ジェームズ・キャメロン

James Cameron

* プロフィール

 1954年8月16日、カナダ、オンタリオ生まれ。少年時代からSFとコミックスの熱狂的ファンで、特に美術に才能を発揮。17歳でカリフォルニアに移り、ジュニア・カレッジで海洋生物学を専攻。ジャック・クストーの深海映画を見て海に強く惹かれ、スキューバ・ダイビングに凝って海洋学者を志望する。フラートン大学で物理学を専攻。

 スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』に影響を受けて製作した16ミリの短編SF“Xenogenesis”がきっかけで、ロジャー・コーマンのニュー・ワールド・ピクチャーズに入社。『宇宙の七人』の模型製作など、様々な作品に関わる。82年、低予算映画『殺人魚フライングキラー』で監督デビュー。その後、2年を費やして執筆した『ターミネーター』のシナリオが認められ、興行的にも大成功を収める。続いて『エイリアン2』の監督に抜擢され、『アビス』『ターミネーター2』と話題作を連発。

 1993年、特撮のみならずマルチメディアや有線メディアのコンテンツも手掛けるデジタル・ドメイン社を設立。視覚効果の分野でも業界を大きくリードする存在となった。翌94年には、製作会社ライトストーム・エンターティメントを設立。第1回作品『トゥルー・ライズ』を成功に導いたが、続く『タイタニック』は映画史に燦然と輝く大ヒット作となり、キャメロン初のアカデミー賞受賞作となった。以後、12年間の沈黙を経て、新生3Dシステムの話題作『アバター』で監督復帰。

* 監督作品リスト (作品名をクリックすると詳しい情報がご覧になれます。)

1981年 『殺人魚フライングキラー』 

1984年 『ターミネーター』     

1986年 『エイリアン2』      

989年 『アビス』        

1991年 『ターミネーター2』    

1994年 『トゥルーライズ』 

1996年 『T2 3-D バトル・アクロス・タイム』(共同監督作、アトラクション) 

1997年 『タイタニック』  

2003年 『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』(I-MAX、ドキュメンタリー)

2005年 『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』(共同監督作、I-MAX、ドキュメンタリー)

2009年 『アバター』     

2022年 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』  開通予定

* スタッフ/キャスト

ジェームズ・キャメロンの映画を支えるスタッフたち 

ジェームズ・キャメロンの映画を支えるキャストたち

* 概観

 ジェームズ・キャメロンに対して、皆さんはどういうイメージをお持ちでしょうか。『タイタニック』で彼を知った人と、デビュー当時から彼の映画を観てきた人では、恐らくイメージが全く違うのではないでしょうか。多くのファンにとって、彼はまず『ターミネーター』の監督で、銃器やハードウェアにこだわるオタク系の監督で、常に最新のSFX技術を使う、テクノロジーに明るい監督として認識されてきた事と思います。

 注目したいのは、彼が常に脚本を自分で執筆している事。原作物も『トゥルーライズ』一作しか撮っていません。つまり、アクション好きのハードな映像派というイメージに似合わず、意外に作家性の強い映画監督である訳です。凝った世界感が描き込まれ、ディティールにこだわり抜いた彼のシナリオは、業界屈指のユニークなもので、アメリカや日本のコミック(彼は大友克洋&押井守オタクです)、SF小説など様々な影響こそ感じさせるものの、出来上がった映画は、他の監督の作品とあまり似ていません。

 元々、数あるB級映画の中で彼の作品が注目されてきたのは、優れた脚本執筆の才能に加え、銃器やハードウェアに対する徹底したこだわりによってでした。『ターミネーター』には、ガンマニア垂涎の銃器が当たり前のように次々登場します。次作『エイリアン2』以降も、実在の銃器を改造したマニアックな小道具や、一流デザイナーを擁したハードウェアのデザインが、こういった世界に目がない男子達から熱い視線を浴びました。更に、執拗なチェイス・シーンや、ハードなアクションが作品の硬派な一面を印象付けます。加えて『アビス』以降、ドキュメンタリー作品も含めて大々的に展開する海洋趣味も、彼のイメージの一端を担ってきました。

