スリーピー・ホロウ

Sleepy Hollow

1999年、アメリカ (111分、日本では106分)

 監督:ティム・バートン

 製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、ラリー・フランコ

 製作:スコット・ルーディン、アダム・シュローダー

 共同製作:ケヴィン・イェーガー

 脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー

 (原案:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー、ケヴィン・イェーガー

  原作:ワシントン・アーヴィング)

 撮影監督 : エマニュエル・ルベツキー, A.M.C., A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:リック・ヘインリックス 

 衣装デザイナー:コリーン・アトウッド

 編集:クリス・リーベンゾン

 音楽:ダニー・エルフマン

 出演:ジョニー・デップ      クリスティーナ・リッチ

     マイケル・ガンボン    ミランダ・リチャードソン

    ジェフリー・ジョーンズ  キャスパー・ヴァン・ディーン

    マイケル・ガフ       イアン・マクダーミッド

    マーク・ピッカリング    クリストファー・ウォーケン

    クリストファー・リー    リサ・マリー         

    マーティン・ランドー(カメオ出演)

* ストーリー 

 時は1799年、ニューヨークから北へ20マイル。オランダ移民の村スリーピー・ホロウでは、夜ごと漆黒の馬デアデビルに乗った首なし騎士が現れ、住民が首を切断されるという連続殺人事件が起きていた。ニューヨーク市警からやってきた捜査官イカポッド・クレーンは、科学しか信用しない都会人だったが、目前で騎士による殺人を目撃、村の秘密に迫らざるを得なくなる。しかし彼は、騎士が常に特定の人物を狙っており、誰かが裏で糸を引いている事に気づく。

* コメント    

 アメリカ人なら学校で習っていて誰もが知っているという、ワシントン・アーヴィング作の『スリーピー・ホロウの伝説』を、『セブン』の奇才アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが大胆に脚色。製作総指揮にフランシス・コッポラの名前がある所をみると、最初はコッポラ作品として準備が進んでいたのかもしれない。バートン自身はクレジットを見て初めてそれをを知り、「何をしてくれたんだろう?」と疑問に思ったそうである。

 面白いのは、特殊メイクのアーティストであるケヴィン・イェーガーが原案と共同製作に名を連ねている所で、いくら首がバッサバッサ飛ぶ映画とはいえ、異例の製作スタイルと言えなくもない。そういえばコッポラの『ドラキュラ』も、斬首シーンのある映画だった。

 私は原作を読んでいないが、ライターや評論家の記述を総合すると、原作では超常現象は起こらないようせある。連続殺人もなく、実は首なし騎士は、村の不良リーダーのボーンズ(映画版ではブロム)が仕掛けたイタズラという事になっている。原作では、都会からやってきて洗練された物腰でカトリーナの関心を得るイカボッドが地元の若者に撃退される話になっていて、映画は逆転している訳である。

 映画のイカボッドは、極端な恐がりではあるが、嫌みな都会人としては描かれていない。そして首なし騎士は本当に登場し、ブロムは無惨に殺されてしまう。これは、『シザーハンズ』でいじめっ子の運動選手が殺されてしまう場面に通じる。ミステリー仕立ての因果関係があり、主人公が化顔者ではないという違いはあるものの、狭い地域社会でちやほやされている人気者が、外部から来た者に冷たく当たる度量の狭い男で、罪悪人のように切り捨てられてしまう点は共通している。

 この一面的な見方は、程度こそ違えど『チャーリーとチョコレート工場』でのエリート階層に対する理不尽なほどの敵意にも繋がっているように思える。その鬱屈加減はまあ面白いと言えなくもないが、個人的にはそれらを見てスカッとする事など正直あまりない(私は相当な貧困層の出身である)。

 本作が、どこか今までのバートン作品と違ってよそ行きの顔をしているように見えるのは、ウォーカーの脚本ゆえではないかと思う。都会的でシリアスでリアリスティックな作品を多く手掛ける彼は、考えてみればバートン的なものから最も遠いライターと言えなくもない。ユーモラスながらいささか浮いた感じのイカボッドの人物造型や、彼の母親が登場する幻想的なイメージ・シーンは、バートンが後から付け加えた要素のようにも見える。

 ミステリーとしてがっちり構築されていストーリーも、バートン作品としては例外的に理が勝った印象を与える。こうなってくると、随分おかしな話だが、バートンの映画はある程度ドラマツルギーが破綻していないと、“らしく”ないという事になる。もっとも、彼が愛するハマー・プロのホラー映画らしいムードは濃厚に表出されている。『バットマン』以来、久しぶりに英国での撮影を敢行している事も画面に影響を及ぼしているだろう。

 クライマックスの風車炎上シーンは『フランケンウィニー』のそれと呼応しあっていて、これは31年作『フランケンシュタイン』のクライマックス、そしてディズニーの『風車小屋のシンフォニー』へのオマージュでもある。そもそも、バートンを最初にアニメの道に向かわせたのは、49年にディズニーが製作した11本目の長編『イカボードとトード氏』の騎士出現シーンで、これは前半部が『スリーピー・ホロウの伝説』のアニメ化だという事。

