ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、二人合わせてオスカーのノミネート回数16回という、稀代の名優二人を主演に迎えたコミカルなドラマ。いくらスターとはいえ、老優二人が主演ではヴィジュアル的に華やかとは言い難く、さすがに興行的には厳しいかなと思っていたら、これがかなりのヒットを記録したとの事。多くの人にアピールするテーマだったようです。私が行った映画館も、観客の年齢層はかなり高めでした。 重くなりがちなテーマを颯爽と軽妙に、それでいて優しく、繊細に描いてみせるライナーの演出は秀逸。余命六ヶ月の二人の時間を描くとあって、作り手次第では湿っぽくも重たくもできる所、まだ三十代という若さでこのオリジナル脚本を書いたジャスティン・ザッカムは、本作を微笑ましいコメディに仕立て上げました。作劇上、主人公二人の最期は当然避けられない訳ですが、ラストシーンは決して大袈裟にならず、それでいて堂々たる人間賛歌になっていて、爽やかな感動が残ります。 原題の“バケット・リスト”とは“棺桶リスト”の意で、モーガン・フリーマン演じるカーターが昔、大学の講義で課題に出された、死ぬまでにやりたい事を全て列記したリストの事。二人が書き出したリストは、「荘厳な景色を見る」「見ず知らずの人に親切にする」「ムスタングを運転する」「泣くほど笑う」「スカイダイビングをする」「ライオン狩りをする」「世界一の美女にキスをする」などなど。実現したものは彼らが線を引いて消してゆきますが、思わぬ形で同時に実現してしまったりという小粋な演出も効いています。 前半のドラマをほとんど病室の中だけで展開しておいて、後半、世界中をめぐる二人の姿を軽やかなタッチで次々に描き出すのも見事な構成。多彩な映像素材を用意しながら、巧みに一本のラインに統合させて違和感を覚えさせないその手腕には、『ノース/小さな旅人』や『ストーリー・オブ・ラブ』で培ったノウハウが生かされているようです。舞台はインドのタージマハル、エジプトのピラミッド、ケニヤのセレンゲティなど多岐に渡りますが、エンド・クレジットを見る限りでは実際に現地ロケはしていないようです(パンフレットのプロダクション・ノートもこの点には触れていません)。 上映時間が97分と短く、舞台のスケールに似合わず小品の雰囲気が漂うのも、『ノース』と共通。それぞれ、人生の最後に差し掛かった老人、子供達と、対照的な特定の世代を描いた映画ですが、どことなく姉妹篇のようにも見えるのが不思議です。 |