ジョンソン米大統領を取り巻く状況を、ケネディ暗殺前後の時間軸で描いた政治ドラマ。ゼロ年代以降のライナーは、少し作りのユルい映画が続いた印象がありますが、本作では久しぶりに硬質なタッチと緊張感を貫き、すこぶる密度の高い映画に仕上がっています。 それは、メイン・スタッフと主演俳優が共通で、同様にアメリカ現代史を題材にした次作『記者たち』とも共通。90分台というコンパクトな上映時間の中、集中力と内圧を保った演出力は一級で、決してライナーの腕が落ちたのではなく、なかなか企画に恵まれなかったのでしょう。 メイン・スタッフにも人を得た感があり、ザ・ブラック・リストのトップに選ばれたジョーイ・ハートストーンの脚本は、惚れ惚れするほど素晴らしいです。ケネディ暗殺時のパレードを縦軸に、大統領選挙及び、ジョンソンが副大統領に就任する経緯をカットバックで振り返る前半部の構成は手際が良く、無駄なく設計された各シーンに、研ぎすまされたダイアローグを散りばめているのも秀逸。それと同じ事が、ボブ・ジョイスの編集にも言えます。 さらに特筆したいのがバリー・マーコウィッツの撮影。アート的な美しさとドキュメンタリックな迫力を両立させたスタイルで、陰影の付け方がとにかく上手いです。ジョンソンとラッセル議員の対話シーンなど、暗闇の中で下から顔に強い光を当てたりして、まるでシェイクスピア劇の悪党たちのような凄みを表出。地味な会話劇になってもおかしくない脚本に、深い奥行きと立体感を付与していて見事です。 主演ハレルソンの驚くべき演技力に圧倒される他、実在の人々が織りなすこの物語を、物真似に陥らせず硬派にまとめたアンサンブル演技も見どころ。ここまで真摯に製作されると、本当にジョンソンという人物の凄み、魅力、そしてその偉業がヴィヴィッドに提示される印象があり、改めて映画の力の大きさを実感させられます。 |