ティム・バートンの映画を支えるスタッフ達

 複数のバートン作品に参加している人々を追ってみましょう。

《製作者》

ラリー・フランコ

 『バットマン・リターンズ』『マーズ・アタック!』『スリーピー・ホロウ』

 ジョン・カーペンター監督の70〜80年代の作品を支えたプロデューサー。『遊星からの物体X』のノルウェー人役をはじめ、カーペンター作品ではチョイ役での出演歴もあり。バートンとは『バットマン・リターンズ』の共同製作で初顔合わせ。その後、ホラー色の強い二作品をプロデュースしている辺り、経歴ゆえでしょうか。

デニーズ・ディ・ノヴィ

 『シザーハンズ』『バットマン・リターンズ』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『エド・ウッド』

 カナダのテレビ業界でニュース・レポーターや放送作家として働いた後、映画製作者に転身。批評家、パブリシストから製作者になり、マイケル・レーマン監督の異色青春映画『ヘザース/ベロニカの熱い日』で一本立ち。バートンとは89年、バートン-ディ・ノヴィ・プロダクションを設立し、社長に就任。上記の他、バートンと共同で『キャビン・ボーイ』『ジャイアント・ピーチ』もプロデュース。

リチャード・D・ザナック

 『猿の惑星』『ビッグ・フィッシュ』『チャーリーとチョコレート工場』『スウィーニー・トッド』『アリス・イン・ワンダーランド』『ダーク・シャドウ』

 ハリウッドを代表する大物プロデューサー。父ダリルは20世紀フォックスの社長でした。『サウンド・オブ・ミュージック』『明日に向かって撃て!』『スティング』『ジョーズ』など、映画史を地で行くようなプロデュース歴。オリジナルの『猿の惑星』に関わった経緯でバートンのリメイク版を担当しましたが、よほど意気投合したのか、その後のバートン作品も一手に引き受けています。

    

カッターリ・フラウエンフェルダー

 『猿の惑星』『ビッグ・フィッシュ』『チャーリーとチョコレート工場』『スウィーニー・トッド』『アリス・イン・ワンダーランド』『ダーク・シャドウ』『ビッグ・アイズ』『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』『ダンボ』

 助監督として数々の映画で活躍した人で、『ブルース・ブラザース』の製作助手がキャリアのスタート。バートン作品では『猿の惑星』以降、共同製作とファースト助監督をずっと担当しています。「僕にスケジュールと予算を守らせてくれるのは彼女しかいない」とバートンに言わせるほどの有能さ。

 

アリソン・アベイト

 『ティム・バートンのコープス・ブライド』『フランケンウィニー(リメイク版)』

 ニューヨーク出身だがハリウッドに移り、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のアーティスティック・コーディネーターを務める。バートンのアニメ作品にはなくてはならない存在ですが、ブラッド・バード監督『アイアン・ジャイアント』、ウェス・アンダーソン監督初のアニメ『ファンタスティック Mr.FOX』、ジョー・ダンテ監督『ルーニー・チューンズ』など、アニメ専門ではない監督と組む事が多い印象。「手書きの手紙が温かみを感じさせるように、手間と時間を掛けた仕事には美しさがある」という彼女の言葉は、ストップ・モーション・アニメの本質を言い得て妙。

デレク・フレイ

 『ダーク・シャドウ』『フランケンウィニー(リメイク版)』『ビッグ・アイズ』『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』『ダンボ』

 『マーズ・アタック!』の頃にティム・バートン・プロダクションへ入社、01年から同社の経営者となる。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターでもあり、2014年から世界を回っている《ティム・バートンの世界》展の企画も手掛ける。ミュージック・ビデオや短篇映画の監督、撮影、編集で多数の受賞歴もあるという、多彩な才能を持つ人。

