最高の人生のはじめ方

The Magic of Belle Isle

2011年、アメリカ (108分)

 監督:ロブ・ライナー

 製作総指揮マーティン・シェイファー、リズ・グロッツァー

       ジャレッド・イアン・ゴールドマン

 製作:デヴィッド・ヴァルデス、サリー・ニューマン

    アラン・グレイスマン、ロブ・ライナー、ロリ・マクリアリー

 脚本:ガイ・トーマス

 撮影監督 : リード・モラーノ

 プロダクション・デザイナー:トム・リゾウスキ

 編集 : ドリアン・ハリス

 音楽 :マーク・シャイマン

 出演:モーガン・フリーマン  ヴァージニア・マドセン

    キーナン・トンプソン  マデリン・キャロル

    エマ・フールマン  ケヴィン・ポラック

* ストーリー

 著名な小説家だったモンテ・ワイルドホーンは、妻を亡くした後からアルコールに溺れ、創作活動からも身を引いて、孤独に日々を過ごしていた。甥の計らいでいやいやながら避暑地にやってきた彼だが、隣人となったシングルマザーのシャーロットや、彼女の娘たちと交流する内、少しずつ心の変化を感じはじめる。

* コメント  

 ライナー久々のヒットとなった前作、『最高の人生の見つけ方』の続編みたいなタイトルですが、これはソフトの邦題だけで、オリジナル・タイトルは全然違います。内容も全く関連がなく、モーガン・フリーマンが出演している事だけが共通点。日本未公開作ながら、抑制の効いた知的な脚本を用意し、役者の繊細な演技をメインにして構成した、手堅くも秀逸な映画です。滑り出しがどこか魅力に欠けるのは難点ですが、そこはベテラン監督だけあって、映画のトーン&マナーをわきまえているというか、じっくりと腰を据えた演出で、徐々に観客を惹き付けてゆきます。

 頑なだった人物が変わってゆくというストーリーは珍しくありませんが、本作の場合はその過程が自然で、道徳的な押し付けがましさがない所が心地良いです。最初から極端に嫌なヤツに描かれている訳でもないし、酒浸りの生活を見直したり、遠ざかっていた小説執筆の仕事に復帰したりという描写も、ごく自然に、淡々と推移していく感じ。ハリウッド映画特有の、派手に飾り立てた演出はみられません。それだけに、主人公自身の言葉で自らの変化について言及される時、何ともいえない暖かな感動が、画面に横溢します。

 三姉妹の長女も、いかにも現代っ子らしく、田舎暮らしの環境に適応できず、主人公への興味もあまり示さない人物造形がなされていますが、そんな彼女が母親や妹たちに示す愛情と理解も、いささかのドラマティックな虚飾を加えず、さりげなく描かれる所に、好感が持てます。又、次女のフィンとモンテの間の、創作をめぐる交流は、母親シャーロットとモンテの、恋とも友情ともつかぬ交流と並んで、ストーリーの柱となっていますが、これもやはり、これみよがしに展開させる事なく、役者の緻密な演技に委ねている点は、いかにも大人の映画という感じ。

 特に秀逸なのが主人公のダイアローグで、周囲のキャラクターに対して彼が返す言葉の数々は、いちいちウィットに富んでいて、だんだんと彼がどう反応を返してくるか楽しみにもなってきます。くどくど状況説明をせず、滋味豊かなセリフで全体を構築するこのセンス、過去の実績が全くなかった脚本家ではありますが、ガイ・トーマスという人の才気を感じます。

* スタッフ/キャスト

 脚本家以下、撮影監督、プロダクション・デザイナー、編集と、軒並み業界での実績がほとんどない新進のスタッフを登用しているのは、低予算映画のコスト配分を大きくモーガン・フリーマンに割いたせいでしょうか、それとも、世代交代による人材育成を狙ったものでしょうか。出来上がった映画は勿論、質が大きく落ちた訳ではありませんが、クレジットにいつもの名前が全く出て来ないのは、映画ファンとして寂しいものがあります。唯一、特別協力の所に、編集のロバート・リートンの名前がクレジットされています。

 逆に、常連スタッフが請け負っているのは、マーク・シャイマンによる音楽と、製作のアラン・グレイスマン。製作総指揮のリズ・グロッツァーは、かつて『ショーシャンクの空に』も担当した人で、モーガン・フリーマンとは既にそこで仕事をしています。キャストでは、ヴァージニア・マドセンが『ゴースト・オブ・ミシシッピー』(これも日本未公開ですけど)でライナーと仕事をしているのと、ちょっとした役で登場するケヴィン・ポラックも、『ア・フュー・グッドメン』でライナー作品への出演経験あり。

 

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