セブン

Seven 

1995年、アメリカ (126分)

 監督:デヴィッド・フィンチャー

 製作総指揮: ジャンニ・ヌナーリ、ダン・コルスラッド、アン・コペルソン

 製作 :アーノルド・コペルソン、フィリス・カーライル

 共同製作:スティーヴン・ブラウン、ナナ・グリーンウォルド

      サンフォード・パニッチ、ミシェル・プラット

 脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー

 撮影監督 : ダリウス・コンジ

 プロダクション・デザイナー : アーサー・マックス

 衣装デザイナー:マイケル・カプラン

 編集 : リチャード・フランシス=ブルース

 音楽 : ハワード・ショア

 セカンド・ユニット撮影:ハリス・サヴィデス (クレジットなし)

 Aキャメラ・オペレーター:コンラッド・W・ホール

 追加撮影キャメラ・オペレーター:ジェフ・クローネンウェス

 追加撮影ガファー:クラウディオ・ミランダ

 セット・デコレイター:クレイ・A・グリフィス

 特殊メイクアップ効果:ロブ・ボッティン

 特別協力:シーアン・チャフィン、アンガス・ウォール

 出演:ブラッド・ピット     モーガン・フリーマン

    グウィネス・パルトロウ  ケヴィン・スペイシー

    R・リー・アーメイ    リチャード・シフ

* ストーリー

 次々と起こる凄惨な連続殺人事件。どの現場でも死体には入念な演出が施され、文字が残されている。事件を追う退職間近の刑事サマセットと新人のミルズは、これらの殺人がキリスト教のいう“七つの大罪”に基づいて行なわれている事に気付く。必死で捜査を続ける彼らの前に、ある日突然「自分が犯人だ」という男が出頭してくるが、これは男が最後に仕組んだ恐ろしいゲームの始まりだった。

* コメント

 近年のサイコ・サスペンス物で、恐らく最も大きな成功を収めた作品。スタイリッシュでダークな映像は計り知れない程の影響力を持ち、皆がこぞって真似した事で、この作品が90年代の映像スタイルを決定したとまで言われるほどです。ハッピーエンドを避けた映画は珍しくありませんが、観客をこれほどの絶望で打ちのめすものは、ちょっと少ないのではないでしょうか。

 劇中でモーガン・フリーマンが寂しげに漏らす「こんな世界に子供を生んで送り出す事なんて私にはできない」という台詞が強い説得力を持つのも当然の内容です。それでいて、聖書を引用しつつ凝りに凝った連続殺人を展開する犯人の言い分は、単純な善悪の垣根を越えて、実に複雑で、不安な視点を作品にもたらす。こういう視点は又、『ファイト・クラブ』にも繋がってゆくように思います。

 現実の風景を切り取るより、スクリーンの中に異世界を作り上げようとするフィンチャーの手法は、ここでも冴え渡っています。全編に雨を降らせ、間接照明を多用して描いたこの薄暗い街は、実際にはカラッと晴れ渡るカリフォルニアで撮影したので大変だったそうです。ここでもフィンチャーの語り口は極めて落ち着いていて、むしろ淡々としているくらいですが、そこからクライマックスに向かってひたひたと盛り上げてゆく、その緻密な手腕には舌を巻きます。

* スタッフ

 オリジナル脚本を書いたアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーは、この作品で大きく名前を売った一人。ゲーム性が強くダイナミック展開や、暗く沈んだムードの横溢、社会の病巣に肉薄する鋭い現代性で、アメリカ映画界の一角に特異なポジションを占めるライターです。彼が、ニューヨークのタワーレコードで店長を務めながらこの脚本を書き上げた事は有名ですが、映画の最初に登場する太った死体を彼が演じている事も、ファンの間ではよく知られています(その後『パニック・ルーム』にも出演しています)。

 撮影監督のダリウス・コンジは、『デリカテッセン』『ロスト・チルドレン』等でジャン=ピエール・ジュネ監督と組んできた人で、室内ライティングでは特に高い評価を得ている名手。本作の、カラーとモノクロの中間のような陰鬱な映像は、映画のみならずCMやMTVでも大流行を生みましたが、これはわが国で「銀残し」と呼ばれている現像手法と同傾向のもので、コンジが用いたのはテクニカラー社のENRという実験的プロセス。

 銀粒子をフィルムに残存させる事でコントラストが強調され、影は真っ黒に、明るい部分は白くつぶれる。悪魔的映像とまで賞賛された仕事ですが、この手法は勿論コンジの発明ではないし、彼も他の作品で同じ画作りはしてはおらず、むしろ、懐中電灯の光線などを巧妙に生かした幻想的なライティング・センスに、彼の才能が光っているように思います。

 音楽のハワード・ショアも一筋縄では行かない作曲家。前衛性すら感じさせる沈鬱な作風で、デヴィッド・クローネンバーグやジョナサン・デミ監督に重宝されているのもうなずけます。アンチ・メロディ型の効果音的なスコアも多く、ここでも執拗に同じ和声を反復したりして、独特の不安なムードを醸造しています。

* キャスト

 配役はブラッド・ピットにモーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウと売れっ子揃いですが、背筋も凍る殺人犯を演じたケヴィン・スペイシーは忘れ難いですね。ご存知の通り、彼はどんな作品でも素晴らしい演技で作品を支えていますが、私にはこの役のインパクトが強烈すぎて、いまだにこの印象を拭えないでいます。

* アカデミー賞

 ◎ノミネート/編集賞

 

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