大作『タイタニック』から4年、キャメロンは大西洋に沈むタイタニック号の姿をキャメラに収めるため、ドキュメンタリー映画に着手しました。自ら投資したハイヴィジョンの3D撮影機材“リアリティー・キャメラ・システム”を用い、弟マイクが設計に関わった潜水艇を始めとする最新機器で撮影に挑むキャメロン。『タイタニック』を始め、数々のキャメロン作品に出演してきた俳優ビル・パクストンが、微生物学者や画家、歴史家、研究家など、様々な分野の専門家と共に、深海への旅に挑戦します。 国営放送などのドキュメンタリー番組と違って、様々な映像素材を盛り込んでいますし、CGなども合成したりして、実にエキサイティングなドキュメントに仕上げている所、さすがは映画監督キャメロンの作品だけあります。映画『タイタニック』にも本物の船の映像が入っていましたが、本作は様々な角度から捉えた外観や、内部の様子などもたっぷりと紹介。 本作のユニークな特徴は、『タイタニック』の出演者でもある俳優ビル・パクストンの参加でしょうか。キャメロンの古い友人だけあっていかにも打ち解けた様子ですが、海の世界には全く素人の彼が、怖い怖いと言いながらも潜水艇に乗り込み、巨大なタイタニックの姿に次第に魅せられてゆく過程を見ていると、不思議とこちらも同じような気持ちになってきます。 映画は、パクストンや他の参加者達による日記風ナレーションで進行し、彼らの様子とタイタニック号の映像を交互に提示。実際のタイタニック号の映像だけでは何だか分かりにくい箇所も、CGで航行当時の様子をうっすらと重ねる事で、在りし日の豪華客船の姿が蘇ってきて圧巻です。その映像を観ていると、タイタニックの悲劇が絵空事でなく、つい最近新聞に載ったばかりの事故と変わらぬリアリティを持って目前に立ち現れるような印象があります。 船内では、帽子や食器、車や備品がまだ形をとどめていたり、誰かが水差しの横にコップを置いたのがそのまま残っていたりして、生活感が漂ってくる場所すら存在します。ナレーションにもありますが、一流の職人達の手仕事である飾り窓や家具の装飾など、本来3650メートルもの海底にあるべきでないものが永遠に沈んでいるというのは何とも哀切な光景で、見ているだけで胸を打たれます。 一方、ケーブルが切れて船内に取り残されたROVキャメラの救出場面を、なぜか後半のクライマックスに配置。これはユーモラスなタッチで楽しいものですが、私が観たのはDVDデラックス版で、I-MAXシアターでの公開版より30分ほど長いヴァージョンなので、構成はかなり違うのでしょう。しかしこれは、3DのI-MAXで観たら相当な臨場感ではないかと思います。実際に自分が潜水艇に乗って、タイタニック号の残骸を見上げているような感じかもしれません。 DVD特典にはメイキング映像も付いていますが、コミカルな演出が楽しく、本編に入れても良かったような。キャメロンの妻で女優のスージー・エイミスが、子供を抱いて夫を見送る場面もあります。唯一、撮影中に船上でニューヨーク同時多発テロのニュースを受ける箇所は、各自の反応や撮影中断の様子など、深く心に残ります。 |