ターミネーター2 

Terminator 2 : Judgment Day 

1991年、アメリカ (137分)

1993年、特別編ビデオ・リリース (152分)

 監督:ジェームズ・キャメロン

 製作総指揮ゲイル・アン・ハード 、マリオ・カサール

 製作:ジェームズ・キャメロン

 共同製作:B・J・ラック、ステファニー・オースティン

 脚本:ジェームズ・キャメロン、ウィリアム・ウィッシャー

 撮影監督 : アダム・グリーンバーグ,A.S.C

 プロダクション・デザイナー:ジョセフ・ネメック3世

 編集:マーク・ゴールドブラット, A.C.E.、コンラッド・バフ、リチャード・A・ハリス

 音楽:ブラッド・フィーデル

 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー  リンダ・ハミルトン

    エドワード・ファーロング        ロバート・パトリック

    アール・ボーエン            ジョー・モート

    ジェネット・ゴールドスタイン

* ストーリー 

 1994年、ロスアンジェルス。夜の街に、時間を置いて二人の裸の男が、電光を伴って忽然と姿を現す。どちらも、養父母の家で暮らす10歳の少年ジョン・コナーを探し出そうとするが、彼の母親サラは、サイバーダイン社のコンピューター工場を爆破しようとして逮捕され、精神病棟に入れられていた。ショッピングモールで突然銃を出した警官に殺されそうになったジョンは、彼を守るために未来の彼自身が送ったターミネーターに救われる。襲ってきた警官は、未来の戦争でゲリラ軍を組織するジョンを抹殺するために送られた、T-1000という最新型ターミネーターだった。事情を知ったジョンは、サラを救い出すために精神病院へ向かうが、T-1000もジョンを追って病院に姿を現す。

* コメント  *ネタバレ注意!

 自身の出世作『ターミネーター』の続編。ほぼ同じキャスト、スタッフを集め、そこに新たな人材を投入する形でパワーアップを計った体裁です。脚本がよく出来ていて、続編としての価値と単体映画の面白さをうまく両立させていますが、ストーリーが前作より一段階複雑になったため、前作の直線的なスリルはやや弱まりました。特に、未来の核戦争のきっかけを作る科学者ダイソンのエピソードが入った事で、殺人機械が執拗に追いかけてくる恐ろしさは減退した印象があります。

 当時大きな話題を呼んだのは特殊効果。正に前作の雪辱戦みたいな未来戦争の場面は、B級の匂いをちゃんと残しつつも全てのクォリティが上がっていて、ファンへの目配せも効いています。本作の新機軸は、ロバート・パトリックが演じる液体金属製のターミネーター。液体化して様々な物に姿を変える金属の描写に、CGのモーフィング技術が使用されました。当時は私も、これらの映像に大いに驚いた事を憶えていますが、今観ると、卓越した脚本構成により感心します。

 押しつぶされる骸骨のアップから、人間対機械の未来戦争の描写、現代の場面に戻って、未来から全裸の状態で転送されてくる二体のターミネーター、チンピラから衣服を奪い取る暴力描写と、あからさまに第1作のパターンを踏襲してゆくかと思いきや、途中で観客の予想を裏切り、実はシュワルツェネッガー演じるターミネーターはジョンを守るために送られた前作とは別の個体で、最新型のターミネーター、T-1000の方が、ジョンを抹殺するためにやってきた殺人機械だと分かる。

 この辺り、キャメロンの脚本演出も確信犯的に前作を踏襲しつつ、途中で覆そうという意図がよく表れています。旧式ターミネーターが暴力的で、無表情に任務を進めてゆくのに対し、T-1000の方は動作がスマートで容姿も端正、警官に扮して一般人と口をきく時も、魅力的なほど柔らかい表情を見せたりします。実は、こちらの方が冷酷無比の殺人マシンだと分かるのですが、最初はそう見えないように描かれているわけです。ちなみに、ラストのクライマックスが鉄工場で展開する所も律儀に第1作をなぞりながら、今度はターミネーター自らの意志で自己破壊に臨むという、心憎いほどの価値反転を見せています。

 主人公がいきなり銃殺されそうになり、最初は謎の殺し屋と思われた男が実は守護者であったという展開も1作目と同じ。真実を知る登場人物が警察に精神異常を疑われ、そこへターミネーターが現れて大量殺戮を始める、混乱に乗じて皆で脱出する、という所までもう全く1作目と同じで、ただ違うのは、追われるのがサラの息子ジョンで、彼を守るのが前作で追う側だったターミネーターで、施設に拘束されているのがサラであるという、まるでフルーツバスケットのように各人物の立場を総入れ替えしたような、極めてユニークな続編映画だと言えるでしょう。

 ちなみに本作も15分長い特別編が製作され、それによってドラマ性がさらに豊かになりました。カットされていた場面の中には、カイルが生前の姿で現れるサラの幻想シーンもあります。演じているマイケル・ビーン自身がコメントしているように、確かに無くても良いシーンです。ターミネーターのチップを叩き潰そうとするサラとジョンが対立する場面も復活して、このシーン全体が長く、起伏のあるものに変わりました。しかし全体として、1作目のファンにとっては楽しい作品ですが、映画としてのまとまりや焦点の明確さでは1作目に敵わない、というのが私の印象です。

