バートン作品としては、『ビートルジュース』以来久しぶりに原色の派手な色彩感覚を爆発させたもの。原作はなんと、1962年に発売されたTopps社のトレーディング・カードで、現在ではマニアの垂涎の的となっている幻のシリーズです。これは、一枚ずつ集めてゆくとストーリーが繋がるようになっていて、健全なスポーツ物などに混ざって売られていた『マーズ・アタック!』のシリーズは、残酷な内容のためにPTAから非難され、結局発売中止の憂き目を見たものです。 トレーディング・カードから映画を作るなんて、ちょっとバートン以外にはやりそうもないアイデアですが、内容は火星人の襲撃と地球人の攻防という、本当にそれだけのもの。しかも主人公すらはっきりしない、完全な群像劇です。キャスティングは、にわかには信じ難いほど豪華で、大統領夫人のグレン・クローズやその娘のナタリー・ポートマンですら、大した演技もしないまま数シーン出ただけで終わってしまいます。全体のタッチは、軽妙かつシニカルで、ほとんどの登場人物が無惨な最期を遂げる残酷な映画にも関わらず、終始テンションが高く、ポップに弾けた画面です。 バートンのルーツでもある、ホラーやSF映画のB級テイストは存分に生かされていて、円盤や火星人のデザイン、動きなど、業界トップクラスの技術集団ILMにCGを依頼しながら、敢えてチープな味わいとギクシャクした動きを追求するなど、バートン節全開といった趣。いわば彼の趣味性に共感する人のための映画というか、『バットマン』シリーズや『シザーハンズ』に惹かれ、アウトサイダーの鬱屈した心情をスクリーンに投影させる映画作りを評価してきた映画ファンにとっては、裏切られたような印象を受けかもしれません。逆に、『ピーウィーの大冒険』以来のバートン・ファンなら、狂喜するような映画でしょう。 しかし、学校行事でホワイトハウス見学に来ていた二人の黒人少年が、火星人の攻撃から大統領を守ろうとするくだりや、家族からダメ人間扱いされていた心優しい青年が火星人撃退の鍵を握るなど、近年のバートンに顕著なマイノリティに対する偏愛はきっちり盛り込まれています。又、火星人が操縦する巨大なロボットなど、本人も認める日本アニメの影響も見られますし、またもやゴジラの映像(『ゴジラ対ビオランテ』のワンシーン)が使用されています。 全体としては、やはり痛烈な風刺の精神が支配的で、悪趣味なブラック・ユーモアをそれはそれとして素直に笑える人にしか向かない映画だと思います。個人的に大興奮したのが、オープニング・タイトル。形状的には王道ともベタベタとも言えるクラシカル・タイプの円盤が画面を埋め尽くし、B級テイスト溢れるダニー・エルフマンの音楽が鳴り響く、ゾクゾクするような高揚感に満ちたクレジット・タイトルは秀逸。 |