スピルバーグが監督・製作総指揮を務めた80年代のほぼ全て作品をプロデュースしたフランク・マーシャル。正に敏腕プロデューサーとして目覚ましい才能を発揮してきた人だが、監督としても、その演出力には確かなものがある。 デビュー作『アラクノフォビア』における、スリリングかつユーモラスなサスペンス演出は見事だし、実話に基づく第2作『生きてこそ』では、リアリズムに即して苛烈な演出を試みる真摯な姿勢も見せる。それもこれも、彼が数々の話題作でセカンド・ユニット(第二班)の監督として現場を指揮してきた経験が生きているのだろう。アンブリン時代からの人脈を生かし、一級のスタッフを擁している点も成功の一因。 コメディの要素を含んだパニック・ホラー『アラクノフォビア』『コンゴ』、感動実話系の『生きてこそ』『静かの海』『南極物語』と、少ない監督作ながら作風が二分しているが、共通するのは、人間が足を踏み入れるのが困難な大自然が舞台となる点。 南米の熱帯雨林、アンデス山脈、コンゴの密林、月、南極大陸、と普通の映画の背景にはならないような場所ばかりだが、そんな環境で人がサバイバルを繰り広げる図は、正に迫力満点(『南極物語』は犬だけど)。サバイバルもまた、彼の作品に共通するテーマである。 どちらかというとマニアックな題材を選び、スター俳優の起用も避けながら、どの作品もかなりの興行成績を残している点をみると、やはり名プロデューサーの看板に偽り無しといった所か。製作者としての彼はプロフィールの通り大ヒット続きだが、監督としては寡作で、近年はネット配信の音楽ドキュメンタリーしか撮っていないのが残念。 ちなみに奥さんのキャスリン・ケネディも、スピルバーグの助手から出発して、アンブリンの社長にまで登り詰めたスーパー・プロデューサー。マーシャルがアンブリンを去り、夫婦で会社を立ち上げた後も、一時期を除いてスピルバーグ作品を支え続けた。さらに後にはルーカス・フィルムに移り、『スター・ウォーズ』の新シリーズでも采配を振るったりと、とにかくエネルギッシュな活動家。 |