《脚本》

マイケル・マクドウェル

 『ビートルジュース』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ザ・ジャー』

 ホラー小説家、脚本家。『ビートルジュース』の製作者マイケル・ベンダーと、ベンダー・マクドウェル・プロダクションも設立しています。『ビートルジュース』では製作も兼ねたラリー・ウィルソンと共同で原案を書きましたが、彼らは、バートンが監督したテレビ番組『ヒッチコック劇場』の一話『ザ・ジャー』のシナリオも執筆しています。『ナイトメアー〜』ではバートンの原案を脚色したものの、そのまま採用はされず、キャロライン・トンプソンによってリライトされました。

 

ウォーレン・スカーレン

 『ビートルジュース』『バットマン』

 脚本修繕屋として知られ、行き詰まっていた『ビートルジュース』の執筆に呼び入れられた、バートン言う所の“堅物”。『バットマン』でもサム・ハムの脚本をリライトするのに雇われましたが、この映画では現場でシナリオがどんどん変わっていったといいます。代表作は『ビバリーヒルズ・コップ2』。

キャロライン・トンプソン

 『シザーハンズ』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『コープス・ブライド』

 26歳で出版された小説『First Born(初子)』が認められ、映画化の企画も進む中、これを読んだバートンがすっかり気に入り、『シザーハンズ』に起用。バートン曰く「分析できない曖昧なアイデアを理解してくれる人」で、バートン作品でも特に叙情性の強いものばかり手掛けている印象。『アダムス・ファミリー』もヒットに導きました。作曲家ダニー・エルフマンとは同棲していた時期があるそうです。

スコット・アレクサンダー&ラリー・カラウゼスキー

 『エド・ウッド』『ビッグ・アイズ』

 二人でチームを組み、『プロブレム・チャイルド/うわさの問題児』でデビュー。ミロス・フォアマン監督の『ラリー・フリント』で高く評価され、同監督の『マン・オン・ザ・ムーン』も手掛ける。バートンとは、どういう訳か例外的なスタイルの2作、実在のアーティストに取材したオリジナル脚本で組んでいますが、『エド・ウッド』は短いエピソードの積み重ね、『ビッグ・アイズ』は直線的なストーリーと、全く異なるスタイルで対象にアプローチしています。

ジョン・オーガスト

 『ビッグ・フィッシュ』『コープス・ブライド』『チャーリーとチョコレート工場』『ダーク・シャドウ』『フランケンウィニー(リメイク版)』

 サンダンス映画祭で上映されたダグ・リーマン監督の『go』で脚本・共同製作を手掛けて注目される。コロンビアにダニエル・ウォレスの小説『ビッグ・フィッシュ』を持ち込み、数年かけて脚本化。『コープス・ブライド』でも感動的な語り口を展開した他、『チャーリーとチョコレート工場』にも原作にはないハートウォーミングな持ち味をプラス。叙情派かと思いきや、『チャーリーズ・エンジェル』シリーズでヒットを飛ばす一面も。

《撮影監督》

トーマス・アッカーマン

 『フランケンウィニー』『ビートルジュース』

 モノクロ短編の『フランケンウィニー』とカラフルな『ビートルジュース』という、対照的な二作品でバートンと組む。コマーシャルやミュージック・ビデオの世界から映画界へと進んだタイプですが、バートンのような華々しい活躍ぶりは聞かないのが残念。

ステファン・チャプスキー

 『シザーハンズ』『バットマン・リターンズ』『エド・ウッド』 

 ドイツ生まれのウクライナ人。他ではあまり名前を聞かない人ですが、色彩を強調した照明効果と流麗なキャメラ・ワークで非常に高い評価を受けています。アーティスティックで表現主義的な映像スタイルは、バートン作品にうまくマッチ。

フィリップ・ルースロ

 『猿の惑星』『ビッグ・フィッシュ』『チャーリーとチョコレート工場』

 フランス出身。ジャン=ジャック・ベネックス監督の『ディーバ』でセザール賞に輝きますが、英国でもマイケル・ブアマンやニール・ジョーダン監督と数多く仕事をしています。アカデミー賞にも何度かノミネートされ、『リバー・ランズ・スルー・イット』で受賞。バートンにも『猿の惑星』にもイメージ的には遠い感じの人でしたが、続く二作でもバートンと組んでいます。映像美と腕の良さには定評のある名手。

