ビートルジュースビートルジュース

Beetlejuice Beetlejuice

2024年、アメリカ (105分)

 監督:ティム・バートン

 製作総指揮:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー

       サラ・デスモンド、カッターリ・フラウエンフェルダー

       ラリー・ウィルソン、ローレンス・セネリック

       ブラッド・ピット、セス・グラハム=スミス

       デヴィッド・カッツェンバーグ、ピート・チャペッタ

       アンドリュー・ラリー、アンソニー・ティタネグロ

 製作:ティム・バートン、マーク・トベロフ、デデ・ガードナー

    ジェレミー・クライナー、トミー・ハーパー

 共同製作:ナタリー・テスタ

 脚本:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー

(原案:セス・グラハム=スミス、アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー)

 撮影監督:ハリス・ザンバーラウコス, B.S.C.,G.S.C.

 プロダクション・デザイナー:マーク・スクルートン

 衣装デザイナー:コリーン・アトウッド

 編集:ジェイ・プリチドニー

 音楽:ダニー・エルフマン

 ユニット・プロダクション・マネージャー:マーク・ホプキンス、トーマス・ハーパー

 第1助監督:カッターリ・フラウエンフェルダー

 第2助監督:エマ・ホートン

 ヴィジュアル・コンサルタント:ボー・ウェルチ

 アニマトロニック&特殊メイク効果監修:ニール・スキャンラン

 出演:マイケル・キートン  ウィノナ・ライダー

    キャサリン・オハラ  モニカ・ベルッチ

    ジャスティン・セロー  ジェナ・オルテガ 

    ウィレム・デフォー  アーサー・コンティ

    ダニー・デヴィート  バーン・ゴーマン

    サンティアゴ・カブレラ

* ストーリー

 前衛芸術家デリアの夫が飛行機事故で亡くなり、義理の娘リディアとその娘アストリッドのディーツ家三世代が故郷ウィンター・リバーに戻ってくる。霊感を生かしてタレント業をやっているリディアは、再びビートルジュースの存在を周囲に感じるようになるが…

* コメント

 初期作『ビートルジュース』、35年振りの続編。構想はずっとあったそうだが、バートンは『ウェンズデー』の撮影中に「作るなら次の作品だ」と発奮したそう。何が彼をそうさせたのかは分からないが、『ウェンズデー』の世界観が見事に構築されている事を考えると、この脚本家コンビとの出会いがきっかけになったのではないかとも思える。

 コメディ色が強く、ポップな仕上がりだった前作と較べると、本作はよりダークでホラー色が強いようにも見える。とはいえあくまで配分の問題ではある。監督本人が語っているように、「その後」を描きたかったのはあくまでリディアであり、母親になったリディアと娘のアストリッド、リディアの母デリアとの関係性にフォーカスが当てられている。

 タイトル・ロールのビートルジュースは、実は前作でも登場場面が少なかったのだが、本作でもまた脇役扱いで、それでも成立しているのがこのシリーズのユニークさ。死後の世界はあまり変わっていないという設定で、前作に出て来た様々なゴーストを本作にもそのまま登場させている。

 とはいえ勿論新しいキャラクターも追加されていて、展開も大きく違っている。ドラマの構築に苦慮したのか、前半はやや停滞気味にも感じられるが、アストリッドと青年ジェレミーとの交流はミステリー仕立てだったりして、そこから後半にかけての追い込みは凄い。特にハチャメチャなのが、クライマックスの教会の場面。

 前作は“バナナ・ボート”の場面が有名だが、この曲は教会の合唱隊がさりげなく歌っている一方、クライマックスのミュージカルには、バートンが好きなリチャード・ハリスの“マッカーサー・パーク”を使用。皆が自らの意志ではなく取り憑かれて踊らされる点は前作を踏襲していて、7分もある大作なのに全編フルで流してシュールかつバカバカしいシーンになっている。

 この第3幕は当初脚本に無かった場面で、バートンのアイデア。家のレコードを探してこの曲を見つけ、楽曲から逆算してシーンを構成したが、どうなるのか自分でも分からないまま、撮影してゆく事で筋道を探って行ったという。インフルエンサー達がいて、霊界の警官たちがいて、主要な登場人物が揃った所に、ジャクソンやドロレスも合流して、そこで唐突にミュージカルが始まる。

 特にアストリッドとデリアのペア・ダンスは振付が最高に楽しいが、何と時間がなく、演じるオルテガとオハラがほぼ自分たちで考えた振りで、振付師は助言役として横にいた程度だそうである。メイキング映像では撮影後に出演者達が並んでカーテンコールをしていて、スタッフから盛大な声援を受けている光景になぜか胸が熱くなる。オハラも「集団での撮影は一体感があって楽しい」と述懐。

 撮影監督のザンバーラウコス曰く、「第3幕は無秩序への転落だ。楽しかった。ストーリーボードはなく、舞台演劇のようなリハーサルをして、思い切りふざける事を目指した。ティムの得意技だ。こんなやり方は映画学校の教本にもネットにも載っていない」。

