自身の出世作『ターミネーター』の続編。ほぼ同じキャスト、スタッフを集め、そこに新たな人材を投入する形でパワーアップを計った体裁です。脚本がよく出来ていて、続編としての価値と単体映画の面白さをうまく両立させていますが、ストーリーが前作より一段階複雑になったため、前作の直線的なスリルはやや弱まりました。特に、未来の核戦争のきっかけを作る科学者ダイソンのエピソードが入った事で、殺人機械が執拗に追いかけてくる恐ろしさは減退した印象があります。 当時大きな話題を呼んだのは特殊効果。正に前作の雪辱戦みたいな未来戦争の場面は、B級の匂いをちゃんと残しつつも全てのクォリティが上がっていて、ファンへの目配せも効いています。本作の新機軸は、ロバート・パトリックが演じる液体金属製のターミネーター。液体化して様々な物に姿を変える金属の描写に、CGのモーフィング技術が使用されました。当時は私も、これらの映像に大いに驚いた事を憶えていますが、今観ると、卓越した脚本構成により感心します。 押しつぶされる骸骨のアップから、人間対機械の未来戦争の描写、現代の場面に戻って、未来から全裸の状態で転送されてくる二体のターミネーター、チンピラから衣服を奪い取る暴力描写と、あからさまに第1作のパターンを踏襲してゆくかと思いきや、途中で観客の予想を裏切り、実はシュワルツェネッガー演じるターミネーターはジョンを守るために送られた前作とは別の個体で、最新型のターミネーター、T-1000の方が、ジョンを抹殺するためにやってきた殺人機械だと分かる。 この辺り、キャメロンの脚本演出も確信犯的に前作を踏襲しつつ、途中で覆そうという意図がよく表れています。旧式ターミネーターが暴力的で、無表情に任務を進めてゆくのに対し、T-1000の方は動作がスマートで容姿も端正、警官に扮して一般人と口をきく時も、魅力的なほど柔らかい表情を見せたりします。実は、こちらの方が冷酷無比の殺人マシンだと分かるのですが、最初はそう見えないように描かれているわけです。ちなみに、ラストのクライマックスが鉄工場で展開する所も律儀に第1作をなぞりながら、今度はターミネーター自らの意志で自己破壊に臨むという、心憎いほどの価値反転を見せています。 主人公がいきなり銃殺されそうになり、最初は謎の殺し屋と思われた男が実は守護者であったという展開も1作目と同じ。真実を知る登場人物が警察に精神異常を疑われ、そこへターミネーターが現れて大量殺戮を始める、混乱に乗じて皆で脱出する、という所までもう全く1作目と同じで、ただ違うのは、追われるのがサラの息子ジョンで、彼を守るのが前作で追う側だったターミネーターで、施設に拘束されているのがサラであるという、まるでフルーツバスケットのように各人物の立場を総入れ替えしたような、極めてユニークな続編映画だと言えるでしょう。 ちなみに本作も15分長い特別編が製作され、それによってドラマ性がさらに豊かになりました。カットされていた場面の中には、カイルが生前の姿で現れるサラの幻想シーンもあります。演じているマイケル・ビーン自身がコメントしているように、確かに無くても良いシーンです。ターミネーターのチップを叩き潰そうとするサラとジョンが対立する場面も復活して、このシーン全体が長く、起伏のあるものに変わりました。しかし全体として、1作目のファンにとっては楽しい作品ですが、映画としてのまとまりや焦点の明確さでは1作目に敵わない、というのが私の印象です。 |