南部を舞台に黒人差別問題を扱った、実話に基づくシリアスな内容で、俳優の芝居に全てを委ねたような舞台劇風の雰囲気。こう言っては何ですが、ライナー作品としては、よく言えば最も手堅い、悪く言えば最も地味な一作です。彼の映画には、日本未公開作品は少ないのですが、残念ながら本作はその一本になってしまいました。素材に対して真正面に向き合った、その誠意は伝わるのですが、ライナー監督なら、もう少し映画的魅力を駆使して、同じ内容を伝えられたのではないかとも思います。作品全体がテレビ・ドラマのように小さくまとまってしまったのは残念。ただ、キャストには名優を配しています。 最も映画らしい迫力があったのは、徹底した白人至上主義者バイロンを演じたジェームズ・ウッズの登場場面でしょうか。本作の彼は、お得意の憎々しいキャラクター作りを極限まで追求した感があり、リアルである事をも越えて映画的虚構の世界へと観客を誘います(特殊メイクも施しているようです)。他の役者さんも軒並み芝居が素晴らしく、名バイプレイヤー、ウィリアム・H・メイシーなどは軽快な演技で、最初は彼だと分かりませんでした。一方、主役級のウーピー・ゴールドバーグとアレック・ボールドウィンは、抑えた演技で勝負。『ポルターガイスト』のクレイグ・T・ネルソンも出ています。 撮影は、『アメリカン・プレジデント』のジョン・シールが担当していますが、映像的にも不思議と地味です。そういうコンセプトだったのでしょうか? この作品に関しては、一度ビデオでみただけなので、大した情報をご提供できなくて申し訳ない限りです。今後テレビで放映されたり、DVD化されたりする事があれば、このコメント内容も更新したいと思います。現時点では、「地味だ地味だ」と繰り返すだけに終始してしまって、すみません。ただ、大手サイトのレビューを読んでいる限り、ビデオで本作に接した人の間では、かなり評価の高い作品である事をここに記しておきます。 |