リドリー・スコット監督によるSFホラーの記念碑的名作『エイリアン』の続編。原題が複数形の“エイリアンズ”となっているように、前作で一匹だったエイリアンが群れで襲ってくる点と、キャメロン自身の発案だというキャッチ・コピー「今度は戦争だ!」の通り、戦争映画の体裁がとられているのが特徴です。作品全体の雰囲気も対照的で、スタティックでテンポも遅く、非人間的な冷たさに支配されていた1作目とは打って変わって、スピーディでテンションが高く、感情の起伏の激しい映画になっています。 続編はパワーダウンするという当時のイメージを覆し、非常に意欲的でオリジナリティのある続編になっている訳ですが、キャメロンが雇われたのはまず脚本家としてで、その時点ではまだ『ターミネーター』の撮影に入っていませんでした。ただ、『ターミネーター』の脚本は業界でも評判を呼んでいて、キャメロンは『エイリアン2』と『ランボー/怒りの脱出』の脚本を同時に受注したといいます。結局は『ターミネーター』のヒットを受けて、キャメロン自身が監督も請け負う形になりました。勿論、彼にとっては初のビッグ・バジェット作品です。撮影はシリーズ1作目と同様に英国で行われ、クルーも皆イギリス人。 前作は群像劇でしたから、シガーニー・ウィーヴァー扮するリプリーも、最終的に生き残るまで特にヒロイックな存在ではありませんでした。キャラクターとしても、それほど深く掘り下げられてはいなかったと思います。それに対して本作は、彼女が事件のトラウマを克服し、眠っていた母性を再発見してゆく話になっているのがキャメロンらしい所です。 映画はまず、宇宙を漂っている所を発見され、覚醒したリプリーが、実は57年間も漂流していて、地球を立った時に別れてきた娘は既に老齢で亡くなっていたという事実を観客に突きつけます。このくだりは劇場公開版にはありませんでしたが、17分の追加シーンがプラスされた完全版で復活しました。この背景がある事で、後にニュートと出会い、リプリーにとって娘に代わる存在となる下地が生まれます。 さらに、ニュートの一家が惑星の探索に出かけ、エイリアンの犠牲となる場面も完全版で復活。これも、バークが会社に無断で探索活動を行わせていた事実に繋がるのと、家族を失って一人で生き延びていたニュートが、リプリーに「マミー!」と呼びかけるまでのドラマに深みを与えています(それだけに『エイリアン3』の衝撃的な開巻はやるせないですね、ホント)。巨大なエイリアン・クイーンを登場させ、リプリーと母親対決をさせているのも、リプリーの母性を際立たせるために意図的に仕組まれた構図ではないかと思います。 キャラクターは総じて魅力的で、腰抜けの上官とか、女性上等兵ヴァスクェスとか、アンドロイドの存在も含めて1作目の衣鉢を継ぎながらも、遥かに人間味に溢れたドラマが展開しています。エイリアン退治に派兵されるのが海兵隊というのも、キャメロンらしいですね(まあ宇宙船だから、海兵隊でおかしくないのでしょうけれど)。本作は海も水も出て来ないキャメロン作品ですが、この海兵隊の存在と宇宙空間のイメージは、『アビス』の深海とどこか繋がっている気がします。ちなみに『アバター』の主人公ジェイクも、元海兵隊員という設定です。 実在するモデルを基にデザインしたという未来の銃器類は、キャメロン自身がコンセプトに関わったもので、軍事専門家をも驚愕させたほどのマニアックなこだわりを見せます。クライマックスでパワーローダーに乗ったリプリーがエイリアンと闘う場面は、どこか日本アニメの影響も感じさせるポップさがあって、最初に観た時は思わず「出たぁ〜!」と叫んでしまいました。ちなみに、この女王エイリアンもキャメロン自身のデザインだという事です。 |