ピーウィーの大冒険

Pee-Wee's Big Adventure

1985年、アメリカ (90分)

 監督:ティム・バートン

 製作総指揮ウィリアム・E・マッケン

 製作:ロバート・シャピロ、リチャード・ギルバート・エイブラムソン

 脚本:フィル・ハートマン、ポール・ルーベンス、マイケル・ヴァーホール

 撮影監督 : ヴィクター・J・ケンパー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:デヴィッド・L・シュナイダー

 編集:ビリー・ウェバー

 音楽:ダニー・エルフマン

 出演:ポール・ルーベンス  エリザベス・デイリー

* ストーリー 

 いつもの通りごきげんな朝を迎えたピーウィー。お気に入りの自転車で買い物に出かけた所、細心の注意を払って駐車しておいた自転車が何者かに盗み去られていた。インチキ占い師の予言を真に受けたピーウィーは、テキサスへ自転車を探す旅に出る。

* コメント    

 当時人気者だったピーウィー・ハーマンの初主演映画に運良く抜擢され、これがバートン初の長編劇映画となった。過去のバートン作品に繋がる人材はそれほど参加していないが、デビュー作とは思えないほど明瞭に個性の刻印が押された、強烈な作品である。

 盗まれた自転車を取り返すというプロットは単純だが、舞台や登場人物がどんどん移り変わってロード・ムーヴィーの雰囲気。もっとも、犯人が早々に明らかになるなど、ストーリーにはあまり重点を置かず、あくまで短いコントの積み重ねを長編に仕上げたような体裁。

 ピーウィーのアドリブ的なパフォーマンスは、小気味良いカッティングでスムーズに繋がれていて、編集のセンスが見事。特にクライマックスのワーナー撮影所でのチェイス・シーンは、あの手この手を使って画面を賑やかに盛り上げていて楽しい。途中、日本人がゴジラとキングギドラの戦いを撮影しているなど、バートンらしいこだわりも随所に入っている(開巻早々、ピーウィーの部屋にゴジラの模型が飾ってある)。

 役者の芝居から美術、編集、音楽、特殊効果に至るまで、早くもバートン特有のタッチで全編が彩られ、恐竜のストップ・モーション・アニメや、人の顔がモンスターのように変貌するカット(これは『ビートルジュース』や『スリーピー・ホロウ』にもある)なども既に挿入している。

 ピーウィーの芝居が思いのほか多彩なニュアンスに富んでいて、時に男前な一面も見せたりと、あまりこのキャラクターに詳しくない私には驚かされる場面も多い。ちなみに、バイカー達の酒場でダンスを踊る場面は志村けんの“変なオジサン”と同じ振付だが、これは志村けんのオリジナルではなく、アメリカのオールディーズか何かにルーツがあるのだろうか(それともピーウィーのオリジナル?)。

 ピーウィーことポール・ルーベンスは91年、フロリダのポルノ映画館で猥褻行為に及んで逮捕。このスキャンダルによって彼の人気は失墜した。しかしバートンは事件の直後であるにも関わらず、『バットマン・リターンズ』に彼をカメオ出演させ、続く『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』にも彼を声優・歌手としてキャスティングし、恩返しを果たした。

* スタッフ

 スタッフ、キャストの中で特に目を惹くのは、音楽のダニー・エルフマン。彼は多芸多才を売りにする大人数の異色バンド、オインゴ・ボインゴのフロントマンで、バンドのファンだったバートンが声をかけた。エルフマンは元々映画音楽に興味があったそうで、とても初仕事とは思えない仕上がり。ほぼ全編に渡って音楽が鳴り続ける映画なので、不慣れな作曲家には大変な作業だったと思われるが、以後も饒舌な音楽を書きまくり、ハリウッドを代表する売れっ子作曲家となった。

 エルフマンは本作の音楽に関して、敬愛するバーナード・ハーマンとニーノ・ロータの影響を指摘している。それぞれヒッチコック、フェリーニとコンビを組んだ巨匠で、ハーマンはともかく、ニーノ・ロータの影響は聴いてすぐに分かるくらいはっきりと出ている。ちなみにバートンとエルフマンの関係も、ヒッチコックとハーマン、フェリーニとロータに負けず劣らず密接なものへと発展し、喧嘩別れの時期を除くほとんど全ての作品でコンビを組んでいる。

 またルーベンスと共に、TV『サタデー・ナイト・ライヴ』出身で『サボテン・ブラザース』『スモール・ソルジャーズ』等に出演しているコメディアン/俳優のフィル・ハートマンが脚本を執筆。視覚効果部門では、ディズニー時代のバートンの同僚で、後にバートン作品のプロダクション・デザイナーとなるリック・ヘインリックスが、アニメーテッド・エフェクツ・スーパーヴァイザーという肩書きでクレジットされている。例のコマ撮り恐竜は、彼の作品かもしれない。

 

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