、どの時点で完成したのでしょうね?)。 |