アラジンと魔法のランプ

 (テレビ・シリーズ『フェアリー・テール・シアター』の一話)

Aladdin and His Wonderful Lamp

1984年、アメリカ (ヴィデオ、48分)

         

 監督:ティム・バートン

 製作総指揮:シェリー・デュヴァル、フレデリック・S・フュークス

 製作:ブリジッド・テリー

 脚本:マーク・カーティス、ロッド・アッシュ

 ライティング・デザイナー:グレッグ・プルントン

 プロダクション・デザイナー:マイケル・エルラー

 編集:マルコ・ザッピア

 音楽:マイケル・コンヴァーチノ、デヴィッド・ニューマン

 特殊効果:リック・ヘインリックス、スティーヴン・チオド

 出演:ロバート・キャラダイン  ジェームズ・アール・ジョーンズ

     レナード・ニモイ     ヴァレリー・バーティネリ

* コメント    

 ディズニー・スタジオ在籍中だったバートンは、『フランケンウィニー』を完成させた後、出演者の一人シェリー・デュヴァルによって、彼女がホスト役を務めるテレビ・シリーズ、『フェアリー・テール・シアター』の監督に抜擢されます。16ミリで撮影されたケーブルテレビの『ヘンゼルとグレーテル』と違い、こちらはビデオカメラで撮られていてコント番組みたいな雰囲気もありますが、俳優達にしっかりと演技をさせている上、カット割や画面構成も熟達していて、ビデオ撮りのテレビドラマとしては予期した以上のクオリティになっています。

 物語自体はアラジンの話そのままで、バートンらしいひねりは特にないですし、セットや衣装も安っぽくていかにもテレビドラマという感じですが、ライティングも美術も色彩はポップでカラフル。特に主人公が地下の洞穴に降りてゆく所は、壁面一杯に描かれた骸骨やアニメチックな動物達の影絵など、バートン・タッチの片鱗が見え隠れしてファン垂涎といえるでしょう。

 バートン自身は、デュヴァルからこの仕事を貰った事を素直に「嬉しかった」と言っていますし、ノーギャラで色々な人材を集める彼女の仕事ぶりも絶賛していますが(当シリーズにはフランシス・コッポラやロジェ・ヴァディムなど名監督も参加)、仕事は思うように行かなかったようです。曰く「名誉な事だったし、面白かったけど、僕にとっては理解を越えたものだった。だって三台のキャメラを使ったビデオ撮りの番組だったんだからね。それでやっぱり、いい所もあれば悪い所もある。下品なラスヴェガス・ショーみたいに見える所もあるんだ。それは本当にもう、僕がああいう仕事に向いてないからって事に尽きる。仕事はキツかった。一週間で一心不乱に撮ったけど、僕は自分があまりいい雇われ監督じゃないって実感した」。

* スタッフ/キャスト

 注目したいのはやはりディズニーの同僚二人、バートン作品に欠かせないデザイナーのリック・ヘインリックスと、『ヴィンセント』でストップモーション・アニメを担当したスティーヴ・チオドが模型のデザイン・製作で参加している事。雇われ仕事でも自分のカラーを盛り込むには、理解者というかブレーンを呼び込む必要がある事を、バートンは早くも分かっていたのかもしれません。又、『フランケンウィニー』のマイケル・コンヴァーチノとデヴィッド・ニューマンがここでも音楽を担当、独特のモダンなセンスで不思議な世界観を構築しています。

 このシリーズは又、役者にも毎回大物を連れてきていて、この回では『スター・トレック』のレナード・ニモイがアクの強い風貌でモロッコ人の魔法使いを演じている他、『スター・ウォーズ』でダース・ヴェイダーの声を担当したジェームズ・アール・ジョーンズもランプの精で出演しており、ガハハハ〜と豪快に笑い声を上げるテンションの高い怪演は見ものです。

 

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