LBJ/ケネディの意志を継いだ男

LBJ

2016年、アメリカ (97分)

 監督:ロブ・ライナー

 製作総指揮:マーティン・シェイファー、エリザベス・A・ベル

       ジュリー・B・メイ、グレン・P・コーレイ

       ダニー・ロス、ダミアーノ・トゥッチ

       マイケル・タッドロス、クリス・コノヴァー

       ハンナ・T・ナレア、ダニエル・アルベルト・カサル

       アラン・マンデル・バウム、ロイド・ブラウン

       アンドリュー・ミットマン、マイク・イリッチ, Jr

 製作:マシュー・ジョージ、ティム・ホワイト、トレヴァー・ホワイト

    ロブ・ライナー、リズ・グロッツァー、マイケル・R・ウィリアムズ

 共同製作:リック・リッカートセン、メアリー・ソロモン

      クリストファー・H・ワーナー

 脚本:ジョーイ・ハートストーン

 撮影監督:バリー・マーコウィッツ, A.S.C

 プロダクション・デザイナー:クリストファー・R・デムーリ

 衣装デザイナー:ダン・ムーア

 編集:ボブ・ジョイス

 音楽:マーク・シャイマン

 キャスト:ウディ・ハレルソン  マイケル・スタール=デヴィッド

      リチャード・ジェンキンス  ビル・プルマン

      ジェフリー・ドノヴァン  ジェニファー・ジェイソン・リー

      C・トーマス・ハウエル  キム・アレン

* ストーリー

 民主党のリーダー的存在リンドン・B・ジョンソンは、1960年の大統領予備選で若きエリート政治家ジョン・F・ケネディに敗北を喫するも、ケネディの要請で副大統領に就任する。しかし63年、ケネディが暗殺。ジョンソンはそのわずか98分後、第36代アメリカ大統領に就任することになる。ジョンソンは南部人である自らの信条よりケネディの意志を尊重し、公民権法の成立を目指す。

* コメント

 ジョンソン米大統領を取り巻く状況を、ケネディ暗殺前後の時間軸で描いた政治ドラマ。ゼロ年代以降のライナーは、少し作りのユルい映画が続いた印象がありますが、本作では久しぶりに硬質なタッチと緊張感を貫き、すこぶる密度の高い映画に仕上がっています。

 それは、メイン・スタッフと主演俳優が共通で、同様にアメリカ現代史を題材にした次作『記者たち』とも共通。90分台というコンパクトな上映時間の中、集中力と内圧を保った演出力は一級で、決してライナーの腕が落ちたのではなく、なかなか企画に恵まれなかったのでしょう。

 メイン・スタッフにも人を得た感があり、ザ・ブラック・リストのトップに選ばれたジョーイ・ハートストーンの脚本は、惚れ惚れするほど素晴らしいです。ケネディ暗殺時のパレードを縦軸に、大統領選挙及び、ジョンソンが副大統領に就任する経緯をカットバックで振り返る前半部の構成は手際が良く、無駄なく設計された各シーンに、研ぎすまされたダイアローグを散りばめているのも秀逸。それと同じ事が、ボブ・ジョイスの編集にも言えます。

 さらに特筆したいのがバリー・マーコウィッツの撮影。アート的な美しさとドキュメンタリックな迫力を両立させたスタイルで、陰影の付け方がとにかく上手いです。ジョンソンとラッセル議員の対話シーンなど、暗闇の中で下から顔に強い光を当てたりして、まるでシェイクスピア劇の悪党たちのような凄みを表出。地味な会話劇になってもおかしくない脚本に、深い奥行きと立体感を付与していて見事です。

 主演ハレルソンの驚くべき演技力に圧倒される他、実在の人々が織りなすこの物語を、物真似に陥らせず硬派にまとめたアンサンブル演技も見どころ。ここまで真摯に製作されると、本当にジョンソンという人物の凄み、魅力、そしてその偉業がヴィヴィッドに提示される印象があり、改めて映画の力の大きさを実感させられます。

* スタッフ

 この近年流行の制作スタイルなのか、製作総指揮に数十人の名前が並んでいるのが壮観。プロデューサーも含めると、マーティン・シェイファー、エリザベス・A・ベル、リズ・グロッツァーなど、ライナー組の人たちの名前もちゃんと混ざっています。

 脚本はハリウッドの優秀脚本を選ぶ「ザ・ブラックリスト」のトップ10に選出された、ジョーイ・ハートストーンのオリジナル。前述の通り、非の打ち所のない見事なシナリオです。彼はライナーの次作、『記者たち/衝撃と畏怖の真実』の執筆も担当。

 メイン・スタッフは素晴らしい仕事ぶりで、特に前作『ビーイング・チャーリー』で組んだバリー・マーコウィッツの撮影は、前述の通りセンスも技術も一級。仕事の速さ、腕の良さでもライナーの信望は厚く、次作『記者たち/衝撃と畏怖の真実』にも起用されています。

 ライナーは仕事が速く、出演のプルマンも「ロブは早撮りで有名で、撮影しながらシーンを頭の中で編集している」、ハレルソン「今日は一日中撮影だと思って現場に行くと、昼までで終わったりするんだ」と語っていますが、マーコウィッツも同類のようです。監督いわく、「バリーは最小限の時間で照明を調整する。私の早撮りのようなスピードだよ」。

* キャスト

 主演のウディ・ハレルソンは、実際には非常に幅の広い役者なのですが、出世作『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の印象が強いのか、粗野な役柄ばかり演じているように思われがちです。ライナーは彼の可能性の大きさに注目し、偉大な演技を引き出していて圧巻。時には演技に目を奪われ、良質な舞台劇を観るような趣すら感じさせます。

 ケネディ大統領を演じたジェフリー・ドノヴァン、その弟ロバートを演じたマイケル・スタール=デイヴィッドなど中堅の他、ラッセル上院議員のリチャード・ジェンキンス、過去に大統領役の経験もあるビル・プルマン、ジョンソンの妻を演じるジェニファー・ジェイソン・リーなど、今やベテランとなった演技派たちも、精緻なアンサンブルを構築しています。

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