エイリアン2 

Aliens 

1986年、アメリカ (137分)

1991年、完全版ビデオ・リリース (154分)

 監督:ジェームズ・キャメロン

 製作総指揮:ゴードン・キャロル、デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル

 製作ゲイル・アン・ハード

 脚本:ジェームズ・キャメロン

 原案:ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・ガイラー&ウォルター・ヒル

 撮影監督 : エイドリアン・ビドル

 プロダクション・デザイナー:ピーター・ラモント

 編集:レイ・ラヴジョイ

 音楽:ジェームズ・ホーナー

 出演:シガーニー・ウィーヴァー  マイケル・ビーン

    ポール・ライザー  ランス・ヘンリクセン

    ビル・パクストン  キャリー・ヘン

* ストーリー 

 宇宙貨物船ノストロモ号の航海士リプリーは、脱出艇で漂流している所をステーションに収容される。冷凍睡眠から覚醒した彼女は、会社の代理人バークから57年間も漂流していた事実を知らされる。会社の事故調査委員会は、エイリアンに関する彼女の報告を全く信用せず、ノストロモ号を勝手に破壊した罪を糾弾。問題の惑星LV426には、既に技術者とその家族が入植しており、もう20年も無事に暮らしているのだという。ところがちょうどその後、惑星からの通信が途絶え、海兵隊が原因調査に向かうという。リプリーも同行を依頼され、最初は嫌がるが、トラウマを克服するためも惑星に戻る事を決意する。

* コメント  *ネタバレ注意!

 リドリー・スコット監督によるSFホラーの記念碑的名作『エイリアン』の続編。原題が複数形の“エイリアンズ”となっているように、前作で一匹だったエイリアンが群れで襲ってくる点と、キャメロン自身の発案だというキャッチ・コピー「今度は戦争だ!」の通り、戦争映画の体裁がとられているのが特徴です。作品全体の雰囲気も対照的で、スタティックでテンポも遅く、非人間的な冷たさに支配されていた1作目とは打って変わって、スピーディでテンションが高く、感情の起伏の激しい映画になっています。

 続編はパワーダウンするという当時のイメージを覆し、非常に意欲的でオリジナリティのある続編になっている訳ですが、キャメロンが雇われたのはまず脚本家としてで、その時点ではまだ『ターミネーター』の撮影に入っていませんでした。ただ、『ターミネーター』の脚本は業界でも評判を呼んでいて、キャメロンは『エイリアン2』と『ランボー/怒りの脱出』の脚本を同時に受注したといいます。結局は『ターミネーター』のヒットを受けて、キャメロン自身が監督も請け負う形になりました。勿論、彼にとっては初のビッグ・バジェット作品です。撮影はシリーズ1作目と同様に英国で行われ、クルーも皆イギリス人。

 前作は群像劇でしたから、シガーニー・ウィーヴァー扮するリプリーも、最終的に生き残るまで特にヒロイックな存在ではありませんでした。キャラクターとしても、それほど深く掘り下げられてはいなかったと思います。それに対して本作は、彼女が事件のトラウマを克服し、眠っていた母性を再発見してゆく話になっているのがキャメロンらしい所です。

 映画はまず、宇宙を漂っている所を発見され、覚醒したリプリーが、実は57年間も漂流していて、地球を立った時に別れてきた娘は既に老齢で亡くなっていたという事実を観客に突きつけます。このくだりは劇場公開版にはありませんでしたが、17分の追加シーンがプラスされた完全版で復活しました。この背景がある事で、後にニュートと出会い、リプリーにとって娘に代わる存在となる下地が生まれます。

 さらに、ニュートの一家が惑星の探索に出かけ、エイリアンの犠牲となる場面も完全版で復活。これも、バークが会社に無断で探索活動を行わせていた事実に繋がるのと、家族を失って一人で生き延びていたニュートが、リプリーに「マミー!」と呼びかけるまでのドラマに深みを与えています(それだけに『エイリアン3』の衝撃的な開巻はやるせないですね、ホント)。巨大なエイリアン・クイーンを登場させ、リプリーと母親対決をさせているのも、リプリーの母性を際立たせるために意図的に仕組まれた構図ではないかと思います。

 キャラクターは総じて魅力的で、腰抜けの上官とか、女性上等兵ヴァスクェスとか、アンドロイドの存在も含めて1作目の衣鉢を継ぎながらも、遥かに人間味に溢れたドラマが展開しています。エイリアン退治に派兵されるのが海兵隊というのも、キャメロンらしいですね(まあ宇宙船だから、海兵隊でおかしくないのでしょうけれど)。本作は海も水も出て来ないキャメロン作品ですが、この海兵隊の存在と宇宙空間のイメージは、『アビス』の深海とどこか繋がっている気がします。ちなみに『アバター』の主人公ジェイクも、元海兵隊員という設定です。