 しかし、『エイリアン2』『アビス』『ターミネーター2』と、劇場公開版で削除されたシーンを復活させた完全版、特別編が発表されるにつれ、登場人物の背景やドラマにいかに大きな膨らみがあったかが明らかになりました。正に彼は、完全版というものに市民権を持たせた最初の映画監督の一人であり、作品によって善し悪しはあるとはいえ、業界にもディレクターズ・カットの慣習が定着しました。実際、キャメロンの作品は、劇場公開版と完全版で印象が大きく異なります。それと、彼のもう一つの功績は、続編はヒットしないという80年代当時の常識を覆した事。『エイリアン2』は観客を熱狂させ、『ターミネーター2』は低予算映画の前作を遥かに凌駕する完成度で注目を集めました。シガーニー・ウィーヴァーのアカデミー主演女優賞ノミネートも、SF/ホラーの分野では異例の快挙として、当時話題を呼びました。

 彼の映画では、印象的な女性、特に、自分では気づいていなかった強さを発見して、徐々に変貌を遂げてゆく女性がよく登場します。『ターミネーター』のサラと『タイタニック』のローズ、『トゥルーライズ』のヘレンはその代表格だし、『エイリアン2』のリプリーもその延長線上にあります。『アビス』のリンジーは一見逆に見えますが、偽りの強さで武装した自分でなく、本当の自分を発見してゆくという意味で、やはり“成長するキャラクター”です。それが、例えばリドリー・スコット監督の『G.I.ジェーン』みたいに、性を超越してサイボーグみたいになってゆくのではなく、あくまで女性らしさを保持したまま内面的に強くなってゆく所に、キャメロン自身が女性に求める理想像が如実に表れているのかもしれません。

 又、多くのキャメロン作品は、アメリカ国家が抱える問題をさりげなく背景に忍ばせています。『ターミネーター』と『アビス』の背景には明らかに核戦争の脅威があり、『トゥルーライズ』もコメディとはいえ核兵器とテロリズムを扱っています。『エイリアン2』で描かれる戦争は、大規模な宇宙戦争ではなく、ベトナム戦争のような地上戦であり、戦争孤児のメタファーみたいな少女まで登場します。

 ジェームズ・キャメロンとは、どんな人物なのでしょう。悪く見る人にとっては、短気で癇癪持ち、相手構わず罵倒しまくる完全主義者。一方、彼を尊敬する人は「あれほど情熱をもって仕事に打ち込む人間を見た事がない」と言います。「彼は、自分が出来ない事や、やらない事を他人にやれと言った事は一度もない」とも。要するに、自分と同じくらい情熱をもって仕事に臨む事を周囲にも求めているだけなのです。しかし、時に命がけで撮影を敢行し、一日中働き続ける事も厭わない彼の姿勢を周囲にも求めるのがいかに困難かも想像がつきます。口の悪さも手伝って他人との衝突は絶えず、彼の盟友でもある特殊効果の天才スタン・ウィンストンによれば「キャメロンの現場は常に緊迫している」との事。ちなみに本人は、本気で怒っているのではなく、仕事のスピードアップを図るために敢えて喚いているだけ、と語っています。

 ロジャー・コーマン曰く、「使いっ走りの頃から、一番よく働いているのがアイツだった」との事。ジョン・カーペンター監督の『ニューヨーク1997』には摩天楼のCG画面が出て来ます。80年代初頭のCGは、低予算映画には手が出ないほど高価なものでしたが、特撮担当だったキャメロンは、何とダンボールを黒く塗って蛍光塗料で縁取りする事でいとも簡単に解決したといいます。様々な職種を経験し、低予算映画の現場から出発した彼は、ほとんど何でも自分で出来るのでそれ自体スタッフの脅威となっていますが、特に絵に関しては、周囲から「画家になればいいのに」と言われるほど上手いとの事。