* スタッフ

 製作のラリー・フランコは、『バットマン・リターンズ』『マーズ・アタック!』に続くバートン作品。脚本は、『セブン』で一躍時の人となった奇才アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーで、後半、首なし騎士を陰で操っている人間がいるという辺りからは、原作を離れた完全なオリジナル・ストーリーとなっている。謎解きと犯人探しを軸に精妙に構築されたシナリオだが、彼はバートン的なブラック・ユーモアは持たないライターのようである。

 撮影はメキシコ映画界出身で、後にハリウッドで度々アカデミー受賞、ノミネートされたエマニュエル・ルベツキー(本作もオスカーにノミネート)。南米的なものは何一つ画面に登場しない映画だが、蓋を開けてみれば見事にヨーロッパ調の陰鬱な映像を展開していてさすが。何でもバートンは、撮影監督やプロダクション・デザイナーにもハマー・プロの怪奇映画を観ろと言ったそうである。

 バートン曰く「特にこの映画で組みたかった訳でなく、ただルベツキーの仕事が大好きだった。直感的だという点で、彼はちょうど僕と同じような仕事のやり方をする。色々な事を考え出すんだ。照明プランは何ヶ月も前から考え抜かれているんだけど、現場ではとても直感的だ。僕ととても合うなと感じたし、長らく組んできた人の中で、一緒にやっていて一番楽しかった。彼はこの映画の登場人物の一人みたいなんだ」。

 重厚なヨーロッパ調とアニメチックなデフォルメが絶妙に配合されたプロダクション・デザインは、バートンの古い仲間リック・ヘインリックス。過去のバートン作品にも様々な形で関わってきた人だが、本作でついにプロダクション・デザイナーに抜擢され、続いて『猿の惑星』も担当。本作では、イギリスの国有地に村を丸ごと作るという規模の大きな仕事を敢行し、見事アカデミー賞に輝いた。

 衣装デザインはバートン作品4作目のコリーン・アトウッド。絵画などを参考に、19世紀初頭の衣装を細部に渡って表現するという非常に凝った仕事ぶりで、彼女もオスカーにノミネートされた。編集のクリス・リーベンゾン、音楽のダニー・エルフマンはお馴染み。

 自社KYPIを率いる特殊効果担当のケヴィン・イェーガーは、『エルム街の悪夢』のフレディ、『チャイルド・プレイ』のチャッキーというホラー映画界の人気キャラの生みの親でもある。上記の通り原案と共同製作にも参加していて、とにかく多種多様な死に方を追求したという残酷描写はお手の物。

* キャスト

 主演のジョニー・デップはこれが3作目のバートン作品。暗いムードの中、唯一コミカルな要素を発揮しているのが主人公のイカボッド。周囲がみんなシリアスで、どことなくウディ・アレンの初期コメディみたいな構図だが、それがやや浮いた印象なのは彼の芝居より脚本に原因があるのかも。ちなみに、イメージ・シーンの中で彼の母親をリサ・マリーが演じていて、いかにもバートン好みの古い怪奇映画を思わせる耽美的な映像になっているので要注目。

 相手役のクリスティーナ・リッチはポップで現代的なルックスで、彼女の存在が作品を重苦しさから救っている。以前からバートンとウォーカー双方の大ファンで、一挙に夢が叶ったという彼女、バートン人脈には不思議と縁があり、ウィノナ・ライダーの妹を演じた事がある他、ジョニー・デップとの共演も数作ある。キャロライン・トンプソンが脚本を書いた『アダムス・ファミリー』は彼女の初期の代表作で、後に『ウェンズデー』にも出演。

 特筆すべきは助演陣で、カトリーナの両親はものすごいイギリス英語で登場する名優マイケル・ガンボンとミランダ・リチャードソン。村の長老達には、『バットマン』の執事でお馴染みマイケル・ガフ、『ビートルジュース』『エド・ウッド』のジェフリー・ジョーンズ、『スター・ウォーズ』シリーズの銀河皇帝イアン・マクダーミッド、ニューヨーク市長にはバートン憧れのドラキュラ俳優クリストファー・リー、冒頭でヴァン・ギャレットとしてカメオ出演しているマーティン・ランドーと、ひと癖もふた癖もある個性派ばかり。

 イカボッドの恋敵ブロムは、『スターシップ・トゥルーパーズ』で主演を務めたキャスパー・ヴァン・ディーン。バートン作品に似合わぬ健全なハンサム・ガイだが、案の定とんでもない形で鬱屈の犠牲に。首なし騎士は、生前の首がある時の騎士は『バットマン・リターンズ』のクリストファー・ウォーケン。ただでさえ恐ろしい風貌なのに、恐ろしいメイクで恐ろしい役を演じているので「首なしの時よりも怖い」と話題を呼んだ。

 首がない騎士は『スター・ウォーズ/エピソード1』でダース・モールを演じたレイ・パークで、本業のスタントマンらしく見事なアクションを披露。

* アカデミー賞

 ◎受賞/美術賞     ◎ノミネート/撮影賞、衣装デザイン賞

 

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