スティーヴン・キングの原作を映画化した本作は、ご存じの通り、観客・批評家の絶賛を受け、興行的にも成功を収めたライナー監督の出世作。彼自身、本作を、初めて父親の影響から抜け出せた作品だと語っています。心理描写とディティールの詳細な言及が主軸となっているキングの小説は映画化が難しく、フランク・ダラボン監督の『ショーシャンクの空に』『グリーン・マイル』を除いて(この二本も原作の素晴らしさを考えると最高の出来とまでは思いませんが)成功例が数えるほどしかありません。本作の素晴らしさは、原作に忠実でありながら、原作どうこうという議論が全く影響しないくらい映画的魅力に溢れた作品に仕上がっている点でしょう。 大人になった主人公が子供時代を回想するという構成で、ノスタルジックなムードを基調に置き、いざ子供時代のストーリーに入ると、少年ゴーディが構想中の物語の映像化や、冒険途中に起こる様々な出来事をコメディからサスペンスまで自在なスタイルで活写。夜、焚き火を囲んで雑談を繰り広げるシーンなど、子供達の顔をオーヴァーラップ気味に繋いだ上、会話を元の話題から行ったり来たりさせたりして、ユニークな編集センスを見せる場面もあります。それでいて、リヴァー・フェニックスの神がかり的名演技を中心に、子役達の生き生きとした芝居が織りなす内面のドラマに焦点を当て、原作の心はきちんと押さえているので、作品の芯が最後までぶれません。 役者の魅力を最大限に引き出す事、ストーリーを生き生きと語る事、この後のライナー作品を支える二本の柱はここに出揃いました。そこへ素晴らしい原作と脚本を得たわけだから、出来上がった映画が名作の域に達しているのも当然と言えるでしょう。多くの人がこの映画の子供達に、幼き日々の自分が抱えていた、或いは今の自分がまだ抱えているかもしれない問題を見いだし、彼らの姿に自分を投影しました。彼らの目を通して見た新鮮な世界は、映画の中に現前する世界として、見事にキャメラで写し取られています。正に、ライナーの語り口が冴え渡った逸品。 |