ティム・バートンのコープス・ブライド

Tim Burton's Corpse Bride

2005年、アメリカ (77分)

         

 監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン

 製作総指揮:ジェフリー・オーバック、ジョー・ランフト

 製作:ティム・バートン、アリソン・アベイト

 脚本:ジョン・オーガスト、キャロライン・トンプソン、パメラ・ペトラー

 撮影監督 : ピート・コザチク

 プロダクション・デザイナー:アレックス・マクドウェル

 編集:ジョナサン・ルーカス、クリス・リーベンゾン, ...

 音楽:ダニー・エルフマン

 出演:ジョニー・デップ     ヘレナ・ボナム・カーター

     エミリー・ワトソン    アルバート・フィニー

    ジョアンナ・ラムリー  リチャード・E・グラント

    クリストファー・リー   トレイシー・ウルマン

    マイケル・ガフ      ディープ・ロイ

    ジェーン・ホロックス   ダニー・エルフマン

* ストーリー 

 親同士が欲得ずくめで決めた婚約者選びに振り回される若者ビクター。困惑しながらも婚約者のビクトリアに会いに行った彼だが、意外にも惹かれあう二人だった。しかし、結婚式でドジを踏んだ彼は相手の両親から罵倒され、式も中止となる。落ち込んで一人森へ向かった彼は、誓いの言葉の練習をしたつもりが、その宣誓が死人の花嫁に通じてしまい、地中の死者の世界へと連れ込まれてしまう。

* コメント    

『チャーリーとチョコレート工場』と同時に製作されたという、バートン12年振りのストップモーション・アニメ。マイク・ジョンソンなる人物と共同で監督を担当し、キャロライン・トンプソン、ジョン・オーガストと、過去のバートン作品を成功に導いた脚本家達が参加しているとあって、これぞティム・バートンというものすごい世界が出来上がりました。

 まず、素晴らしいのがストーリー。死人と結婚してしまう花婿というロシア民話のアイデアを基に作られた物語は、切なくもロマンティックなラストシーンまで美しい語り口で一貫しています。コンパクトな上映時間の中で、ブラック・ユーモアとペーソスが絶妙なバランスを保っているのもバートン作品らしく、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のようなストーリーの破綻もみられません。ラスト以外にも、ビクターとコープスブライドのピアノ連弾シーンなど、ため息がこぼれるほど美しい場面もあります。

 それから映像。モノクロ的で沈鬱なトーンで描かれる生者の世界と、カラフルで賑やかな死者の世界を対比させた色彩感覚も秀逸ですが、バートンらしいデフォルメがきいたキャラクターや背景のデザインからも目が離せません。ミュージカル場面の演出も、奇抜なアイデアが次々に飛び出してすこぶる痛快な仕上がりです。

 実は私、顔の表情など、一部をCGで補完していると思っていたのですが、実は全てコマ撮りだそうです。メイキング映像を見ると、人形の頭部に複雑なギア装置が入っており、ちょっとした表情の変化まで六角レンチで調整していてまるで魔法のよう。スタッフも述べている通り、ひとコマずつ地道に撮影してゆくストップモーション・アニメはCGの登場で衰退すると言われていましたが、この技法にこだわるアーティストはまだ存在しているそうです。しかも、デジタル・キャメラによって過去の障害も解決されたとの事(現像を待たずに撮影結果をすぐ確認できる)。

 この分野にはレイ・ハリー・ハウゼンという神様みたいな存在のアーティストがいて、バートンも含め多くのファンがいますが、実は彼、本作の撮影現場を見学に来たそうで、それを記念してエバーグロット家でビクターが弾くピアノに、でかでかと「ハリーハウゼン」という名前が書かれています。かなり目立つので、バートンやハリー・ハウゼンのファンなら、すぐにお気づきでしょう。

* スタッフ

 脚本に携わったのは、まず『ビッグ・フィッシュ』の素晴らしい脚本を書いたジョン・オーガスト。彼は、同時に『チャーリーとチョコレート工場』も執筆しているので、よほどバートンと気が合ったのかもしれません。さらに、『シザーハンズ』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のキャロライン・トンプソンもシナリオ作りに参加。共同監督のマイク・ジョンソンと製作のアリソン・アベイトも、『ナイトメア〜』でそれぞれアシスタント・アニメーター、芸術面のコーディネーターを務めていた人です。

 キャラクター等のデザインは、バートン自身のラフ・スケッチを基にアーティスト達がデザインしたもの。プロダクション・デザイナーのアレックス・マクドウェルも、『チャーリーとチョコレート工場』に参加している人ですが、ここでは東欧の雰囲気を取り入れた古風な街の造型に手腕を発揮。建物も、チェコやポーランドの建築様式にイギリスのヴィクトリア朝スタイルを融合させたものだそうです。

 撮影監督のピート・コザチクは、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ジャイアント・ピーチ』に続いてこれが三作目のストップモーション・アニメですが、元々は視覚効果畑の人で、本作でもVFXの監修を兼任しています。編集は実写作品と同様、クリス・リーベンゾンが担当。音楽はダニー・エルフマンの面目躍如で、コープスブライドの身の上をがなり声で歌いまくるボーンジャングルズのヴォーカルも自ら担当していますが、これが、いかにもオインゴ・ボインゴ時代の破天荒な歌唱スタイルを彷彿させるもので、ファンとしては嬉しくなります。

* キャスト

 声優陣は、バートン組オールスターの趣。ジョニー・デップは本当に彼の声なのかと思うほど印象が違うし、ヘレナ・ボナム=カーターはワン・センテンスごとに声色や変わってゆく多彩なニュアンスに脱帽。ビクトリアには、『奇跡の海』や『本当のジャクリーヌ・デュプレ』など、薄幸で激情的なヒロイン役が多いエミリー・ワトソン。表情など、少し内気で可愛らしい所のあるキャラクターなので、それほどアクの強さはありません。その父を、『ビッグ・フィッシュ』のアルバート・フィニーが担当。打算的で神経質な父を憎々しげに演じています。

 又、ビクターの両親も相当にすさんだキャラクターですが、母親の方をコメディアンのトレイシー・ウルマンが担当。女優としても、『プレタポルテ』やウディ・アレンの映画などに出ている人です。変わった所では、同じく『プレタポルテ』等のロバート・アルトマン作品やコッポラの作品でアクの強い容貌が印象的な、リチャード・E・グラント。アニメの中でもやはり容姿が強烈な、謎の男バーキス卿を演じています。

 バートン組では、『バットマン』シリーズの執事アルフレッドや『スリーピー・ホロウ』の公証人を演じたマイケル・ガフが骸骨の長老、同じく『スリーピー・ホロウ』や『チャーリーとチョコレート工場』に出演の名ドラキュラ役者クリストファー・リーが教会の牧師、『〜チョコレート工場』の“ウンパ・ルンパ”ディープ・ロイがナポレオン・ボナパルトという骸骨将軍を担当。

* アカデミー賞

 ◎ノミネート/長編アニメ賞

 

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