当時人気者だったピーウィー・ハーマンの初主演映画に、運良く抜擢されたティム・バートン。これが初の長編劇映画となりました。バートンは本作の成功をきっかけに次々とヒット作を手掛け、ハリウッドに確固たる地位を占めてゆきましたが、ピーウィーことポール・ルーベンスは91年、フロリダのポルノ映画館で猥褻行為に及んで逮捕。このスキャンダルによって彼の人気は失墜しました。しかしバートンは、事件の直後であるにも関わらず、『バットマン・リターンズ』に彼をカメオ出演させ、続く『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』にも彼を声優・歌手としてキャスティングし、恩返しを果たしました。 本作は、過去のバートン作品に繋がる人材はそれほど参加していませんが、デビュー作とは思えないほど明瞭に個性の刻印が押された、強烈な作品。盗まれた自転車を取り返すという単純なプロットで一貫するものの、舞台や登場人物がどんどん移り変わってロード・ムーヴィーの雰囲気もあります。もっとも、犯人が早々に明らかになるなど、ストーリーにはあまり重点を置かず、あくまで短いコントの積み重ねで長編に仕上げた趣。 ピーウィーのアドリブ的なパフォーマンスは、小気味良いカッティングでスムーズに繋がれていて、見事な編集センス。特にクライマックス、ワーナー撮影所でのチェイス・シーンは、あの手この手を使って画面を賑やかに盛り上げていて、楽しい限りです。途中、日本人がゴジラとキングギドラの戦いを撮影しているなど、バートンらしいこだわりも随所に入っています(開巻早々の場面でも、ピーウィーの部屋にゴジラの模型が飾ってあります)。 役者の芝居から美術、編集、音楽、特殊効果に至るまで、早くもバートン特有のタッチで全編が彩られている本作ですが、恐竜のストップモーション・アニメや、人の顔がモンスターのように変貌するカット(これは『ビートルジュース』や『スリーピー・ホロウ』にもあります)を既に挿入している所、ファンなら大いに注目したい所でしょう。 ピーウィーの芝居が思いのほか多彩なニュアンスに富んでいて、時に男前な一面も見せたりと、あまりこのキャラクターに詳しくない私には驚かされる場面も多いです。ちなみに、バイカー達の酒場でダンスを踊る場面では、志村けんの“変なオジサン”と同じ振付けで踊っていますが、これは志村けんのオリジナルではなく、アメリカのオールディーズか何かにルーツがあるという事なんでしょうか(それともピーウィーのオリジナル?)。 |