 エンディング前の観光旅行の場面は、ドラキュラの城として有名なブラン城。『ウェンズデー』の撮影でルーマニアにいた時に、何度も訪れたそうである。そういった個人的に愛着のある物を映画に取り入れる事は、自分にとって大きな意味があるとバートンは語っている。そういったディティールの集積が、彼の映画のユニークな世界観を作り上げているのだろう。

 特殊効果は全編ほぼアナログの手作りで、デジタル処理は修正や合成のみに使用されている。サンドワームの場面など、昔ながらのストップ・モーション・アニメも多用していて、飛行機事故の回想シーンまでコマ撮りアニメというのが凄い。又、ビートルジュースの回想場面は、演じるベルッチに合わせてバートン念願のイタリアン・ホラー風モノクロ映像。

 前述の“マッカーサー・パーク”は冒頭にドナ・サマーのヴァージョンが流れる他、死者を運ぶソウル・トレインのプラットフォームでも、TV「ソウル・トレイン」のテーマ曲が流れてやっぱりミュージカル風。ダジャレみたいな選曲だが、これもバートンがよく観ていた番組で、「自分の体験が映画の中でうまく繋がった」と音声解説で嬉しそうに語っている。

 エンディングはブライアン・デ・パルマ監督のサスペンス風の展開。ピノ・ドナジオが作曲した『キャリー』のテーマ曲が使われているが、観ようによっては『エイリアン』のパロディにも見える。

* スタッフ

 製作・脚本は『ウェンズデー』のアルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラーのコンビに、『ダーク・シャドウ』のセス・グラハム=スミス。また『ウェンズデー』の製作者トミー・ハーパーとナタリー・テスタ、バートン自身、バートン組の第1助監督カッターリ・フラウエンフェルダー、第1作の原案・製作者のラリー・ウィルソン、ブラッド・ピットら多数が製作陣にクレジットされている。

 プロダクション・デザイナーのマーク・スクルートン、編集のジェイ・プリチドニーも『ウェンズデー』からの続投で、衣装デザイナーのコリーン・アトウッド、音楽のダニー・エルフマンは安定のバートン組。

 今回初めてバートンと組むのは撮影監督のハリス・ザンバーラウコスで、『スルース』『ベルファスト』などケネス・ブラナー監督作を多く手掛けている人。バートン曰く、知的で穏やかな人物だそうで、メイキング・ドキュメンタリーでの喋り方を見ていてもそういう雰囲気は伝わってくる。

* キャスト

 第1作からはマイケル・キートン、ウィノナ・ライダー、キャサリン・オハラが集結。続編で主要キャストが揃う事は珍しい時代になってきたが、ちゃんと35年の歳を重ねた上で、前作と同じエネルギーを持ってオリジナル・キャストが参加している事は喜ばしい。バートン自身、彼らが一緒に演技している事がとても嬉しくて感傷的になってしまい、そんな自分に驚いたと語っている。

 このキャストに加わったのが、『ウェンズデー』でブレイクしたジェナ・オルテガ。そのイメージが強すぎてどうかとも思ったが、ある意味ではそれゆえに自然に繋がる役柄でもあって、むしろ違和感のないキャスティング。他のキャストとの相性も良い(前述ミュージカル場面でのダンスも素晴らしい)。

 ローリーを演じるジャスティン・セローは『マルホランド・ドライヴ』で注目された人で、脚本家でもある。私には役柄も演技も今一つ面白いとは思えないのだが、共演者たちや監督は絶賛している。バートンがたくさん会ってきたプロデューサーらをモデルにした役だという。「この手のたわごとを口にする人物はたくさん見てきた。いわゆる大物だ。ポニテにピアス・ホールが特徴だよ」。

 ジェレミーを演じるアーサー・コンティは、バートンの息子の学友で、俳優だと知らなかったという。『戦場のメリークリスマス』のトム・コンティの孫でもある。バートン曰く、「キャスティング担当が送ってきた映像に映っていたが、会った事のある子だと気付かなかった。一番印象に残ったんだ。彼は他の俳優とは少し違ってた。ジェナやウィノナが違うように、他の人とは違う特別な何かを持ってる」。

 霊界ではバートン作品初出演組が警察署長ウルフ・ジャクソンを演じるウィレム・デフォーと、ビートルジュースの元妻ドロレスを演じるモニカ・ベルッチ。いずれも特殊メイクを施した奇抜なキャラクターだが、そこにスターを配するのがバートン作品らしい贅沢なキャスティング。常連組では、霊界の清掃員にダニー・デヴィート。

 他には、アクロバティックなダンスまで披露するダミアン神父に『パシフィック・リム』シリーズや『ダークナイト・ライジング』のバーン・ゴーマン、霊界にいるアストリッドの父リチャードに『チェ/28歳の革命』『トランスフォーマー/最後の騎士王』のサンティアゴ・カブレラ、不動産業者ジェーン・バターフィールド(前作では同名の娘リトル・ジェーンとして登場したが、本作では自身のリトル・ジェーンを連れている)にエイミー・アタル。赤ちゃんビートルジュースの声はキートンの担当だったが、「こんな声で」と指示するバートンに「君がやれよ」と返され、バートン自身が担当している。

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