ロブ・ライナー

Rob Reiner

* プロフィール

 1945年3月6日、ニューヨーク・シティ生まれ。コメディアン、脚本家、俳優として名高いカール・ライナーの息子で、父のワンマン・コメディ“Enter Laughing”でデビュー。数本の映画に出演した後、ペンシルヴァニアのバックス・カウンティ・プレイハウスで演出家としてデビュー。続いてTVに進出し、『グレン・キャンベル・ショー』でコメディ・ライターとして注目を浴び、71年に始まったTVドラマ『オール・イン・ザ・ファミリー』への出演で、二度に渡ってエミー賞助演賞を獲得。

 1984年、ロック・コメディ『スパイナル・タップ』で映画監督デビュー。以後、『恋人たちの予感』など恋愛映画の名手として成功する一方、法廷ドラマやホラー、ファンタジー、青春映画など、幅広い作風で人気監督の一人となる。自作の製作も請け負うキャッスルロック・エンターティメントの共同設立者で、社長。俳優としても、ウディ・アレン、ノーラ・エフロン、ロン・ハワードなど他の監督の映画で強い印象を残し続ける。『レナードの朝』『プリティ・リーグ』で売れっ子監督となるペニー・マーシャルと、71年に結婚(79年離婚)。

* 監督作品リスト (作品名をクリックすると詳しい情報がご覧になれます。)

 1984年 『スパイナル・タップ』(日本未公開)

 1985年 『シュア・シング 

 1986年 『スタンド・バイ・ミー 

 1987年 『プリンセス・ブライド・ストーリー 

 1988年 『恋人たちの予感 

 1990年 『ミザリー 

 1992年 『ア・フュー・グッドメン

 1994年 『ノース/小さな旅人 

 1995年 『アメリカン・プレジデント 

 1996年 『ゴースト・オブ・ミシシッピー』(日本未公開)

 1999年 『ストーリー・オブ・ラブ』          

 2003年 『あなたにも書ける恋愛小説』         

 2005年 『迷い婚/すべての迷える女性たちへ』     

 2007年 『最高の人生の見つけ方』          

 201年 『最高の人生のはじめ方』(日本未公開) 

 2014年 『最高の人生のつくり方』(日本未公開)  

 2015年 『ビーイング・チャーリー』(日本未公開)

 2016年 LBJ/ケネディの意志を継いだ男  

 2017年 記者たち/衝撃と畏怖の真実  

* スタッフ/キャスト

 ロブ・ライナーの映画を支えるスタッフ/キャストたち  

* 概観

 ライナー作品、私は大好きです。彼の作風は幅広く、一級のエンターティナーとして名声も高いですが、それだけなら、単に良質の娯楽作品を作り続ける職人監督に過ぎません。俳優出身の映画監督は、俳優から良い演技を引き出す事には長けていますが、演出としてはいささか正攻法に過ぎ、面白味のない作品を撮る人も少なくありません。ところがライナーの作品は、そうはならない。表現が凝っていて冒険心に富み、作品のフォルムを壊さない程度に斬新で、それでいて、観客に対しては心憎いほど気が利いている。そして、俳優から魔法のような名演技を引き出し、巧みな語り口でストーリーをじっくりと語り尽くす。

 彼の作品は、まず、造形に非常な安定感があり、例えばディティールを彫琢するに当たっても、この人は、ちゃんと全体を把握してから仕事に当たっている、という確かな感じを与えずにはおきません。手堅い演出力というとまた職人的イメージが強くなってきますが、映画作りの基本的部分で、非常に高い技術を持った人である事は確かでしょう。

 そして、物語を紡いでゆく、その老練なほどの語り口の味わい。大胆な遊び心場面を処理しながら、知的で落ち着いた全体のトーンは決して崩さない、そのストーリー・テリングの見事さ。その秘訣は、彼がしばしば劇作家や小説家と組み、彼らの原作を彼らの脚本で映画化したり、さらには他の作品のシナリオにも彼らを起用するというパターンにあるのかもしれません。又、全てのライナー作品において、英国出身のロバート・リートンを編集に起用している事も、ヨーロッパ的感性の導入に一役買っているでしょう。

 例えば、サスペンスやアクション物が得意な監督がコメディや恋愛物を撮った場合(或いはその逆の場合)、演出にある種のぎこちなさというか、取って付けたような不自然さが漂う事も少なくありません。ライナーの作品には、それがない。彼は、コメディであろうが、法廷ドラマであろうが、恋愛物であろうが、まずは自分のスタイルを確立する所から製作をスタートさせているように見受けられます。そして作品を、極度の繊細さでもって丹念に扱い、私達の心のすぐ側まで近付ける様に腐心する。そうやって素材を集め、繋ぎ合わせ、細心の注意を払って作り上げた物語を、今度は私達の耳元で、まるでおとぎ話でも読んできかせるみたいにして、さりげないユーモアと親密な優しさを込めて語ってくれる。そんな映画を、好きにならずになんていられるでしょうか?

 彼が社長を務める製作会社キャッスルロック・エンターティメントは、『恋人たちの予感』以降から製作を担当しているので、その少し前に設立されたものと思われます。ちなみにキャッスルロックというのは、『スタンド・バイ・ミー』の舞台となっている町の名前ですが、これは原作者スティーヴン・キングが作り出したメイン州の架空の町で、数多くのキング作品の舞台となっている事はファンならご存知の通り。一方でライナーは、今も俳優業も継続していて、ウディ・アレン監督『ブロードウェイと銃弾』やノーラ・エフロン監督『めぐり逢えたら』、ロン・ハワード監督『エドTV』などで、独特のコミカルなキャラクターを請け負って、強い印象を残しています。彼の芝居もすこぶる自然なもので、いつも感心します。

 

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