 キャメロンのように、技術的な知識を豊富に備え、映像へのこだわりが強い監督は、スタッフ、特に撮影監督と衝突する傾向があります。『ターミネーター』1、2の撮影を担当したアダム・グリーンバーグは、自分がいかに辛い仕打ちを受けたかをライターに語り、『タイタニック』のラッセル・カーペンターも、『トゥルーライズ』の数ヶ月後にもう一度キャメロンと仕事をしたいと思うかと訊かれ、「撮影直後だったら断じてノーと答えていただろう」と返答しています。『エイリアン2』と『タイタニック』では、撮影監督の交代劇が起きました。詳しくは各作品のページで言及していますが、どちらも監督との意見の衝突が原因です。

 彼は、俳優に対しても厳格です。ステディカム・キャメラのオペレーターに、ジミー・ムーロという名手がいます。キャメロンが彼にだけは優しいので古参のスタッフがみな驚くそうですが、その彼が初めてキャメロン作品に参加したのが『アビス』の撮影中でした。セットを訪れたムーロは、主演俳優のエド・ハリスがセメント張りの床で仮眠しているのを見て、とんでもない現場に来てしまったと驚愕したといいます。シュワルツェネッガーのようなスターでさえ、『トゥルーライズ』の撮影で高所に吊られている時に「トイレが我慢できない」と申し出たら、「撮影の方が大事だ」と却下されてしまったとの事。

 ちなみに、実に華々しいのが彼の結婚歴。『ターミネーター』『アビス』の辣腕プロデューサー、ゲイル・アン・ハードを筆頭に、キャメロンがプロデュースした『ハートブルー』『ストレンジ・デイズ』の監督キャスリン・ビグロー、『ターミネーター』の主演女優リンダ・ハミルトン、『タイタニック』でローズの孫娘を演じたスージー・エイミス。彼女達もやはり、キャメロン作品で描かれる女性像に近い存在だったんでしょうかね。

《参考文献・関連書籍》

 下記はどれも『タイタニック』公開直後に出版されたものです(ほとんど絶版なのが残念)。特にポーラ・パリージの『タイタニック/ジェームズ・キャメロンの世界』は、映画製作の裏側や、キャメロンの破格の人物像に興味がある人にとっては、無類に面白い本なのでお薦めです。フィルムメーカーズ4は、関連人物や作品データが充実している他、キャメロン関連で何かと名前を見かける石上三登志、高橋良平に加え、作品ごとに金子修介、原田眞人、塚本晋也、とりみき、萩尾望都と、映画監督・漫画家を交えて中身の濃い対談を行っていて、内容的にも充実。『豪快!映画学』の小峯隆生は元プレイボーイ誌のライターで、ユニークな活動で知られています。『T2』や『トゥルーライズ』に出演しているほどですし、キャメロン自身だけでなくスタッフ、キャストのインタビューもあるので、ファンには外せない本でしょう。『ジェームズ・キャメロンのタイタニック』は、カラー写真満載で撮影の裏側に密着した大判のメイキング本。

『フィルムメーカーズ4 ジェームズ・キャメロン』 責任編集:石上三登志 (キネマ旬報社)

『タイタニック ジェームズ・キャメロンの世界』 ポーラ・パリージ 訳:鈴木玲子 (ソニー・マガジンズ)

『豪快!映画学 ジェームズ・キャメロン talks about films』 小峯隆生 (集英社)

『ジェームズ・キャメロン 映画と人生』 クリストファー・ハード 訳:比嘉世津子 (愛育社)

『ジェームズ・キャメロンのタイタニック』 エド・W・マーシュ 訳:名木宏之 (竹書房)

『ジェームズ・キャメロン 世界の終わりから未来を見つめる男』 レベッカ・キーガン 訳:吉田俊太郎 (フィルムアート社)

各作品の劇場パンフレット、『プレミア』日本版・『DVDでーた』等・各種雑誌

 

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