フランク・マーシャル

Frank Marshall

* プロフィール

 1946年9月13日、ロスアンジェルス生まれ。父はジョン・フォード作品等の映画音楽作曲家、レコード・プロデューサーのジャック・マーシャル。UCLAで政治科学を専攻中、友人の映画評論家ピーター・ボグダノビッチの映画製作を手伝ったのをきっかけに業界入りする。

 ボグダノビッチの6本の映画でプロダクション・クルーの仕事をした後、マーティン・スコセッシの『ザ・バンド/ラスト・ワルツ』等でライン・プロデューサーを手掛け、78年にウォルター・ヒル監督の『ザ・ドライバー』で共同製作、続く『ウォリアーズ』で製作総指揮を担当。

 81年、『レイダース/失われたアーク』でスティーヴン・スピルバーグと出会う。実生活でもパートナーとなるキャスリン・ケネディ、スピルバーグと共に製作会社アンブリン・エンターティメントを設立。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『グレムリン』『グーニーズ』など、スピルバーグが製作総指揮を務めたほぼ全ての作品や監督作において、社長のケネディと共に辣腕プロデューサーぶりを発揮。セカンド・ユニットの監督も多く務め、スピルバーグの片腕として活躍。

 90年、『アラクノフォビア』で監督デビュー。翌年アンブリンを去り、92年に夫婦でケネディ/マーシャル・カンパニーを設立。第1作『生きてこそ』を監督。以後、監督作こそ少ないものの、プロデューサーとして『シックス・センス』や『ボーン・アイデンティティ』シリーズなど、ヒットを飛ばし続ける。08年の『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』以降、またスピルバーグ作品も時々プロデュースしている。

* 作品リスト (作品名をクリックすると詳しい情報がご覧になれます。)

 1990年 『アラクノフォビア

 1992年 『生きてこそ

 1995年 『コンゴ

 1998年 『フロム・ジ・アース・トゥ・ザ・ムーン』〜第6話『静かの海』 (TVシリーズ)

 2006年 『南極物語

 2020年 『ビー・ジーズ/栄光の軌跡』 (ドキュメンタリー)(Star Channel Movies)

 2022年 『ジャズ・フェス:ニューオーリンズ・ストーリー』 (ドキュメンタリー、共同監督)(デジタル配信)

 2024年 『ビーチ・ボーイズ:ポップ・ミュージック・ジェネレーション』 (ドキュメンタリー、共同監督)(ディズニー・プラス)

* 概観

 スピルバーグが監督・製作総指揮を務めた80年代のほぼ全て作品をプロデュースしたフランク・マーシャル。正に敏腕プロデューサーとして目覚ましい才能を発揮してきた人だが、監督としても、その演出力には確かなものがある。

 デビュー作『アラクノフォビア』における、スリリングかつユーモラスなサスペンス演出は見事だし、実話に基づく第2作『生きてこそ』では、リアリズムに即して苛烈な演出を試みる真摯な姿勢も見せる。それもこれも、彼が数々の話題作でセカンド・ユニット(第二班)の監督として現場を指揮してきた経験が生きているのだろう。アンブリン時代からの人脈を生かし、一級のスタッフを擁している点も成功の一因。

 コメディの要素を含んだパニック・ホラー『アラクノフォビア』『コンゴ』、感動実話系の『生きてこそ』『静かの海』『南極物語』と、少ない監督作ながら作風が二分しているが、共通するのは、人間が足を踏み入れるのが困難な大自然が舞台となる点。

 南米の熱帯雨林、アンデス山脈、コンゴの密林、月、南極大陸、と普通の映画の背景にはならないような場所ばかりだが、そんな環境で人がサバイバルを繰り広げる図は、正に迫力満点(『南極物語』は犬だけど)。サバイバルもまた、彼の作品に共通するテーマである。

 どちらかというとマニアックな題材を選び、スター俳優の起用も避けながら、どの作品もかなりの興行成績を残している点をみると、やはり名プロデューサーの看板に偽り無しといった所か。製作者としての彼はプロフィールの通り大ヒット続きだが、監督としては寡作で、近年はネット配信の音楽ドキュメンタリーしか撮っていないのが残念。

 ちなみに奥さんのキャスリン・ケネディも、スピルバーグの助手から出発して、アンブリンの社長にまで登り詰めたスーパー・プロデューサー。マーシャルがアンブリンを去り、夫婦で会社を立ち上げた後も、一時期を除いてスピルバーグ作品を支え続けた。さらに後にはルーカス・フィルムに移り、『スター・ウォーズ』の新シリーズでも采配を振るったりと、とにかくエネルギッシュな活動家。

 

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