ミザリー

Misery 

1990年、アメリカ (108分)

 監督:ロブ・ライナー

 製作:アンドリュー・シェインマン、ロブ・ライナー

 共同製作:スティーヴ・ニコライデス、ジェフリー・ストット

 脚本:ウィリアム・ゴールドマン

 撮影監督 :バリー・ソネンフェルド

 プロダクション・デザイナー :ノーマン・ガーウッド

 編集 : ロバート・リートン

 音楽 :マーク・シャイマン

 出演:キャシー・ベイツ   ジェームズ・カーン

    ローレン・バコール  リチャード・ファーンズワース

* ストーリー

 “ミザリー”シリーズで有名な人気作家ポール・シェルダンは、雪山で運転中に事故に遭い、たった一人で動けない所を、近くに住む看護婦アニーに救出される。彼女は“ミザリー”シリーズの熱狂的なファンで、ポールを自宅に運んで手厚く看護するが、発売前の新作原稿を読んでミザリーが死ぬ事を知った彼女は態度を一変、ポールに対して恐るべき拷問を加えはじめる。

* コメント  

 再びスティーヴン・キングの小説を映画化して成功した作品。ライナー監督は、当時映画化が難しいと言われていたキング作品で、二度も勝利を収めた事になります。しかしこれは、『ショーシャンクの空に』『グリーン・マイル』の例を考え合わせても、作り手が一流だった事と、選んだ原作が良かった事に尽きると思います。当時のキングはどこまでもホラー作家というイメージだったし、映画化にはやはりB級ホラー系の映画人が関わる事が多かったですから。

 本作は『スタンド・バイ・ミー』と違って、異常心理を描いたサスペンス・ホラーですが、ライナーは今に至るまで他にホラー映画を撮っていないので、彼のフィルモグラフィーの中でも本作は異色といえます。事実、演出手法としては、オーソドックスで地味な部類に入るものですが、少ない登場人物の一人に大女優ローレン・バコールを起用してトーンを変化させているのは見事。

 原作にある陰惨な場面は幾分ソフトになっており、いつ終わるともしれない悪夢のような時間の感覚も、映画では弱められています。ライナーは原作を読んで、TVの人気俳優から映画監督に転向した時にファンたちから受けた、得体の知れぬ苦しみを思い出したそうで、演出の主眼も心理的な部分に置いているのでしょう。舞台中心に活躍していたキャシー・ベイツが演じるアニーは確かに強烈で、彼女は本作の演技でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞に輝きました。以降、『ミザリー』といえばキャシー・ベイツというイメージが定着したのも凄いですね。

* スタッフ

 『恋人たちの予感』に続いて登板のバリー・ソネンフェルドによる撮影は、光量を控えた、深い陰影のあるロー・キーの画調で、雪深い静かな山中の雰囲気をよく伝えてきます。機能的ながら、よく練られたキャメラ・ワークは映画ファンの間でも評価の高いもの。プロダクション・デザインは、『プリンセス・ブライド・ストーリー』に続いてノーマン・ガーウッドが担当。ベストセラー小説の映画化は、読者がそれぞれのイメージを持っていて容易な仕事ではありませんが、冒頭の雪山や山小屋の雰囲気には、恐らく誰もが納得する事でしょう。製作陣、編集のリートン、音楽のマーク・シャイマンといったライナー組の面々も手堅い仕事ぶり。音楽は静謐で、あまり主張しないものですが、こういう作品ではもっとアグレッシヴに冒険をしても良かったかもしれません。『プリンセス・ブライド・ストーリー』に続いてライナーと組んだウィリアム・ゴールドマンの脚本も、原作に沿ったごく自然なもので、特にユニークなアレンジは見当たりません。

* キャスト

 主演のジェームズ・カーン(『ゴッドファーザー』のソニーですね)は、いまいち強い存在感に欠けるように思うのですが、キャシー・ベイツの圧倒的なキャラクターと対比させるには、それが賢明だったのでしょうか。なんでもこの役は、マイケル・ダグラスやハリソン・フォードなど錚々たるスターに次々オファーしたものの、軒並み断られたそうで…。

* アカデミー賞  受賞/主演女優賞(キャシー・ベイツ)

 

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