テーマパーク、ユニヴァーサル・スタジオのアトラクションとして製作された、キャメロンの正式な監督作。映像自体は7分間の3D仕様で、その映像に舞台上で俳優達が繰り広げるライヴ・アクションを組み合わせています。長らくフロリダでしか見られないレアなキャメロン作品でしたが、3年後にロスアンジェルスでの公開も始まり、現在は日本でも、大阪のユニヴァーサル・スタジオ・ジャパンで公開中です。私も大阪で初めて観ました。 アトラクションとしては、非常に凝った造りです。ショー全体は、サイバーダイン社の新製品発表会という体裁をとっていて、待ち時間の間もモニターでサイバーダイン社のCMが流れています。革新的な新技術の秘密が明かされる、という訳です。最初の部屋に通されると、広報担当の女性が出て来て説明を行いますが、これはよく訓練された女優さんのパフォーマンスとなっていて、慇懃無礼に客をいじってしつこく笑いを取ります。女性が、空間のかなり高い場所に立って喋るのも、高飛車に見せるための意図的な演出だと思います。 3Dの巨大スクリーンがあるホールに入ると、サイバーダイン社のプレゼンが始まります。ただのホールではなく、ロボットが数体飾ってあったり、色々と仕掛けのある施設です。最新のT-70型ロボットは自動戦闘歩兵で、観客はレーザー砲火から目を守るために安全メガネをかけるよう指示されます。これが、3D映像を観るためのメガネ、という訳です。 そこへ、前室で仄めかされた通り、未来戦争を阻止すべくジョン&サラ・コナーが銃を乱射しながら侵入。イベントは中断され、警報が鳴り響きます。ところが、銃弾の痕が自動的に塞がってゆき、社名のロゴが溶けて液体金属のT-1000に変貌。サラ達を見つけた所で、ハーレーに乗った旧式ターミネーターが登場し、3Dマルチ映像の追跡劇が始まります。2週間のロケで撮影されたこの映像も、本編の『T2』を彷彿させるエキサイティングなもの。 映像だけでなく、劇場に様々な特殊効果も加えたショーは、映画の中に“入りたい”という現代の観客の欲望を満足させるものです。私は過去に二回観ましたが、どちらもアトラクションが終了した瞬間、会場が興奮にどよめいたのを覚えています。USJのアトラクションは、火炎から水から煙から、演出面で“やりすぎ感”の強い迫力のあるものが多いですが、本作は『バックドラフト』や『ジョーズ』等と並んで、特に刺激の強いアトラクションと感じました。 製作に当たっては、いかにもキャメロンらしく強いこだわりを発揮。オリジナルのキャストを集結させる事もその一つですが、凝ったVFXや劇場全体の仕掛けも含め、製作費は長編映画に換算すれば相当な金額に上るものになりました。キャメロン曰く「全てのテーマパークを回って、あらゆるアトラクションを見たよ。どういう風にしているのか見るためだけにね」。彼は本作を『ターミネーター』の正式な三作目だと認めていますが、ストーリー的には『T2』のラストとの整合性がないので、続編ではなく、別ヴァージョンの短編と捉えた方がいいようです。 監督の仕事は、キャメロン作品の特殊効果を一手に担ってきた二人、スタン・ウィンストン、ジョン・ブルーノと3人で分担。キャメロンは俳優の演出、ウィンストンはロボットが必要なシークエンス、ブルーノは発光弾の監督を受け持っているそうです。 |