日本映画の1983年作品『南極物語』のリメイク。置き去りにされた犬を迎えにゆく物語という以外、全く違うお話になっています。脚本構成はシンプルで分かりやすく、役者の演技が決してオーバーにならず、作品のトーンを派手にしすぎない趣味の良さは評価して良いように思います。根っからの悪人が登場しないのはいかにもディズニーのファミリー・エンターティメントで、ならばこそ、南極への帰還を渋る博士の子供が、部屋の壁に『アラジン』のポスターを貼っているのも当然でしょうか。 大自然の描写を得意にしてきたマーシャルの演出だけあって、どの場面も美しさと緊張感に溢れているのはさすがですが、やはり博士が関わってきてからのサスペンスフルな展開に才を発揮した印象です。こういう作品は、ベタベタしたネアカの人なつっこいタッチに陥りがちですが、必要な要素は全て盛り込みながらも全体をきりりと引き締め、幾分辛口に仕上げているのは美点。ストーリーこそ単純ですが、登場人物もステレオタイプで処理せず丹念に描いていて、B級映画的な通俗に墜ちません。 特に画面が生き生きしているのは、オープニングのシークエンスと、南極に戻って来た主人公達が基地の前で鎖を発見する場面。ここは映像も音楽も、映画的興奮をあらわにしていて好感が持てます。全体に、大作の風情がそれほど強く漂わないのも、上映時間を短めに切り上げ、本筋のみに集中したためと思われます。結果として、大人が楽しめる映画となりました。それにしても、過酷なサバイバルを繰り広げる犬たちの姿が、『生きてこそ』の遭難者達にだぶって見えるのは、私の思い込みでしょうか。 |