ダリウス・ウォルスキー

 『スウィーニー・トッド』『アリス・イン・ワンダーランド』

 ポーランド生まれ。音楽ビデオ業界で100本以上の作品を手掛けた後、ゴア・ヴァービンスキー監督とのコンビでヒットを連発。特にJホラー・リメイク・ブームの先駆けとなった『リング』と、ジョニー・デップ主演『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズはこのコンビの代表作。器用さが売りとなる業界の出身だから、バートン色を出すのもお手の物。

ブリュノ・デルボネル

 『ダーク・シャドウ』『ビッグ・アイズ』『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』

 フランス生まれ。何といっても、『アメリ』の撮影監督というのが彼の代名詞。ジュリー・テイモア監督の『アクロス・ザ・ユニバース』でもファンタジックな映像を展開していますが、それが専売特許というわけでもなく、ジャン=ピエール・ジュネ監督と再び組んだ『ロング・エンゲージメント』は幾分リアルなスタイルで撮影しています。バートンとのコラボも、ダークなゴシック調の『ダーク・シャドウ』と、ポップで柔らかな『ビッグ・アイズ』の映像では、タッチが全く違います。前記ジュネとの2作と、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でアカデミー賞にノミネート。

《プロダクション・デザイナー》

ボー・ウェルチ

 『ビートルジュース』『シザーハンズ』『バットマン・リターンズ』

 アリゾナ大学で建築学の学位をとり、卒業後、美術監督やセット・デザイナーとして映画界で活躍。『カラー・パープル』等で才能を発揮した後、『ロスト・ボーイ』でプロダクション・デザイナーとして独り立ち。初期バートン作品の個性的なルックを見事に具現化してみせました。他にもバリー・ソネンフェルド作品などで活躍。『ビートルジュース』の女優キャサリン・オハラの夫でもあります。

トム・ダッフィールド

 『ビートルジュース』『シザーハンズ』『バットマン・リターンズ』(美術監督)、『エド・ウッド』

 美術監督として『ビートルジュース』『シザーハンズ』『バットマン・リターンズ』に参加後、『エド・ウッド』のプロダクション・デザインを担当。

リック・ヘインリックス

 『ヴィンセント』『フランケンウィニー』(製作)、『ヘンゼルとグレーテル』(ストップモーション・アニメ)、『アラジンと魔法のランプ』『ザ・ジャー』(特殊効果)、『ピーウィーの大冒険』(アニメーション効果監督)、『ビートルジュース』(視覚効果アドヴァイザー)、『シザーハンズ』(セット・デザイナー)、『バットマン・リターンズ』(美術監督)、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(ヴィジュアル・コンサルタント)、『スリーピー・ホロウ』『猿の惑星』『ダーク・シャドウ』『フランケンウィニー(リメイク版)』『ビッグ・アイズ』『ダンボ』

 カル・アーツとディズニーでのバートンの同僚。アニメーターとしては『きつねと猟犬』でバートンと仕事をした経緯もあります。『ヴィンセント』『フランケンウィニー』で製作を担当したのが、実写映画に関わるきっかけ。

 『ヘンゼルとグレーテル』のストップモーション・アニメ、『アラジンと魔法のランプ』『ザ・ジャー』の特殊効果、『ピーウィーの大冒険』のアニメーション効果監督、『ビートルジュース』の視覚効果アドヴァイザー、『シザーハンズ』のセット・デザイナー、『バットマン・リターンズ』の美術監督、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のヴィジュアル・コンサルタントを務め、『スリーピー・ホロウ』でプロダクション・デザイナーに昇格。オスカーにノミネートされました。他にもコーエン兄弟やテリー・ギリアム、ジョー・ジョンストン監督の作品に関わっています。

