ア・フュー・グッドメン

A Few Good Men 

1992年、アメリカ (137分)

 監督:ロブ・ライナー

 製作総指揮:ウィリアム・ギルモア、ラシェル・ファファー

 製作:デヴィッド・ブラウン、ロブ・ライナー、アンドリュー・シェインマン

 共同製作:スティーヴ・ニコライデス、ジェフリー・ストット

 脚本:アーロン・ソルキン

 撮影監督 : ロバート・リチャードソン, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー :J・マイケル・リーヴァ

 編集 :ロバート・リートン

 音楽 :マーク・シャイマン

 出演:トム・クルーズ       ジャック・ニコルソン

    デミ・ムーア        ケヴィン・ベーコン

    キーファー・サザーランド  ケヴィン・ポラック

    J・T・ウォルシュ     クリストファー・ゲスト

* ストーリー

 キューバの米海軍基地内で一人の海兵隊員が殺害された。容疑者として同じ部隊の優等兵が二人起訴されるが、調査部のギャロウェイと若手弁護士キャフィは、事件に海軍の暴力的制裁「コードR」が関係している事を突き止める。しかし、大義のために事実は歪められ、総司令官ジェセップ大佐の陰謀によって真実は隠蔽されはじめる。偉大な弁護士だった父へのコンプレックスから、これまで法廷での前面対決は避け続けて来たキャフィだが、自分がこの事件を担当させられた理由を知り、多大なリスクを承知で海軍の最高権力に立ち向かう。

* コメント  

 海軍で起きた殺人事件をめぐる、法廷サスペンス。演劇界では異例という、ブロードウェイで二年間のロングラン・ヒットとなった戯曲が原作で、俳優達に演技力を要求されるとあって、配役の豪華さがただごとではありません。いかな優れた原作・脚本とはいえ、ここまでくるともう、本作の見どころはしぜん、俳優観賞とならざるを得ないでしょう。

 事件解決に向かう弁護団にトム・クルーズとデミ・ムーア。彼らとチームを組む仲間に、コメディアン出身のケヴィン・ポラック(いつもいい味を出す人で、私は大好きです)。ジェセップ大佐にジャック・ニコルソン、その配下にJ・T・ウォルシュとキーファー・サザーランド。J・T・ウォルシュも私の大好きな役者でしたが、亡くなってしまいましたね。ニコルソンが『恋愛小説家』でオスカーに輝いた時、スピーチの中でウォルシュへの弔意を述べていたのが印象的でした。個性的な悪役や憎まれ役のうまい人ですが、ここでは抑えた渋い演技で、事件の真実を握るキーマンを演じています。

 キーファー・サザーランドは、『スタンド・バイ・ミー』に続くライナー作品。近年は警察沙汰が続いて素行の悪さばかり注目されますが、迫力のあるいい役者さんです。ドラマ『24 TWENTY FOUR』の大ヒットで、日本でもお馴染みの顔になりました。さらに、ニコルソン側の弁護士を、演技派として大成したケヴィン・ベーコンが演じています。彼とトム・クルーズによる、火花の散るような弁護合戦は実にスリリング。

 ライナーの演出は、コメディの時とは違って真摯な姿勢をみせますが、常に素材にとって最良の方法が選択されている所は、さすがという他ありません。最初はいい加減だった人物が、優れた仲間や刺激的なライバルを得て正義に目覚め、巨悪を打ち負かすというストーリーは、いかにも大衆受けしそうな型であるものの、軍隊の内部規律が抱えるモラルのジレンマと、偉大な弁護士だった父の影響と闘うキャフィの内面的葛藤という、二本の大きな柱をテーマの中核に据えた事で、見応えのある物語になりました。映画全体も、監督のセンスと実力のある俳優達、非凡なスタッフ・ワークのおかげで、通俗に堕ちることがありません。

 ライナーらしい語り口は、トム・クルーズとデミ・ムーア、ケヴィン・ポラックの三人が、部屋で勉強を重ねて行くシーンによく表れています。キャメラは、窓の外からゆっくりと彼らにドリー・インしてゆき、その間に、彼らが議論を重ねているシーンが、時間の経過を追ってコラージュされてゆくわけですが、その中に、彼らがボールで遊んでいるようなシーンなども組み込まれています。彼ら三人は、常に事件にばかり取り組んでいるわけじゃない。人間だから、生活がある。気が合えば、息抜きにはしゃぎ合ったりする仲にもなる。殺人事件とも法廷での争いとも直接関係ないけれど、そこを描く映画って、やっぱりなんか素敵です。

* スタッフ

 脚本を書いたアーロン・ソルキンは、原作戯曲の作者でもあり、ライナーとは後に『アメリカン・プレジデント』でも組んでいます。彼が若干27歳で第一稿を仕上げたというこの戯曲は、前述の通りブロードウェイで二年間のロングランを記録しますが、ライナーはこの戯曲に惚れ込み、ただちにキャッスルロック・エンターティメントを通じて映画化権を獲得したそうです。ソルキンは、本作で映画脚本を初めて手がけたという事ですが、脚本執筆に当たり、ライナーとプロデューサーのアンドリュー・シェインマンの三人で、黒板とインデックスカードを前に五日間討議を重ね、全体の構成を固めてから第一稿を書き始めたそうです。

 プロダクション・デザイナーのJ・マイケル・リーヴァは、スピルバーグ関連作や『リーサル・ウェポン』シリーズなどで活躍する売れっ子。本作ではワシントン・ロケを敢行している他、法廷場面は、本物の軍事法廷では規模が小さくて視覚効果が弱いという事で、セットを建てています。撮影のロバート・リチャードソンは、マーティン・スコセッシやオリヴァー・ストーン作品など、必要とあらばかなり大胆なキャメラ・ワークやライティングを行う人ですが、本作では奇をてらった効果を追求せず、堅実な仕事ぶり。製作のシェインマン、音楽のマーク・シャイマン、編集のロバート・リートンは固定チームですね。

* キャスト

 キャスティングのゴージャスさには先に触れましたが、本編中にはトム・クルーズ、デミ・ムーア、ケヴィン・ポラック、ジャック・ニコルソン、J・T・ウォルシュ、キーファー・サザーランドが一つのテーブルを囲むシーンがあって、ここはもう、観ているだけで鳥肌もの。他では、後に注目を集めるキューバ・グッディングJrが小さな役で出演している他、『スパイナル・タップ』で主演したクリストファー・ゲストが軍医を演じています。

* アカデミー賞  ノミネート/作品賞、助演男優賞(ジャック・ニコルソン)、編集賞、音響賞

 

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