『チャーリーとチョコレート工場』と同時に製作されたという、バートン12年振りのストップモーション・アニメ。マイク・ジョンソンなる人物と共同で監督を担当し、キャロライン・トンプソン、ジョン・オーガストと、過去のバートン作品を成功に導いた脚本家達が参加しているとあって、これぞティム・バートンというものすごい世界が出来上がりました。 まず、素晴らしいのがストーリー。死人と結婚してしまう花婿というロシア民話のアイデアを基に作られた物語は、切なくもロマンティックなラストシーンまで美しい語り口で一貫しています。コンパクトな上映時間の中で、ブラック・ユーモアとペーソスが絶妙なバランスを保っているのもバートン作品らしく、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のようなストーリーの破綻もみられません。ラスト以外にも、ビクターとコープスブライドのピアノ連弾シーンなど、ため息がこぼれるほど美しい場面もあります。 それから映像。モノクロ的で沈鬱なトーンで描かれる生者の世界と、カラフルで賑やかな死者の世界を対比させた色彩感覚も秀逸ですが、バートンらしいデフォルメがきいたキャラクターや背景のデザインからも目が離せません。ミュージカル場面の演出も、奇抜なアイデアが次々に飛び出してすこぶる痛快な仕上がりです。 実は私、顔の表情など、一部をCGで補完していると思っていたのですが、実は全てコマ撮りだそうです。メイキング映像を見ると、人形の頭部に複雑なギア装置が入っており、ちょっとした表情の変化まで六角レンチで調整していてまるで魔法のよう。スタッフも述べている通り、ひとコマずつ地道に撮影してゆくストップモーション・アニメはCGの登場で衰退すると言われていましたが、この技法にこだわるアーティストはまだ存在しているそうです。しかも、デジタル・キャメラによって過去の障害も解決されたとの事(現像を待たずに撮影結果をすぐ確認できる)。 この分野にはレイ・ハリー・ハウゼンという神様みたいな存在のアーティストがいて、バートンも含め多くのファンがいますが、実は彼、本作の撮影現場を見学に来たそうで、それを記念してエバーグロット家でビクターが弾くピアノに、でかでかと「ハリーハウゼン」という名前が書かれています。かなり目立つので、バートンやハリー・ハウゼンのファンなら、すぐにお気づきでしょう。 |