アレックス・マクドウェル

 『チャーリーとチョコレート工場』『コープス・ブライド』

 デジタル技術との融合を得意とする、新時代のプロダクション・デザイナー。『ファイト・クラブ』『マイノリティ・レポート』などモダンな作品が多いですが、『ターミナル』では映画史上最大と言われた、実物大の空港セットを建築。『コープス・ブライド』では逆にミニチュア・セットをデザインするなど、アナログ技術も自在に扱う。『〜チョコレート工場』にもSF的なモダンさが随所に見られました。

《衣装デザイナー》

ボブ・リングウッド

 『バットマン』『バットマン・リターンズ』

 イギリス出身。81年に『エクスカリバー』で衣装を担当後、『砂の惑星』『サンタクロース』『ハマースミスの6日間』『太陽の帝国』『エイリアン3』『バットマン・フォーエヴァー』『デモリションマン』『エイリアン4』『スーパーノヴァ』『X-メン』『タイムマシン』『A.I.』などで活躍。

コリーン・アトウッド

 『シザーハンズ』『エド・ウッド』『マーズ・アタック!』『スリーピー・ホロウ』『猿の惑星』『ビッグ・フィッシュ』『スウィーニー・トッド』『アリス・イン・ワンダーランド』『ダーク・シャドウ』『ビッグ・アイズ』『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』『ダンボ』

 80年代から活躍。『シカゴ』『SAYURI』『アリス・イン・ワンダーランド』でアカデミー賞受賞。ノミネートも多く、バートン作品では『スリーピー・ホロウ』『スウィーニー・トッド』もノミネートされています。バートンとは『シザーハンズ』が初仕事で、『エド・ウッド』以降、ガブリエラ・ペスクッチが担当した『チャーリーとチョコレート工場』を除く全ての実写作品でコラボしています。リアルな作風の現代物から、独創的なデザインを駆使したSF、ファンタジー、時代劇まで、幅広いジャンルに対応できる才人。

《編集》

クリス・リーベンゾン

 ジェリー・ブラッカイマー製作のスタイリッシュなアクション映画群で活躍。特にトニー・スコット監督作には多く関わり、『トップ・ガン』と『クリムゾン・タイド』でアカデミー賞にノミネート。バートンとは『バットマン・リターンズ』が初仕事ですが、以降『ビッグ・アイズ』一作を除いて全てのバートン作品で編集を担当しています。『アリス・イン・ワンダーランド』『ダーク・シャドウ』では製作総指揮にも名を連ねるほど、バートンの信望厚い人物。

《音楽》

ダニー・エルフマン

 言うまでもなく今やハリウッドで一、二を争う売れっ子作曲家ですが、本格的に映画音楽を担当したのはバートンの『ピーウィーの大冒険』から。元々は多芸多才で知られたLAのロックバンド、オインゴ・ボインゴのフロントマンで、彼は作詞作曲のみならずメイン・ヴォーカリストも担当。ホーン・セクションを率いた奇抜なアレンジが施された楽曲と、表現の幅が大きな彼の歌唱スタイルは、そのまんま映画音楽といった趣で、特に初期のアルバムは強烈なインパクトがありました(私も大ファンです)。

 バートンは、このバンドのファンだった事から彼を抜擢。以後、バートン作品の色彩を決定付けるような音楽を提供し続け、喧嘩していた時期の一作『エド・ウッド』と、ソンドハイム作曲の有名なミュージカル『スウィーニー・トッド』、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』を除けば、全てのバートン作品でコンビを組んでいます。他にも、『スパイダーマン』のサム・ライミや、『グッド・ウィル・ハンティング』のガス・ヴァン・サントなど、何度も組んでいる監督あり。

 ちなみにオーケストレーションをずっと担当しているスティーヴ・バーテクも、元オインゴ・ボインゴのギタリスト。03年に女優のブリジット・フォンダと結婚していますが、『シザーハンズ』の頃は脚本を提供したキャロライン・トンプソンと暮らしていたそうです。

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