 実在するモデルを基にデザインしたという未来の銃器類は、キャメロン自身がコンセプトに関わったもので、軍事専門家をも驚愕させたほどのマニアックなこだわりを見せます。クライマックスでパワーローダーに乗ったリプリーがエイリアンと闘う場面は、どこか日本アニメの影響も感じさせるポップさがあって、最初に観た時は思わず「出たぁ〜!」と叫んでしまいました。ちなみに、この女王エイリアンもキャメロン自身のデザインだという事です。

* スタッフ

 製作は『ターミネーター』に引き続き、キャメロンと結婚したばかりのゲイル・アン・ハードが担当。脚本はキャメロン自身が執筆していますが、『エイリアン』シリーズで脚本家を兼任している監督は今の所、彼だけです(『エイリアン3』もそうなる筈だったんですけどね)。プロダクション・デザインのピーター・ラモントは007シリーズを手掛けたベテランで、編集のレイ・ラヴジョイもスタンリー・キューブリック作品の担当者と、さすが大作だけあって実力者が集結。ラモントは、『トゥルーライズ』『タイタニック』も担当しています。

 撮影監督は最初、ケン・ラッセル作品で知られるディック・ブッシュが担当していました。ところが彼は、日程通りの撮影が不可能だと主張した上、照明に関してもキャメロンの意見に全く従わなかったため解雇。次に雇われたのが、同じくイギリス人で後に売れっ子となるエイドリアン・ビドルでした。彼はリドリー・スコットの友人で、前作にもフォーカス係で参加していましたが、長編映画の撮影監督はこれが初。しかし、彼の美しい映像は高く評価され、後にスコット作品や『101』『ハムナプトラ』など話題作を多く手掛けました。私も彼のファンでしたので、2005年末に五十代の若さで他界してしまったのは誠に無念です。

 本作には、SF映画ファンの間で特に人気の高いデザイナーが二人参加しています。一人はシド・ミード。元々は工業デザイナーですが、『ブレードランナー』の未来デザインで多くのファンを獲得しました。もう一人はロン・コブ。ディズニーのアニメーターとして出発し、『エイリアン』の宇宙船デザインでブレイクした逸材。彼らがデザインした装甲車や着陸船、例のパワーローダーなどは、当時のメカ好き男子の心を大いに躍らせました。

 エイリアンのエフェクトは、『ターミネーター』で活躍した天才スタン・ウィンストンが担当。H・R・ギーガーのオリジナル造型を基に、新たに進化したエイリアンを作り出しています。スコタック兄弟の4ワード・プロダクションもVFXスーパーバイザーで参加。本作の特撮はアカデミー賞に輝き、ジョージ・ルーカスの特撮工房ILMの7年連続受賞にストップをかけました。

* キャスト

 シガーニー・ウィーヴァーの参加は大前提として、前作の登場人物は全滅していますから、キャストも一新されています。軍隊チームは皆、厳しい軍事訓練を受けたそうですが、一人だけその訓練を受けなかったのが『ターミネーター』のマイケル・ビーン。実は彼、代役だったそうで、撮影が既に始まっていたため準備なしでロンドンへ飛び、衣装なども全て前任者のものを引き継いだとの事。画面の中の彼は、とてもそうは見えない活躍ぶりですね。

 キャメロン作品には欠かせない俳優、ビル・パクストンは『ターミネーター』のチンピラ役に続く登板ですが、その繋がりではなくオーディション採用だそうです。始終文句や弱音ばかり吐いている上等兵は、キャメロン作品で情けない役ばかり演じている彼らしい役回り。アンドロイドを演じたランス・ヘンリクセンも、『殺人魚フライングキラー』『ターミネーター』に続く出演。ニュートを演じたキャリー・ヘンは、英国でたまたま見つけた娘だそうです。演技の経験は全くないとの事ですが、彼女の天才的演技によって、全くどれだけのファンがニュートに感情移入したかしれません。

 会社の担当者で、利益のために人命も犠牲にしかねないバークは、元コメディアンのポール・ライザーが演じています。『ダイナー』や『ビバリーヒルズ・コップ』など、コミカルな性質を生かした役が多いですが、一見親切で、当初は味方にも見える本作のキャラクターにはぴったり。

 ジェネット・ゴールドスタイン演じる女性上等兵ヴァスクェスは、多くのファンが「印象的」とコメントしています。筋骨隆々で色黒、短髪、バンダナを巻いて巨大な銃火器を構え、役立たずの上官と共に爆死する男勝りのキャラクターは、『アビス』のワン・ナイトや『アバター』のトルーディに通じるもの。ただ、後年製作されたメイキング映像では色白長髪のマダムになっていて、あまりのルックスの違いに彼女だと分かりませんでした。『T2』『タイタニック』にも出演しています。

* アカデミー賞

 ◎受賞/音響効果編集賞、視覚効果賞

 ◎ノミネート/主演女優賞(シガーニー・ウィーヴァー)、美術賞、編集賞、作曲賞、音響賞

 

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