日本で公開されたものとしては、最初のバートン作品。限りなくコメディに振り切ったホラーだが、今の視点でみればジャンル性よりも、バートン作品という一つのジャンルに括ってしまいたい独特の映画である。特に美術デザインにはバートン特有のタッチが濃厚に表れているが、作品は観客にも大いに受けてヒットした。タイトルは登場キャラクター“ベテルギウス”の英語読み。 バートンの初期作品に対してよく言われるように、物語は破綻しているというか、筋の通ったストーリー・ラインは見当たらない。新米の幽霊夫婦が新しい住人をいかにして追い出すかが大まかなプロットだが、これにゴス少女リディア、タイトル・ロールのベテルギウス、霊界の住人達などが脈絡なく出入りして、何となくオチに向かう。 視覚的なインパクトは強烈だが、物語は何度観ても印象が希薄(バートン作品にはよくある事だ)。唯一、クライマックスでどことなく悲哀が漂ってくる幽霊夫婦とリディアの関係性には、こういったコメディには珍しくナイーヴな優しさが感じられる。一方、夫婦が事故で命を落とす場面は小犬を使ったユーモラスな展開で、この「悲惨とカワイイの同居」は後のバートン作品にも通底するセンス。 ハリー・ベラフォンテの“バナナボート”に合わせて全員がむりやり踊らされる所や、宙吊りのリディアが妙な動きで踊る場面など、ミュージカル風のシークエンスはあまりに唐突だが、その奇抜さも作品にパワーを与えている。美術デザインと特殊効果はさすがのセンスで、合成映像や特殊メイクの他、ストップ・モーション・アニメも多用していて楽しい。 映像的にも、原色を多用したカラフルなルックを採用している他、怪物が暴れ回るシーンはドイツ表現主義を彷彿させるスタイル。オープニング・タイトルも秀逸で、町の空撮がいつの間にかミニチュアになっていて、最後にクモが侵入してくる所、ダニー・エルフマンの冴えたテーマ曲と相まって見事な掴みになっている。 残念なのは、これは作品のせいではないが、ベテルギウスのマシンガン・トークの日本語字幕に妙なダジャレや関西弁がうるさく入ってくるのと、霊界のキャラクターに逐一くだらない名前を付けて字幕を出すのは鑑賞の邪魔と感じる(これは確かVHS時代からだが、ブルーレイにもそのまま流用されている)。吹替のアドバイザーが所ジョージとなっているが、字幕の方もそうなのだろうか。とにかく、言い回しが気になって肝心の内容が頭に入って来ない。 |