ゼロ年代以降、バリー・レヴィンソンやM・ナイト・シャマラン、ギレルモ・デル・トロ、ニール・ジョーダンなど、映画界で活躍してきた人がテレビ・シリーズに活路を見出し、プロデューサーを買って出た上に第1話を自ら監督するスタイルがすっかり定着しましたが、その中でひときわ注目されるのが本シリーズ。特に、フィンチャー自身が最初の2話分を監督しているのが大きいです。 2話分となるとシリーズ全体への影響力が格段に増す感じで、しかもトータル2時間ですから、1本の劇場映画と変わらないボリュームになります。その辺りも、彼の事ですから確信犯的な戦略なのかもしれませんね。他にもジョエル・シュマーカー、カール・フランクリン、ジェームズ・フォーリー、ジョディ・フォスターといった映画監督、俳優達が演出を担当していて豪華。 実は当シリーズ、イギリスで90年代に大人気を博したテレビ・シリーズのリメイクで、オリジナルは1時間×4話のみ。『ゴーン・ガール』の製作者でもあるジョシュア・ドネンがフィンチャーに「とんでもないドラマがある」と見せたのが最初で、これにハマったフィンチャーが舞台をアメリカに移して製作を決意。第1話はほぼオリジナルを踏襲した物語ですが、第2話からはかなり離れているとの事です。 第1話から復讐劇の様相が濃く、我が国でヒットしたドラマ『半沢直樹』的な痛快さもあり。セリフに盛り込まれたユーモアゆえか、劇映画ほどの張りつめた緊張感は感じられないものの、フィンチャーらしいスタイリッシュな映像センスと、緊密でシャープな語り口は健在。何よりも脚本が傑出しているし、俳優陣の素晴らしい芝居も手伝って、1秒たりとも見逃せないエキサイティングな高揚感が横溢します。時間を忘れさせるほどの高いテンションで、全編を一気に見せてしまう牽引力は卓抜という他ありません。 特徴的なのは、オリジナル版を踏襲しているという、主人公がキャメラに語りかける一人称のスタイル。これが、スペイシーの図抜けた演技力のおかげで絶大な効果を発揮します。時にはセリフなしで、ほんのちょっとキャメラに目配せするだけだったり、ほんの一言注釈を加える程度だったりもするのですが、これがあるおかげで、ダークな復讐劇に辛辣なユーモアのセンスが加味されるのは大きな利点です。 |