コンゴ

Congo

1995年、アメリカ (109分)

 監督:フランク・マーシャル

 製作総指揮:フランク・ヤブランス

 製作キャスリン・ケネディ、サム・マーサー

 共同製作:マイケル・バッケス、ポール・ディーソン

 脚本:ジョン・パトリック・シャンリー、マイケル・クライトン

 撮影監督 : アレン・ダヴィオー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー :J・マイケル・リーヴァ

 編集 : アン・V・コーツ, A.C.E.

 音楽 :ジェリー・ゴールドスミス

 出演:ディラン・ウォルシュ  ローラ・リニー

    アーニー・ハドソン  ティム・カリー

    ジョー・ドン・ベイカー  ブルース・キャンベル

* ストーリー

 ダイヤモンドを使用したレーザー光線で、業界の独占を狙うトラビコム社。中央アフリカ、コンゴのダイヤ鉱山で何かを発見した調査隊は衛星回線を使って現地の映像を送ってくるが、通信機器は何者かによって突然破壊され、謎の影を映して映像は途絶えた。新たに送り込まれた調査隊は、政情も不安な現地に向い、密林の奥へと分け入ってゆく。

* コメント 

 売れっ子マイケル・クライトンの原作物ながら、全体のタッチは、『生きてこそ』のシリアスなトーンから『アラクノフォビア』のコミカルなスリラーに戻ったような怪作。超ハイテク機器の世界と大自然の対比は、『ウエストワールド』や『ジュラシック・パーク』のクライトンらしいテーマだと言えます。

 動物パニック物の定石といえる冒頭の襲撃シーンですが、マーシャルの演出はホラー色を強く打ち出し、緊張感を煽りながらも、どこか飄々としたユーモアというか、ホラー・ファンへのサービス精神みたいなものがふんわりと漂う所が不思議。この部分のキャストに、『死霊のはらわた』シリーズのカルト俳優ブルース・キャンベルを配しているのも、その印象を強めます。

 本編も、冗談か本気か分からないような、人を食った調子で進行。主人公達が空港に降り立った瞬間から、いきなりクーデターによる混乱に突入したのには大笑いしましたが、続く軍幹部との会見でも、執拗にケーキにこだわる大佐のキャラクターが、ギャグなのかどうか判別に悩む所です。ゴリラの威嚇に耐えた主人公が背後を振り返る場面では、劇場でも笑いが起きていたので、監督も半分コメディのつもりで作っているのかもしれません。もっとも、コミカルな要素が入るのはこの辺りまでで、以後はずっとシリアスなサバイバル劇になってゆきます。

 凄いのは、夜のジャングルでレーザー光線を張り巡らして安全なエリアを確保し、自動追尾銃を外に向けて多数設置する場面。これだけのハイテク機器に守られていながら、銃が次々に自動発射されはじめると、これでは追いつかない、誰も助からない、という逃げ場のない恐怖が襲ってきます。脅威の相手は、正体が分かってみれば拍子抜けする人もいるかもしれませんが、この場面に関してはアイデア勝ちといった所でしょうか。相手の姿をあまり見せず、物理現象を描いて恐怖を煽る手法は、やはりスピルバーグ譲りとも言えそうです。

 クリーチャー達との攻防も、カットバックを多用してサスペンス演出の冴えを見せますが、どうもこの監督は、演出力はあるけれど正面きって使う気はない、といった態度が見え隠れします。終盤の大掛かりなクライマックスも見事といえば見事なのですが、超大作風の華やかさは希薄。これは、上映時間109分というコンパクトにまとまった脚本、編集のせいかもしれません。前半部など、余りにとんとん拍子に話が進んでいて、いささか都合が良すぎる感じもあります。

 凝ったハイテク機器の数々や、手話を人の言語に変換する機械を付けたゴリラなど、クライトン原作らしいアイデアは満載で、スタン・ウィンストン、マイケル・ランティエリなど、錚々たる顔ぶれによる特殊効果も充実。ロケはコスタリカで行われていますが、J・マイケル・リーヴァがデザインした古代都市ズインジや鉱山の巨大セットは、高画質のメディアで見ると、人工的に見える部分もあるかもしれません。

* スタッフ

 本作もスタッフは超一流です。脚本を『生きてこそ』に続いてジョン・パトリック・シャンリーが執筆、原作者のマイケル・クライトンも参加するという、パニック映画とは思えぬ強力布陣。さらに音楽が名匠ジェリー・ゴールドスミス、編集も『アラビアのロレンス』のベテラン、アン・V・コーツと、低予算で製作される事が多いこの手の作品には似つかわしくないくらい、豪華なメンバーを揃えています。

 撮影監督は、『E.T.』をはじめ数々のスピルバーグ作品で有名なアレン・ダヴィオー。プロダクション・デザインも、スピルバーグやロブ・ライナーの作品で辣腕を振るったJ・マイケル・リーヴァが担当しています。クリーチャーは、『ターミネーター』や『ジュラシック・パーク』で世界を驚かせた天才、スタン・ウィンストンがデザイン。2008年、まだ62歳だった彼を失った事は、SFXの業界にとって計り知れない程の損失だったと思います。

* キャスト

 こちらで予算を抑えたのか、無名の役者が中心。監督は「誰が生き残るか観客に推測されないように、マイナーな実力派をキャスティングした」と語っていますが、物語上のポジションをみれば、誰が生き残るかなんて大体分かりますよね。ローラ・リニーは、後に手堅く活躍して有名になりました。あと、怪優ティム・カリーがホモルカ博士という、これ又アクの強い役を演じていて見逃せない所。ホラー・ファンにとっては、先に書いたブルース・キャンベルのカメオ出演が嬉しいサプライズでしょうか。

 

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