俳優で成功したライナーの監督デビュー作は、何とも風変わりな作品。架空のロック・バンドのフェイク・ドキュメンタリーで、バンドのメンバーや観客へのインタビュー、ライヴ・シーンなど、本当のドキュメント・フィルムみたいに凝った作りになっている上、初期のウディ・アレン作品によくあるような、ドタバタ・ミニコントの連鎖みたいな雰囲気もあります。初監督ゆえか、どこか技術的にこなれない印象もあり、後のライナー作品に見られる円熟の語り口を期待すると、そのB級テイストに少々面食らう感じもありますが、ピントのぼけたモノクロ映像や粒子の粗いニュース風映像など、多彩なテクニックを駆使して観客を飽きさせない努力には頭が下がります。 自称“映画監督”のCMディレクターがツアーに同行して撮影するという体なので、その監督を演じるロブ・ライナーが開巻早々、キャメラに向かって語りかけてくるのもユニークな趣向。脚本と劇中歌の作詞作曲も、バンドのメンバー三人とライナーが手掛けています。79分の短い映画ですが、後年開花する多彩な演出テクニックとシニカルなコメディ・センスの萌芽が見られる、興味深い作品でもあります。もっとも、今の彼ならもっと優れたエンタメ音楽映画に仕立て上げてしまうかもしれませんね。 |