* スタッフ

 1作目を製作したヘムデイルの倒産を受け、本作の資金提供に名乗り出たのがカロルコという会社でした。レバノン人のマリオ・カサールが率いる、男っぽいハード・アクション映画を次々に製作して急成長を遂げた会社です。しかしカロルコは、業界でも類をみない大バクチを打つはめになり、結果的に倒産してしまいました。何しろ、当初8500万ドルでスタートした予算が、最終的には1億ドル近くに達したのです(当時のハリウッド映画の相場は3000万ドル)。映画は大ヒットしましたが、カロルコには、収益が入ってくるまでに巨額の資金返済を行う余力はありませんでした。

 カサールと共に製作総指揮を担当しているのは、ゲイル・アン・ハード。1作目の『ターミネーター』以来、ずっとキャメロン作品をプロデュースしてきましたが、キャメロンが自身の製作会社を立ち上げた事もあり、次作『トゥルーライズ』から彼女は参加していません。

 キャメロンと共同で脚本を執筆しているウィリアム・ウィッシャーは学生時代からの友人で、『ターミネーター』や『アビス』にちょっとした役で出演もしています。本作では、ショッピングモールのシーンで、ウィンドウから飛び出して来たターミネーターにシャッターを切りまくるカメラマンの役。原田眞人監督によると、キャメロンとウィッシャー、ランディ・フレークスの3人は、ノン・クレジットながら、ずっとチームでシナリオを書いているそうです。

 撮影監督のアダム・グリーンバーグは、1作目に引き続いての登板。前作の色彩感覚を、より完成された形で展開していて圧倒されます。プロダクション・デザイナーのジョセフ・ネメック3世は、『アビス』の美術監督を務めた人。編集の三人は、『トゥルーライズ』にも続いて参加しています。三人とも、キャメロン作品や派手なアクション映画ではよく名前を見かけるエディターだと言えるでしょう。

 ブラッド・フィーデルの音楽は、さすがに前作ほどのチープさはありませんが、やはりシンセサイザーをメインにしていて、どことなしにB級の匂いを残しています。パーカッシヴなリズムに、ほの暗くも勇壮な旋律が流れるテーマ曲は、テレビ番組やコントのパロディで一時期よく使われましたね。作中とエンド・クレジットに流れるガンズ・アンド・ローゼスの“You Could Be Mine”は、当時はたまらなくカッコ良く聞こえた曲ですが、今の耳にはどこか時代がかって聞こえて感慨深いものがあります。

 本作でも、キャメロンの盟友スタン・ウィンストンが特殊メイクとターミネーターのエフェクツを担当。大きな話題を呼んだ液体金属のCGはILMのデニス・ミューレンが統括、『アビス』のジョン・ブルーノもVFXデザインに関わるなど、過去のキャメロン作品で腕を振るった優秀なアーティストを軒並み投入。『アビス』と違って、形状を変えてゆく液体金属の描写が全編に登場する作品だけに、映画全体の成否が掛かった仕事でもありましたが、見事その年のアカデミー賞に輝きました。スコタック兄弟の4ワード・プロダクションも、核爆発シーンのミニチュアとCGを手掛けています。

* キャスト

 前作からはリンダ・ハミルトンとアーノルド・シュワルツェネッガーが参加、マイケル・ビーンが登場する幻想シーンも特別編で復活しました。ジョン・コナーを演じるエドワード・ファーロングは、中性的な顔立ちと抜群の演技力で一躍人気者になりましたが、子役スターにありがちな堕落の道を歩み、麻薬とアルコールの過剰摂取でリハビリを受けたりしました。『ターミネーター3』降板は、これが原因とされています。その後は、話題作こそ少ないながら、演技力を生かして映画出演を続けています。

 T-1000を演じるロバート・パトリックの不気味な名演技は、本作の要。猛獣のようにスマートで敏捷、は虫類のような目でジョンを追い続ける彼の容姿と芝居は忘れ難く、シュワちゃんより彼の印象の方がよほど強く残るほどですが、今観ると、意外に表情の豊かな場面もある事に気づきます。彼の俳優人生も又、ロジャー・コーマンのキャスティング・ディレクターの目に留まった事から始まっているから不思議。その後は、『パラサイト』や『スパイキッズ』など、ロバート・ロドリゲス監督作品によく出ています。

 ジョンの養母を演じるジェネット・ゴールドスタインは、『エイリアン2』の女性上等兵ヴァスクェスで強烈な印象を残した女優さんですが、その時とは全く雰囲気が違って、クレジットを確認するまで彼女だと分かりませんでした。あと、終盤でサラに化けたT-1000と本物のサラが同一画面に登場する場面がありますが、これは映像トリックではなく、リンダ・ハミルトンの双子の姉が演じています。

* アカデミー賞

 ◎受賞/音響賞、音響効果編集賞、視覚効果賞、メイクアップ賞

 ◎ノミネート/撮影賞、編集賞

 

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