ストーリー・オブ・ラブ

The Story Of Us 

1999年、アメリカ (96分)

 監督:ロブ・ライナー

 製作総指揮:ジェフリー・ストット、フランク・キャプラ_

 製作:ロブ・ライナー、ジェシー・ネルソン、アラン・ツァイベル

 脚本:アラン・ツァイベル、ジェシー・ネルソン

 撮影監督 : マイケル・チャップマン

 プロダクション・デザイナー :リリー・キルヴァート

 編集 : ロバート・リートン、アラン・エドワード・ベル

 音楽 :エリック・クラプトン、マーク・シャイマン

 出演:ブルース・ウィリス  ミシェル・ファイファー

    ティム・マティソン  ロブ・ライナー

    ジュリー・ハガティ  リタ・ウィルソン

    ポール・ライザー

* ストーリー

 結婚15年目を迎える夫婦ベンとケイティ。今ではお互いへの不満が蓄積し、喧嘩が絶えない関係になってしまっていた。子供達がサマーキャンプに行っている間、二人は別居状態を試してみるが、彼らの頭には楽しかった思い出ばかりがよぎり、子供達への愛情も以前と変わりはしない。どうして歯車が狂ってしまったのか、婚姻関係を続けるか離婚をするか、心が揺れる二人だったが…。

* コメント  

 『恋人たちの予感』の二人、あの15年後はどうなっているのだろう? ライナーはこのコンセプトを基に、全く別のキャラクター、別の俳優を使って新しいロマンティック・コメディを撮り上げました。世間の評価はそれほど高くないようなのですが、この映画、個人的にはライナー作品の中でも『ノース/ちいさな旅人』と並んで特に好きな一作なんです。ハリウッドの恋愛映画は大抵ハッピーエンドで締めくくられますが、やたらと離婚率の高いアメリカ社会を反映してかどうか、ライナー監督は、ハッピーエンドを迎えた男女がその関係を持続させてゆく難しさを、コミカルに、ちょっぴり切なく描いています。

 まずは、遊び心溢れる粋な演出。ベッドの上で口論する二人の両端にそれぞれの両親が現れ、6人での口論を繰り広げるシーン。これは、彼らがカウンセラーに言われた「ベッドに2人で寝ていても、そこにはそれぞれの両親を含めた6人がいると思った方がいい」という言葉からイメージした想像シーン。それから、お喋りなアメリカ人夫婦に悩まされ続けるヴェニス旅行のシーン。そして、『恋人たちの予感』のスタイルを彷彿させる、男性グループと女性グループの会話シーンを比較対称させたような構成(本作ではさらに人数を増やし、それぞれ三人グループになっています)。

 それから、編集。この映画は、主人公の二人が夫婦として積み上げて来た時間を、短いカットの膨大な積み重ねとして描いています。口汚く罵りあったり、親密な愛情を感じさせたり、はめを外してふざけあったり、それぞれ1秒にも満たないような一瞬のカットを、スピーディなカッティングで次々に繋いでゆく。各カットは、ごくありふれた日常のワンシーンに過ぎないのだけれど、その断片をこうやって連続して見せられると、映画の外にある、この夫婦が重ねてきたかけがえのない時間を思わずにはいられません。

 そして、これらのカットは、キャメラも照明も、俳優の衣装も立ち位置も、全てセッティングが違うのです。きっと、カットごとに場面の設定を話し合って、数分間の寸劇を次から次へ撮影したのでしょう。その、気の遠くなるような作業を思うと、何だか微笑ましくなると同時に、真正な感情のこもった映画作りへのひたむきな姿勢に胸が熱くなります。

 もう一つ、忘れてはいけないのが音楽。ライナー監督も音楽担当のマーク・シャイマンも聴いた瞬間に魔法にかかったという、エリック・クラプトンの主題歌“(I) Get Lost”。出来合いの曲を持って来たのではなく、ラフ・カットを見せて作曲依頼したという曲ですが、あまりに作品のトーンにぴったりだったため、シャイマンがアレンジして全編に使う事にしたそうです。この曲と、もう一つのバラード風のテーマは、センチメンタルで、寂しくて、でもほんのりと暖かくて、本当にこの映画にぴったり。これらのメロディが流れてくるだけで、主人公達の心情が画面の外へ溢れ出してくるよう。

 夫婦の危機、それも子供の問題も絡んでくるとあって、さすがに『恋人たちの予感』や『あなたにも書ける恋愛小説』ほど軽いタッチとは行きませんが、その代わりに情感豊かな、よりロマンティックな映画になりました。96分という上映時間も内容に合ったもので、ライナー監督自身、このくらいの尺の映画では特に才気を発揮するように思います。ラストシーン、私は爽やかな涙と共に素敵なエンディングを堪能しましたが、皆様はどう受け止められるでしょうか。

* スタッフ

 本作に横溢する遊び心は、『ノース/ちいさな旅人』でもライナーと組んだ脚本家、アラン・ツァイベルの面目躍如たる所。『サタデー・ナイト・ライヴ』を始め、テレビの人気コメディ番組で活躍する作家ですが、本作も『ノース』も、ユーモアとペーソス溢れる素晴らしい作劇で、私は大好きです。製作、編集はいつも通りライナー組のメンバーで、音楽に関しては先に記した通り。クレジットは、マーク・シャイマンとエリック・クラプトンの共同名義になっています。

 プロダクション・デザイナーは、『シュア・シング』『アメリカン・プレジデント』でもライナーと組んだリリー・キルヴァート。撮影のマイケル・チャップマンは、マーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』『レイジング・ブル』などを手掛けたベテランです。

* キャスト

 ブルース・ウィリスという人は、いつもアクション映画で苦しそうな表情をしているイメージしかなくって、私はあまり注目してこなかったのですが、そんな彼の芝居が特に魅力的に見える映画が少なくとも二つあって、その両方(本作と『ノース』)がライナー監督の作品(しかも同じ脚本家が執筆)というのも偶然とは思えません。本作のウィリスは、大声で怒鳴ったり、しみじみと感傷に浸ったり、子供達とふざけあったり、とにかく表情豊かで演技の幅が広い。ライナーによれば、ウィリスは元々ロマンティック・コメディで本領を発揮してスタートを切った役者で、むしろ彼が『ダイ・ハード』に出演した時、周囲は「なぜ彼がアクション映画に?」と不思議がったそうです。

 ウィリスとミシェル・ファイファーというのも、何だか意外な組み合わせのようにも思われますが、これがいかにも長年連れ添った夫婦に見えくるから、やはりよく考えられたキャスティングなんでしょうね。本作は、コメディ系作品の名バイプレイヤーを多数脇に配していて、なかなか見応えがあります。例えばトム・ハンクスの奥さんリタ・ウィルソンとか、『1941』や『アニマル・ハウス』などジョン・ベルーシ主演の映画で二枚目を演じてきたティム・マシソンとか、『ダイナー』でグループの一人を演じた元スタンダップ・コメディアン、ポール・ライザーとか、とにかく目が離せません。主人公二人の両親を演じているのも、喜劇俳優として名高い人ばかり。ライナー自身も、ウィリスの親友役で出演しています。

 

Home  Back