ピーウィーの大冒険

Pee-Wee's Big Adventure

1985年、アメリカ (90分)

 監督:ティム・バートン

 製作総指揮ウィリアム・E・マッケン

 製作:ロバート・シャピロ、リチャード・ギルバート・エイブラムソン

 脚本:フィル・ハートマン、ポール・ルーベンス、マイケル・ヴァーホール

 撮影監督 : ヴィクター・J・ケンパー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:デヴィッド・L・シュナイダー

 編集:ビリー・ウェバー

 音楽:ダニー・エルフマン

 出演:ポール・ルーベンス  エリザベス・デイリー

* ストーリー 

 いつもの通りごきげんな朝を迎えたピーウィー。お気に入りの自転車で買い物に出かけた所、細心の注意を払って駐車しておいた自転車が何者かに盗み去られていた。インチキ占い師の予言を真に受けたピーウィーは、テキサスへ自転車を探す旅に出る。

* コメント    

 当時人気者だったピーウィー・ハーマンの初主演映画に、運良く抜擢されたティム・バートン。これが初の長編劇映画となりました。バートンは本作の成功をきっかけに次々とヒット作を手掛け、ハリウッドに確固たる地位を占めてゆきましたが、ピーウィーことポール・ルーベンスは91年、フロリダのポルノ映画館で猥褻行為に及んで逮捕。このスキャンダルによって彼の人気は失墜しました。しかしバートンは、事件の直後であるにも関わらず、『バットマン・リターンズ』に彼をカメオ出演させ、続く『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』にも彼を声優・歌手としてキャスティングし、恩返しを果たしました。

 本作は、過去のバートン作品に繋がる人材はそれほど参加していませんが、デビュー作とは思えないほど明瞭に個性の刻印が押された、強烈な作品。盗まれた自転車を取り返すという単純なプロットで一貫するものの、舞台や登場人物がどんどん移り変わってロード・ムーヴィーの雰囲気もあります。もっとも、犯人が早々に明らかになるなど、ストーリーにはあまり重点を置かず、あくまで短いコントの積み重ねで長編に仕上げた趣。

 ピーウィーのアドリブ的なパフォーマンスは、小気味良いカッティングでスムーズに繋がれていて、見事な編集センス。特にクライマックス、ワーナー撮影所でのチェイス・シーンは、あの手この手を使って画面を賑やかに盛り上げていて、楽しい限りです。途中、日本人がゴジラとキングギドラの戦いを撮影しているなど、バートンらしいこだわりも随所に入っています(開巻早々の場面でも、ピーウィーの部屋にゴジラの模型が飾ってあります)。

 役者の芝居から美術、編集、音楽、特殊効果に至るまで、早くもバートン特有のタッチで全編が彩られている本作ですが、恐竜のストップモーション・アニメや、人の顔がモンスターのように変貌するカット(これは『ビートルジュース』や『スリーピー・ホロウ』にもあります)を既に挿入している所、ファンなら大いに注目したい所でしょう。

 ピーウィーの芝居が思いのほか多彩なニュアンスに富んでいて、時に男前な一面も見せたりと、あまりこのキャラクターに詳しくない私には驚かされる場面も多いです。ちなみに、バイカー達の酒場でダンスを踊る場面では、志村けんの“変なオジサン”と同じ振付けで踊っていますが、これは志村けんのオリジナルではなく、アメリカのオールディーズか何かにルーツがあるという事なんでしょうか(それともピーウィーのオリジナル?)。

* スタッフ

 低予算丸出しのスタッフ、キャストの中で、特に目を惹くのは、やはり音楽のダニー・エルフマンでしょう。彼は、オインゴ・ボインゴという異色バンドのヴォーカリストでしたが、バンドのファンだったバートンに引き抜かれました。もっとも彼は、元々映画音楽に興味があったそうで、とても初仕事とは思えない仕上がり。とにかくほぼ全編に渡って音楽が鳴り続ける映画なので、不慣れな作曲家には大変な作業だったと思われますが、以後も饒舌な音楽を書きまくり、ハリウッドを代表する売れっ子作曲家となりました。

 エルフマンは本作の音楽に関して、敬愛するバーナード・ハーマンとニーノ・ロータの影響を指摘しています。それぞれヒッチコック、フェリーニとコンビを組んだ巨匠で、ハーマンはともかく、ニーノ・ロータの影響は聴いてすぐに分かるくらいはっきりと出ています。ちなみに、バートンとエルフマンの関係も、ヒッチコック&ハーマンやフェリーニ&ロータに負けず劣らず密接なものへと発展し、喧嘩別れの時期の『エド・ウッド』と、ソンドハイム作曲のミュージカル『スウィーニー・トッド』を除く全ての作品でコンビを組んでいます。

 視覚効果部門では、ディズニー時代のバートンの同僚で、後にバートン作品のプロダクション・デザイナーとなるリック・ヘインリックスが、アニメーテッド・エフェクツ・スーパーヴァイザーという肩書きでクレジットされています。例のコマ撮り恐竜は、彼の作品かもしれませんね。

 

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