ディズニー・スタジオ在籍中だったバートンは、『フランケンウィニー』を完成させた後、出演者の一人シェリー・デュヴァルによって、彼女がホスト役を務めるテレビ・シリーズ、『フェアリー・テール・シアター』の監督に抜擢されます。16ミリで撮影されたケーブルテレビの『ヘンゼルとグレーテル』と違い、こちらはビデオカメラで撮られていてコント番組みたいな雰囲気もありますが、俳優達にしっかりと演技をさせている上、カット割や画面構成も熟達していて、ビデオ撮りのテレビドラマとしては予期した以上のクオリティになっています。 物語自体はアラジンの話そのままで、バートンらしいひねりは特にないですし、セットや衣装も安っぽくていかにもテレビドラマという感じですが、ライティングも美術も色彩はポップでカラフル。特に主人公が地下の洞穴に降りてゆく所は、壁面一杯に描かれた骸骨やアニメチックな動物達の影絵など、バートン・タッチの片鱗が見え隠れしてファン垂涎といえるでしょう。 バートン自身は、デュヴァルからこの仕事を貰った事を素直に「嬉しかった」と言っていますし、ノーギャラで色々な人材を集める彼女の仕事ぶりも絶賛していますが(当シリーズにはフランシス・コッポラやロジェ・ヴァディムなど名監督も参加)、仕事は思うように行かなかったようです。曰く「名誉な事だったし、面白かったけど、僕にとっては理解を越えたものだった。だって三台のキャメラを使ったビデオ撮りの番組だったんだからね。それでやっぱり、いい所もあれば悪い所もある。下品なラスヴェガス・ショーみたいに見える所もあるんだ。それは本当にもう、僕がああいう仕事に向いてないからって事に尽きる。仕事はキツかった。一週間で一心不乱に撮ったけど、僕は自分があまりいい雇われ監督じゃないって実感した」。 |