再びスティーヴン・キングの小説を映画化して成功した作品。ライナー監督は、当時映画化が難しいと言われていたキング作品で、二度も勝利を収めた事になります。しかしこれは、『ショーシャンクの空に』『グリーン・マイル』の例を考え合わせても、作り手が一流だった事と、選んだ原作が良かった事に尽きると思います。当時のキングはどこまでもホラー作家というイメージだったし、映画化にはやはりB級ホラー系の映画人が関わる事が多かったですから。 本作は『スタンド・バイ・ミー』と違って、異常心理を描いたサスペンス・ホラーですが、ライナーは今に至るまで他にホラー映画を撮っていないので、彼のフィルモグラフィーの中でも本作は異色といえます。事実、演出手法としては、オーソドックスで地味な部類に入るものですが、少ない登場人物の一人に大女優ローレン・バコールを起用してトーンを変化させているのは見事。 原作にある陰惨な場面は幾分ソフトになっており、いつ終わるともしれない悪夢のような時間の感覚も、映画では弱められています。ライナーは原作を読んで、TVの人気俳優から映画監督に転向した時にファンたちから受けた、得体の知れぬ苦しみを思い出したそうで、演出の主眼も心理的な部分に置いているのでしょう。舞台中心に活躍していたキャシー・ベイツが演じるアニーは確かに強烈で、彼女は本作の演技でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞に輝きました。以降、『ミザリー』といえばキャシー・ベイツというイメージが定着したのも凄いですね。 |